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第0章
初めての恋だった。
だからもちろん、ふられたのも初めてだった。
私は未熟だった。
とんでもなく、自分本位な人間だったかもしれない。
それが故に、別れを切り出されたのかもしれない。
と、今の私なら、そう思う事ができる。
今でも不意に、彼を懐かしく思う瞬間がある。
その瞬間は突然現れ、すぐに消える。
カメラのフラッシュがその光の残像を見せるように、不意に現れた「彼」もまた、同じように余韻を残して去ってゆく。
たとえば、彼の口によく馴染んでいた、関西弁を耳にしたとき。
たとえば、彼の好きだったこの星空を眺めているとき。
たとえば、彼に似た匂いを嗅いだとき。
そんな時に私は、ふと彼を思い出す。
なぜだろう。
彼は私にとって、最後の恋人などではなかった。
それなのに、どうしていつも、思い出すのは彼なのだろう。
今でもまだ、彼が好き?想ってるから?
ううん、違う。
彼への想いは、別れた時にきっぱりと捨て去ったはずだ。
だったら、なぜ。
最初の恋人だったから、という理由でもない。
――ユズ。
記憶の中の彼はいつも、笑顔で私の名前を呼んでいた。
別れ話をした、あの日でさえも。
だから、なのだろうか。
だから、思い出してしまうのだろうか。彼の事を。




