第2章
そんな感情を心の隅に追いやって、私は二人と他愛もない会話をする。
しばらくしてから私たちは、電車に乗って千葉を出た。
「そういえば、柚紀ってどこの大学通ってるの?」
「東京学芸大学、です」
「え、じゃあ、将来は教師になるんだ」
「まぁ、はい。一応そのつもりです」
そっか、と言って香月先輩はにこやかに微笑んだ。
彼女は確か、融と同じワシントン大学の医学部に所属していたはずだ。
まあ、海外の大学、ましてや医学部なんて、私とは全く無縁なのだけれど。
しばらくすると東京に入ったので、私たちは電車を降りた。
そこから私は借りているアパートへ、融と香月先輩はさらに別の電車で地元の横浜に帰るのだ。
ちなみに明日は、三人で東京散策をするという予定を立ててある。
翌日、私たちは朝10時に東京駅で待ち合わせた。
そこからまずは青山へ行き、私がアルバイトをしているカフェに、二人を連れて行った。
「素敵なお店ね、ここ」
「あ、はい。ありがとうございます」
「ちなみに、お勧めはどれ?」
「えーっと…あっ、このパンケーキとか。あと、ガトーショコラとか」
「そっか。じゃ、パンケーキにしようかな」
「ナイスチョイスです。…融は?どれにする?」
「えっと、俺は――」
「ごめんね、柚紀。融ってば、こう見えて甘いものとか苦手なの」
「あ、そうなんですか…」
「うん。だから、コーヒーだけお願い。それでいいよね、融」
「おう、サンキュ」
何だ、そっか。融、甘いのは食べれないんだ。
知らなかった。
でも、香月先輩は、知ってた。
まあ、三年という長いブランクのせいなんだから、仕方ない。
私はウェイターに注文をしながら、そんなことを考えていた。
この三年の間に、何があったのか。
それは、なるべく考えないようにしていた。
知らぬが仏、だ。




