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第3章
――今日の午後六時、駅前で。
あの言葉は、一体何だったのだろう。
待ち合わせの約束だろうという予想はつくが、理由が分からない。
当時、三歳やそこらだった彼に、積もる話など何もない。
それは、彼のほうだって同じはずだ。
十年以上も前に、一度か二度会った程度でしかない私と、何も話すことはないだろう。
それでも仕方なく、私は言われた通り、六時頃に駅前へと向かった。
ここで行かなければ、何だか負けのような気がして。
「あ、来た来た」
「え、何、ずっとここで待ってたの?」
「そうだけど。だってさ、六時って言ったら、そのちょっと前には来るでしょ」
「仕方ないでしょ。こっちは仕事があるんだから」
「分かってるよ。だから別に、ユズキが悪いとか言ってねーじゃん」
少し意地の悪い笑みを浮かべながら、彼は言った。
ガキのくせに、と私は内心で思っていたけれど、もちろん口には出さない。
そんなことを言ったって、どうせまた何か言い返されるのが目に見えている。
それにしても、彼はどうして私を呼び出したりなんかしたのだろう。
私を試しただけ?
いや、まさか。
私が思った通り、彼はどうやら私に話があるらしかった。




