第35話
プリメイシアは、バスチールが到着したのを見て二つのことを決めた。
反対側と弓兵は彼女に任せる。
俺は後方の敵を一掃する。
野盗の数は、少なくともあと六人はいるはずだ。
剣を抜いて後ろの木の影へと地面を蹴って滑り込んだ。
案の定、影に二人の敵が潜んでいた。
敵は驚き体を硬くした。
プリメイシアは先に右側の敵の首を剣で跳ね飛ばした。
回転の勢いのまま、短く握った槍で左側の敵の腹を突き刺す。
動けなくなったところに首に剣で一閃し、斬り落とした。
同時に森の奥からは、悲鳴が連続して上がった。
「助けて!」
「そんな……!」
「化け物だ!」
バスチールの機動力は、木々が密集する森の中でこそ最大限に活きる。
プリメイシアは安心してファイの元へと戻った。
「騎士の男! 仲間はもういなくなったみたいだぞ! どうする! 一騎打ちするか!」
諦めたのか、覚悟を決めたのか、男が木の影から顔を出してきた。
プリメイシアは剣を鞘に納め、槍を両手で構え直した。
「良い根性だな! さすがは騎士だ! 気に入った!」
これだけ言っておけば、仲間の手前もう逃げられないだろうと踏んだ。
しかし、男の様子がおかしい。
影の中でよく見えないが、どこか虚ろな立ち方だった。
ふらふらとこちらへ進んでくる。
戦う意思はあるようだった。
次の瞬間、男は頭から地面に倒れ込んだ。
プリメイシアはその奥にいる“何か”を見て、息を呑んだ。
助けねばという感覚だけで体が叫びを上げた。
「ファイ! 逃げろおおお!」
ファイは動けなかった。
それは生物としての本能だった。
圧倒的強者の前では、死を覚悟するしかない。
プリメイシアの前に現れた者。
バスチールだと思っていたそれは、なんとあの岩熊の子供だった。
だが「子」というには、その体躯は親の岩熊をはるかに超えていた。
あの時付けた左目の傷がなければ、別の個体だと言われても信じられるほどの巨体。
「あの辺りに魔物がいないと思ったらそういうことかよ……ずいぶん食ったようだな」




