第5章
片山柚紀様
いきなりやけどさ。
何が悲しいって言うたら、
ユズと会えへんことよりも何よりも
ユズの名前が「片山柚紀」やってことが
一番悲しいよな。
ほんまは、「三上柚紀」って
名前であってほしかってんけど。
せやけど、結婚してすぐ未亡人なんて、
そんなん嫌やったやろ?
俺にはもう時間が残されてへんかってん。
ごめんな、ユズ。
いつかは、話そうと思ってた。
俺と、彩との話。
それから、俺がユズと別れた理由。
今やったら、話せるから。
だから今、聞いてほしい。
ユズに、俺のこと、全部。
まず、俺がユズを振った理由な。
俺、アメリカに行ってたやろ?
あの時にな、たまたま向こうで
健康診断があってん。
そしたらな、もっと詳しい検査が必要
とか言うてきよったんや。
でもまあ、何か異常あったらあかんし
とりあえず精密検査してん。
どんな結果やったと思う?
俺、脳になんかある言われてさ。
んなあほな、って思うやろ?
けど、ほんまやってんで。
笑えるよな。
でもそんな重大なこと、
ユズには言えんかった。
だからとりあえず、彩に相談したんや。
ユズには迷惑かけられへん。
それが、俺の出した結論やった。
だから日本に帰って、
ユズに別れよう言うてん。
何も説明せんままで、ごめんな。
けどあの時ちゃんと話しとったら
ユズは、絶対俺と一緒におるって
そう言うてたやろ?
それからすぐアメリカへ戻って
そっからはずっと病院暮らしや。
彩は、毎日のように面倒みてくれた。
だから、告白されたときは
どうしても断れんかった。




