第3章
「あ…そうですか」
「うん。でもまさか、片山が、ね」
「…彼に、非はないですから。私が、全部悪いんです」
「ふぅん、そう。でも、もう既に結構知れ渡ってるよ」
「やっぱり、そうですよね。できれば、生徒の耳には入れたくないんですけど」
「え、何言ってんの?自分で蒔いた種じゃん」
彼の言い方に多少腹は立ったが、私は何も言い返せなかった。
彼の言ったことが、正しかったからだ。
「自分で蒔いた種」。
そう、その通りだ。
その種が芽を出してしまう前に、私はそれを一つ残らず摘み取らなければならない。
その種にはきっと、私のいない一か月間、水や栄養がたくさん与えられるだろう。
たくさんの人が育てたその種を、私は、自分一人の力で根絶やしにしなければならない。
それは、どんな方法で?
自問してみたけれど、何一つとして答えは得られなかった。
情けない、と私は思った。
私は結局、今後どうするかを決められないまま、学校を出た。
これから一ヵ月、私はどうすれば良いのだろうか。
最寄りの駅から家までの道を歩きながら、私は考えていた。
私は昨日、この道を、彼――柿本大翔と、歩いた。
それを一体、誰が、どこから見ていたのだろう。
そんなことを考えても、仕方がないのだけれど。
これから、どうしようか。
さっきから、そればかり考えている。
答えを出せないまま、刻々と時間は過ぎてゆく。
何もすることがないので、早めの夕食をとった。
それからテレビを点けてみる。
けれど、特に見たい番組があるわけでもなく、すぐに消してしまった。
仕方なく、私はコーヒーを淹れることにする。
ソファに腰を下ろし、その脇のテーブルにカップを置いた。
コーヒーを一口啜ったところで、私は猛烈な睡魔に襲われ、そのままとろとろと眠りに落ちていった。
どのくらいの間、眠っていたのだろう。
目が覚めた頃には、もうすっかり夜も更けてしまっていた。
窓の外の星空を眺めながら、私は過去に想いを馳せていた。
それから、冷めきってしまったコーヒーを口に含む。
少しずつ飲んでいたはずのコーヒーもいつの間にか飲み干してしまい、私はソファから立ち上がった。
するとその時、不意に玄関のドアチャイムが鳴った。
こんな時間に、一体誰だろう。
そんなことを思いながら、私はドアの覗き穴から外の様子を伺う。
「久しぶり、やな」
息を呑んでドアを開けると、彼はそう言った。




