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第0章
ふと、窓の外の星空を見つめる。
私は幼い頃から、星が好きだった。
彼も、星が大好きだった。
彼はとてもロマンチストで、星が好きなのもそのせいだ、といつか自分で言っていたような気がする。
だからといって、私は別にロマンチストなんかではない。
彼は今、どこで、一体何をしているのだろうか。
私と同じように、こうしてあの頃と同じように、この満天の星空を見上げているのだろうか。
この同じ空の下で、私も彼も、今を生きている。
そう考えると、何だかくすぐったいような感じがした。
私は、テーブルに置いてあったコーヒーを一口啜り、カップをソーサーに戻した。
さっきから、その動作を何度も繰り返している。
そのため、カップの中のコーヒーも、もう残りわずかだった。
コーヒーは、すっかり冷めてしまっている。
でも、他に何もする事がなかった。
仕方なく、またコーヒーを口に含む。
思い返してみると、彼にはたくさんの事を教わった。
それは例えば、人を愛する、ということ。
そして、人を憎む、ということ。
彼は、私の全てだった。
彼が、私の青春そのものだった。
私の全てを、彼に捧げてきた。
きっと、あの頃の私には、彼しか見えていなかったと思う。




