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追放された2メートル令嬢 ~魔法少年と新天地で最強領主目指します~  作者: 川合 佑樹


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第40話

 三日後の今、バスチールに促されて、プリメイシアは外に出ることにした。

 まだ左肩は動かすと痛むが、腫れはだいぶ引いていた。


 骨折ほどではなかったらしい。

 頑丈に生んでくれた両親に、心の底から感謝するしかない。


 布をめくり、一歩を踏み出す。

 すると、そこには村長モーセムをはじめ、村人たちと子供たちが、塀の外にずらりと並んで待っていた。


 マルークも、ファイとラックも、その輪の中にいる。

 皆が一斉に彼女に注目した。


 大きな拍手が響き渡った。

「英雄の帰還だ!」


「岩熊と対峙して、無事でいられるなんて!」

「ありがとう、プリメイシアさん!」


 そんな声が、次々と飛び交う。

 プリメイシアが守ったものは、マルークや兄弟の命だけではなかった。


 離れていても、良き隣人として、ちゃんと評価してくれていた。

 彼女は前に歩み出る。


「みんな、ありがとう!」

 声に力を込め、皆の顔を見渡した。


「決して岩熊の脅威が去ったわけではない! もしまた奴が現れるなら! その時は再度、この鉄槌を持って、追い払って見せよう!」


 右手を高く掲げた。

 拍手はさらに大きくなる。


 バスチールがすぐ横で、肘で脇腹を突いてきた。

「よっ、演技派!」


「今いいところなんだ、黙ってろ」

 プリメイシアは村人たちに向かって歩き出した。


 ここは、もう「一人」の土地じゃない。

 守るべきものがあり、支えてくれる人々がいる。


 その実感が、彼女の足取りを、強くしていた。

 モーセムが前に進み出てきた。


「プリメイシア、よくぞ生きて帰った」

「まぁ、なんとかな。なんだよこの出迎えは。仰々しいよ、ったく」


「それほど、あの魔物は厄介なんじゃよ」

「取り逃がしちまったけどな」


 モーセムは首を振った。

「よいよい。野生の獣じゃ。そんなもんじゃて」


「……世話になったようだな。感謝する」

「良き隣人として当然のことをしたまでじゃ。それに、マルークから頼まれてしまったからのう」


 バスチールが割り込んできた。

「この三日間、マルークくん、超がんばったんだよー? 周り見てみなよ!」


 プリメイシアは促されるままに周囲を見渡した。

 確かに、彼女が倒れていた三日間で拠点は大きく様変わりしていた。


 小さな物見塔が新しく立ち、焼かれたテントの代わりに五張りが増え、拠点全体を囲うように土壁まで築かれている。

 それはまさに「守るための力」だった。


「そうか……俺のためにか」

「全部一人でやらなくたっていいんだよ、プリメイシア。あんたは攻めるのが得意なんだから、守るのは他に任せときなさい。今回は準備不足だっただけ。次はもっと上手くやれるよ」


「……そうだな」

 プリメイシアがマルークを捉えた。


 少年は彼女と目が合うと、両手を拳に握り、胸の前で力強く押し当てていた。

 瞳には決意と、あふれんばかりの安堵が浮かんでいる。


 プリメイシアの表情が自然と柔らかくなった。

「マルーク! よくやった! お前は立派な男だ!」


 その言葉に、マルークの顔が明るく輝いた。

 村人たちの関心が一斉に少年へ向かった。


 村の子供たちが「行けー!」と背中を押した。

 マルークは最初三歩ほど歩み出たが、やがてその足取りは足を少し速め、走るような速さへと変わった。


 プリメイシアは左肩の痛みなど忘れたようにその場にしゃがみ込み、大きく両手を広げた。

「こいよ!」


 マルークは迷うことなく、勢いよくその胸の中に飛び込んだ。

 温かく小さな体が、力いっぱい彼女にしがみついてくる。


 この三日間、何度もマルークの影は中から見えていた。

 それでも彼は入って来ず、自身の役割を全うしようとしているのを感じていた。


 外で聞こえる声もマルークのものが多かった気がする。

 きっと気に病んでいる部分多かったのだろう。


 守られるだけではなく、守るために。

(この想いを、誰にも奪わせない)


 プリメイシアはマルークを抱きしめた。

 いつもよりも強く、離さないという想いを込めて。


 見えていないが少年はきっと泣いていた。

 胸元に熱が伝わる。


 この涙は俺だけが知っていたい。

 そう思い、隠すように頭を撫でた。


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