第25話
数日後。
プリメイシアは全身を金属のフル装備で固め、以前岩熊と遭遇した岩砂の地帯へと足を進めていた。
右手には槍を握り、腰には長剣。
そのすぐ後ろを守られる形でマルークがついてくる。
胸元には村長モーセムから受け取った岩熊の魔核をはめ込んだペンダントがあった。
少年は周囲の気配を探るようにあたりへ注意を巡らせていた。
そして最後尾を固めるのはバスチール。
三人は、先日の激闘で取り逃がしてしまった、あの岩熊の子熊の探索に向かっていた。
そんな状況下でバスチールがのんびりとした声を出した。
「魔物自体がそんなにいないんだねー」
「そうだな。だが、この辺りの主が倒されたんだ。いずれ増えるさ、実際拠点の周りには兎が増えてきていた」
プリメイシアは槍を肩に担ぎ答えた。
「いない方が私は楽でいいけどねー」
「その武器くらいの仕事はしてもらうからな」
「はいはーい」
バスチールはいつの間にか、村で新調した装備を身に着けていた。
両腰に短剣を下げ、背中には短弓と矢筒を背負った軽装。
金貨はやはり村からきっぱり断られたが、「土魔法による今後の開拓協力」という名目で、さすがに受け取ってもらっていた。
もらいすぎを回避したいという想いもあったが、
どこまでが『仕える』か分からない以上、金銭での取り決めはやるべきだという当然の筋道だと納得した。
そして今はその武器の慣らしも兼ねて、魔物狩りをすることになった。
バスチールは立体的な構造を素早く把握するのが抜群に上手く、何をさせてもそれなりに器用にこなす万能型だった。
前衛が基本的にプリメイシア一人である今、弓と剣の両方をこなせる戦力は非常に心強い。
道中、すでに一体の砂蜥蜴を発見し、討伐していた。
バスチールが放った矢が、魔物の目を正確に射貫き、
怯んだ隙を突き、プリメイシアが槍を一閃。
息の合ったコンビネーションで瞬殺した。
しかし、肝心の岩熊の子熊の痕跡は一向に見つからなかった。
糞尿の跡も、足跡も、気配すらない。
以前親子と遭遇した付近に、岩陰の洞穴があったが、念入りに探ってみたが空っぽだった。
「親が殺されて、拠点を変えたのか?」
プリメイシアの疑問にマルークが答えた。
「親を殺された魔物は……本来それほど遠くに逃げることはないと思います」
「そうなのか?」
「魔物も動物ですから、親の縄張りを引き継いだり、混乱しながらもこの付近での生存を優先するはずです」
「ってことは、この辺りにまだ潜んでいるってことか」
するとバスチールが口を挟んだ。
「傷を負わせた分、警戒心が強くなって隠れてるってことかな?」
「可能性はあるな。あと少しこの辺りを探索して、見つからなければ砂蜥蜴を回収して帰るぞ」
「了解! ちなみに砂蜥蜴って食べるとおいしいの?」
「マルーク曰くおいしくはないらしいぞ」
結局、岩熊の子熊は見つからなかった。
三人は砂蜥蜴の死骸を村へと持ち帰った。
村人たちが手慣れた様子で解体作業をしてくれたおかげで、プリメイシアたちは上質な肉の塊を受け取り、拠点へと戻ることになった。
マルークは「食べるの?」という顔をしていた。
本当においしくないのだろう。




