第27話
プリッツォは拠点の物資用のテントの前まで行くと、馬車の荷台から一つずつ荷物を引きずり出す。
「まずはこちらから降ろしますね」
彼女の声ははっきりとしていて、仕事の段取りはすでに決まっているようだった。
小さい箱を手に取っては地面に手際よく下ろしていく。
慣れているのだろうとプリメイシアは見守っていた。
そのとき、足音が近づいてきた。
「プリメイシア! 遅くなりました!」
マルークだった。
プリッツォは一瞬、少年の左袖の欠損に目を留めたが、すぐに表情を崩さず微笑んだ。
「初めまして。プリッツォと申します。行商をやっております」
「どうも、マルークです。プリメイシア、何か手伝うことは?」
「どうだろうな。プリッツォ、荷下ろしだけ手伝おうか?」
「よろしいので?」
「気にすんな。その方が早く済むだろ?」
「助かります。ではマルークさん、こちらの麻袋を先に地面へ。重いので二人で持ちましょう」
マルークは頷き、すぐに荷台に上がった。
荷下ろしを手伝い始めたが、決して魔法は使わなかった。
プリッツォの指示は的確で、声のトーンも穏やかだった。
それでいて丁寧な姿勢は崩さない。
「そちらの箱はプリメイシアさんに。……はい、そうです。バスチールさんは、そこの小さな革袋をまとめてくださいね」
バスチールも「任せてー!」と元気よく参戦し、三人で荷台をあっという間に空っぽにした。
大型の木箱が五つ、麻袋が十数袋、小さな革袋や木箱がさらに十個ほど。
プリッツォは荷物の山を二つのグループに分けていた。
片方は明らかに「大量で実用的」な印象のもの。
もう片方は「コンパクトで色鮮やか」な印象のものだった。
「それでは、商品の説明をいたします」
プリッツォはまず左側の大きなグループを指差した。
「こちらが、ヴァルヘイン様からの定期便でございます。料金は事前に受け取っておりますので、持っていっていただいて構いません」
一つずつ木箱を開けながら、中身を説明していった。
「まず種子類。戦場仕様の芋に加え、耐乾性小麦、耐寒性豆類、草原適応型の牧草の種を各十袋以上」
次に工具の箱。
「鉄製の鍬、スコップ、斧、ノコギリが各五〜十本。釘、蝶番、ロープも大量に。帆布と粗削りした木材、それに簡易水車用の歯車部品と井戸掘り用の鉄パイプも入っています」
保存食の樽を開けると、塩の匂いが広がった。
「塩漬け豚肉の樽が三つ、干し魚、蜂蜜の壺、軍用保存食の硬質ビスケットと乾物野菜。粗布の作業着が十着、毛織りのブランケット、石けんの塊も。医療品として軍用救急箱と蚊除けの香草も揃えてあります」
最後に、小さな布袋を取り出した。
「そしてこちら……手紙も同封されています。後ほどお読みください」
プリメイシアはそれが金貨の袋だと分かり、受け取ると胸元にしまった。




