第22話
プリメイシアが村に着くと、作業を手伝っていた女性の一人がすぐに気づいて近づいてきた。
「プリメイシアさん、どうされたんですか?」
「村長に会いに来たんだ。少し相談があってな」
「わかりました! 村長呼んできますね!」
女性は小走りにテントの奥へ駆けていった。
(ずいぶんと馴染んできたものだな……)
村の人々が自分を自然に受け入れてくれている実感があった。
ほどなくして、モーセムだけがやって来た。
「どうしたんじゃ?」
「風呂とトイレを作りたくてな。土魔法の使い手を借りられないかと相談に来た」
「ああ、よいぞ」
モーセムはあっさりと頷いた。
以前のような警戒や抵抗は、もう微塵も感じられない。
すると村長はふと思い出したように懐から小さなペンダントを取り出した。
「ついでじゃが、これも持っていけ。岩熊の魔核から作った魔法道具じゃ。思いを込めれば、岩熊のように体が堅固になる」
プリメイシアはそれを受け取った。
「ありがとう。マルークにでも渡しておくよ」
「はは、そう言うじゃろうと思っておったよ。あの子はよくやっているかね?」
「ああ。今もせっせと土を掘ってるさ」
「そうかそうか。お前に預けて正解だったようじゃのう」
モーセムはついでにいくつかの建築資材も荷台に乗せてくれるよう手配してくれた。
やがて、土魔法を使える村の男と泰羊を一頭連れ、プリメイシアは拠点へと戻っていった。
到着すると、マルークとバスチールが走り回りながら地面を抉っていた。
話を聞くに、どうせなら区画整理も終わらせちゃおうということになったらしい。
石畳を敷く予定地をうっすらと削り、ついでに大量に出た土の置き場も作り上げ、畑の拡充予定地や今後の住居建設予定地まで、地面に線を引いて整理していた。
(凝り性と新しいもの好きに現場を任せると、こうも物事が進むのか……)
プリメイシアは内心で感心しながら、その様子を眺めていた。
土魔法の使い手――ここに来るまでの間に初めて名前を聞いたのだが、ジャルスンというらしい――はマルークの元へ歩み寄り、何やら小声で話し始めた。
するとマルークがバスチールに何か耳打ちし、バスチールがこちらへ小走りにやってくる。
「プリメイシア、テントで寝てていいよ!」
……何やら嫌な予感がする。
プリメイシアは、
「好きにしてくれ」
そう答えるとテントに向かった。
まだ明るい天井の布をぼんやりと眺めながら、彼女はベッドに横になった。
(……悪いことにはならんだろ)
目を閉じると、すぐに眠気が訪れた。
外から聞こえる笑い声が、遠く子守唄のように響いていた。




