表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Tender Liar  作者: 時雨
第3章
38/66

第3章

「今日さ、ユズキんち行っていい?」

「は?あんた、何言ってんの。いいわけないじゃない」

「何でだよ。だってユズキ、どうせ独りでしょ?」

「だったら、何よ。ご両親も心配するでしょ」

「しないよ。オレが友達の家に泊まるって言ったら、何も言ってこねーし」

「だからって、私の家に泊まる気?そんなの、絶対だめだからね」

「何で?別にいーじゃん、泊まるくらい」

「だめ。私とあんたは、教師と生徒なの。分かってる?」

「だから、何だよ。何か言われたら、勉強してました、でいいじゃん」

「あんた、それ本気で言ってる?」

「そうだけど」


涼しい顔をして、彼はそう言った。

このままでは、いつまで経っても話に終わりが見えてこないのではないかと思い、私は仕方なく、彼を家に上げることにした。

幸い、私の家の近所に住んでいる生徒や教師は、一人もいなかった。


家に上がるとすぐ、彼は床に腰を下ろした。

それを見て私は、夕飯がまだなのだということを思い出す。

ということは、夕飯を作らなければならないのか。

彼に、私が?

でも、家に入れてしまった以上は、仕方がなかった。

私はあまり料理が得意なほうではなかったけれど、何も作れないわけではない。

私の出した料理を、彼は文句の一つも言わず、全て平らげてくれた。

彼も、やはり根は優しい人間なのだ。


「で、何の用なの?」

「ああ、そっか。そういえば、まだ何も言ってなかったね」

「うん。何も聞いてない」

「…あのさ、トールは?」

「え、融?えっと、実は――」

「いや、いいんだけどさ、別に。ただ、今でもオレのこと憶えてんのかな、と思って」

「憶えてるんじゃない?だってあの人、約束破ったら針一万本飲まなきゃいけないんだよ」

「そういえば、そんなこと言ってた。何だ、ユズキ、憶えてるんじゃん」

「たまたま、思い出しただけ。こんなこと、今までずっと忘れてたし」


それは、紛れもない事実だった。

私の中ではヒロト君に関する記憶なんて、もうほとんどないに等しかった。

言われれば思い出す、その程度のものでしかない。

それに対して、彼の中では私たちのことが印象深く記憶に残っているのだろう。

そうでなければ、私に声なんかかけなかったはずだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ