第8話
食事を終えたプリメイシアは残った鎧猪の巨大な肉の塊を眺めていた。
数日ではどう考えても処理できない量。
「これ……食いきれねぇよなぁ。どうすっかなぁ」
干し肉に加工するにしても量が多すぎる。
塩もまだ心もとない。
保存する場所もない。
頭を悩ませていると、村があった方向から元気の良い声が響いてきた。
「おーい!」
三人。
服装からすぐに村の人間だと分かった。
彼らはそれぞれ泰羊に小さな荷台を引かせ、何やら大きな塊を運んでくる。
布や木が見えた。
プリメイシアが遠巻きに見守っていると、マルークが先に足早に距離を詰めて男たちと言葉を交わしていた。
やがてマルークが小走りにこちらへ戻ってくる。
「プリメイシアさん! 村のテントを持ってきてくれたそうです!」
男たちはすでにプリメイシアの馬車の方へ向かっていた。
どうやら設置を手伝うつもりのようだ。
プリメイシアはそれを見て考えが浮かんだ。
「マルーク、鎧猪の肉を村の人たちの分も切ってやってくれ。テントの礼も兼ねてな。頼めるか?」
おそらく彼らは礼を求めに来たわけではないだろう。
村長からの友好の印と、マルークを単身で送り込んだ義理立て。
それと拠点の視察も兼ねている。
それくらいは彼女にも察しがついていた。
(それでも、ありがたいことには変わりねぇな。俺も手伝うか)
マルークは目を輝かせて頷いた。
「分かりました! ありがとうございます!」
すぐに肉の切り分け作業に取りかかろうとする少年に、プリメイシアは声を投げた。
「多めに切ってくれていいぞ! 遠慮するなよ! どうせ俺たちだけじゃ食いきれねぇんだからな!」
「はい!」
きっとマルークは純粋に仲間に食料を分けた良い人だと見えているのだろう。
まだお互い手の内は分からない。
襲われればひとたまりもない力を持っている可能性はある。
マルークに作業を任せ、プリメイシアは三人の男たちの後を追った。




