第29話
それから一週間後。
拠点はさらに発展を見せていた。
材料がないためテントはまだ張れていないものの、十張分のテントスペースを、土の塀と舗装された道で区画整理し終えていた。
畑はその分重点的に拡充され、父から届いた種もすべて植え終わっていた。
そして最初に植えていた芋が、すでに収穫可能なほどに大きく育っていた。
少々早い気がするが、どうやら以前ジャルスンが来た時に、土に何らかの魔力を残し、育ちを促進させる効果を付加してくれていたようだった。
(そんなことが……できるんだろうな)
あとは木材や布さえ潤沢であれば、本格的な村として活動できるのではないか。
そんな状況にまでなっていた。
その頃、プリッツォが再びやって来た。
以前は荷馬車一台だったが、今回は二台。
プリッツォは御者台から軽やかに飛び降り、会釈した。
「プリメイシア様、お待たせいたしました。ご要望通り、木材を可能な限り積んでまいりました。丸太と板材で二台目の半分近くを占めています。あとは石灰と瓦、燻製用の木チップ、漬物用の塩、子供サイズの作業着と上着……それに、厚手の毛皮の端切れ、簡易ランプの油と芯、木製の食器類、乾燥果物と果実酒の小樽も少し。村が少しずつ形になっていくのを見越して、揃えてまいりました」
サラッと並べられた品々は、どれも生活を一歩先に進めるものばかりだった。
「わー、子供服まで! 可愛いー!」
「これで家が建てられますね!」
バスチールが目を輝かせ、マルークが木材の山を見て笑う。
荷台が空になったところで、プリッツォは最後の幌の奥に目をやった。
「……それから、もう一つだけ。お連れした方がおります」
彼女が手を差し伸べると、幌の影から二つの小さな影が降りてきた。
白髪の少年と、黒髪の少年。
二人とも肩まで伸びた髪を少し乱れさせ、狐の耳をぴったりと頭に伏せ、色違いの尻尾を体に巻きつけるように縮こまらせている。
服は旅の埃で汚れ、薄手のチュニックとズボンが体にぴったりと張り付いていた。
年齢はマルークよりも明らかに下。
十歳か、十一歳くらいだろう。
華奢な体躯が、風にでも飛ばされそうに見える。
白髪の少年が、黒髪の少年を庇うように一歩前に出た。
その足は震え、大きな赤い瞳はプリメイシアの二メートルを超える体躯を捉えると、視線が定まらずあてもなく揺れ動いた。
黒髪の少年は兄の袖を両手で強く握りしめている。
プリッツォが続けた。
「こちらです。白髪の子が兄のファイ、黒髪の子が弟のラック。親御さんはもう……この世にいらっしゃいません。亡くなる前に相談を受けていたんです。病気もなく四肢は問題なく動きます。プリメイシア様。どうなさいますか?」
双子は互いに寄り添ったまま、地面へ顔を伏せたまま動かなかった。
白い尻尾と黒い尻尾が、ほとんど動かない。
怯えと疲労と、それでもどこか希望を探るような緊張が二人の肩にのしかかっていた。
プリメイシアは彼らの前に行き、膝を折って目線に合わせた。
「……ようこそ、俺の土地へ」




