第3章
――オレがまだ、十三年前の、ヒロト君のままだとでも思った?
イェス?ノー?
今なら、ちゃんと分かる。
私の答えは、紛れもなく「イェス」。
私は、ヒロト君が好きだった。
それはもちろん、恋愛とは全く関係のないところでの感情なのだけれど。
ただただ、あの純粋な少年が、可愛いと思っていた。
それだけ。
人は誰でも、自分を100パーセント変えてしまうことなんて、絶対にできない。
彼の、いたいけな眼差しは、あの頃のまま、何も変わっていなかったように。
「あ、ユズキ」
翌日、学校の廊下ですれ違った彼に、私は呼び止められた。
私は返事をしてから、すぐに呼び方を訂正させる。
すると彼は、私の注意には何の返事もせず、すぐ本題に入った。
――昨日、見られてた。
私は彼の言ったことが、どんなことを意味しているのか、咄嗟には理解できなかった。
「昨日、見られてた」。
それはつまり、私と彼が一緒にいたところを見られた、ということか。
「…誰に?誰に言われたの、それ」
「ここの先生。ユズキは、何も言われてねーの?」
「うん、私は何も」
「そっか」
うん、と私は頷いた。
生徒であったならともかく、まさか、職員に見られていたなんて。
やっぱり、あの時、ちゃんと説得しておけば良かった。
けれど、そんなことを今さら思ったって、もうどうしようもない。
私はとりあえずその場を立ち去り、職員室に戻った。
この後は授業もないので、自分の席に座ってコーヒーを啜った時だった。
不意に、誰かに肩を叩かれた。
振り返ってみると、そこには校長が立っていた。
彼女は不敵な笑みを浮かべながら、私のことを見下ろしていた。
「どうして呼ばれたか、分かってますね?」
私を校長室へと連行し、座り心地の良さそうな椅子に腰を下ろしながら、彼女は言った。
私は、はい、と返事をしたけれど、幾分か声が小さくなってしまった。
案の定、私が呼び出された理由は、昨日の件についてだった。
きっと、私と柿本大翔が一緒にいるところを目撃した誰かが、この校長に告げ口をしたのだろう。
校長の話は延々と続き、私はそれを話半分に聞いていた。
けれど、不意に聞こえてきた「処分」という言葉に、私は思わず顔を上げる。




