海
だいぶ日は落ちてきて
空の朱色は濃い青に変わろうとしていた
車を降り、海岸に向かう
波打ち際にはもう誰もいない
夕日はつい先ほど沈んだようだ
高瀬
「夕日…見れませんでしたね」
ゆう
「そうですね
でも沈んでもすぐに暗くなるわけじゃなくて…
朱色と青のグラデーションも綺麗です」
「一日の終わりに
『今日もおつかれさま』って…言われているみたい」
高瀬
「そう…ですね
水野さんがこの海と空を見るとそんなふうに見えるんですね」
ゆう
「あ、あの
語っちゃいましたね…恥ずかしい…」
高瀬
「いえ、すごくいい表現だと思いました」
ゆう
「あ、ありがとうございます」
突如波が寄せた瞬間…
ゆうの足元がぐらつく
シャツの袖をまくった高瀬の腕に、ふとゆうの手が触れた
ゆう
「すみません、こけそうになって…」
高瀬
「大丈夫ですよ
あの…水野さん」
ゆう
「はい…」
高瀬
「水野さんってよくこけるんですか?」
(え?どういうこと?
…あー、この前の公園のこといってる?)
ゆう
「いや…そんなことはないですけど」
高瀬
「それならいいんですが
足元気をつけて
こけそうになったらいつでも僕を掴んでください
…それとも、手を貸しましょうか?」
高瀬は右手をゆうの前に差し出した
ゆう
「あ、いや…
ありがとう…ございます
大丈夫です」
(甘い言葉…とは違う
私がこけないように言ってくれてるだけなのもわかる)
(でも…ナチュラルにドキドキさせるのやめてほしい…)
ゆうは耳まで赤くなるのを感じた
……ここは気を取り直して話題を変える
ゆう
「あの、それにしてもなぜ今日は海に?」
高瀬
「それは…
初めて食事に行ったとき
あまり…水野さんが楽しめなかったのではないかと思ったので…」
「ドライブや海のほうが話しやすいかなと…
あんなふうに面と向かってはじめて会う人と食事をするって緊張もしますしね…」
ゆう
「えぇ…たしかに
あの時は緊張していました」
高瀬
「それは…僕もです」
深い青に染まった海
引いては寄せる波の音が少し心地よかった




