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第0章
彼と初めて出会ったのは、いつだったか。
確か、まだ私は学生だったはずだ。
その程度でしかない、曖昧な記憶。
まるで積もらずに溶けてゆく、淡雪のような。
まるで、散りゆく桜のような。
そんな、儚い恋だった。
それでも、がむしゃらに、私たちは進んでいた。
ただひたすら前へ、前へ、と。
最後に会ったのは、いつ?
それはまだ、はっきりと憶えている。
もう、何年も前の事だというのに。
私たちは、デートの際に必ず立ち寄る公園があった。
そこにあるベンチに座りながら、何分でも、いや、何時間でも、話していられた。
気が付けば夜になっていた、なんて事も珍しくはなかった。
彼と最後に話をしたのも、その場所だった。
――別れよっか。
まるで、挨拶をするような口調で、彼はそう言った。
私は初め、それは彼のジョークだと思っていた。
こんなに幸せなのに、彼が本気でそんな事を言うはずがない、と。
完全に、高をくくっていた。
自分は、安全地帯のど真ん中に立っているのだと、思い込んでいた。
けれどそんなものは、全くの勘違いで。
理由は教えてもらえなかったけれど、私はふられてしまったのだ。




