↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された2メートル令嬢 ~魔法少年と新天地で最強領主目指します~  作者: 川合 佑樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/42

第15話

 村は祭り気分に染まった。

「宴だ! 宴だ!」


 誰かが叫ぶと、テントの周りに焚き火が次々と灯された。

 マルークが率先して大きな肉塊を切り分け、村の女たちがそれを串に刺して火にかける。


 肉の香ばしい匂いが風に乗って広がっていく。

 プリメイシアはテントの前に座り、胡坐をかいてその光景を眺めていた。


 手には村人から渡された木製の杯。

 中の液体は薄い果実酒で、甘酸っぱい香りが鼻をくすぐる。


「プリメイシアさん! これ、僕が焼いたやつです! 一番いい部位を持ってきました!」


 マルークが片手に大きな肉の塊を運んでくる。

 まだ熱々で、表面はカリッと焼け、中からは肉汁が滴っていた。


 マルークが遠くに置いてあった酒瓶を、光球を伸ばして取り、プリメイシアの杯に酒を注ぎ足す。

「遠慮なく飲んでください!」


「ありがとよ」

 プリメイシアは杯を一口で半分飲み干すと、肉にかぶりついた。


 力強い繊維の抵抗感があってから、熱い肉汁が口いっぱいに爆発的に溢れ出す。

 濃厚でコク深い旨味が舌全体を包み、脂の甘さと野性味あふれる赤身の力強さが、噛むほどに染み渡った。


「……おおっ、これヤバいな。旨すぎるだろ。これが岩熊か」


 村人たちの笑い声が重なり、誰かが簡単な歌を口ずさみ始める。

 風を操る男が軽く手を振ると、焚き火の炎がくるくると舞い上がり、花火のように夜空を彩った。


「すげえな、魔法って……すごいな」

 彼女は小さく呟き、もう一杯酒をあおった。


 体がほんのり暖かくなる。

 追放されてから初めて味わう、こんな賑やかな夜。


 父の顔や王宮の冷たい大広間が、ふと頭をよぎったが、すぐに吹き飛んだ。

 今はただ、この火と肉と笑い声が心地よかった。


 マルークが隣で、自分の杯を手に掲げる。

「プリメイシアさん、かっこよかったです」


「お前も頑張ったよ。よく逃げなかった。男だな」


 二人は杯を軽く合わせた。

 村人たちが「乾杯!」と声を揃える。


 宴は夜更けまで行われた。



 翌朝。

 プリメイシアはテントの中で目を覚ました。


「……ん?」

 柔らかな毛皮の感触が体を包んでいる。


 予想していたよりずっと暖かい。

 夜風の冷たさがほとんど入ってこない。


 布の壁が風を上手く遮ってくれているらしい。

 初めてこの地で過ごすテントでの目覚めは、思った以上に快適だった。


 外から賑やかな声と作業音が聞こえてくる。

 土を掘る音、布が張られる音、誰かの笑い声。


(なんだ……?)

 彼女は身を起こし、布の服のまま外へ出た。


 草原の朝陽が眩しい。

 馬車のあった場所の近くに、何人かの村人たちが集まっていた。


 ある者は地面に深く穴を掘り、ある者は新たに二張りのテントを設営している。

 土を運ぶ者、杭を打つ者、それぞれが手慣れた様子だ。


 その中心でマルークが気づき、足早に近づいてきた。

「おはようございます!」


「なんだ? これは」


 マルークは周囲を指差して矢継ぎ早に説明した。

「岩熊のお礼で、新たに食料の保存用に地下に冷蔵できる場所を作ってもらっています。ついでにその土で竈も作ってもらっています。それに干し肉作り用の燻製室、物資保管用でテントを二つ張ってくれています! 作業台も作ってもらっています」


「おお、すげえな。そこまでやってくれたのか。ありがたい」


「と言っても村でもあの量は保存しきれないので、こっちでも保存しろって意味もあると思うんですけど」


「いずれは必要だったんだ。助かるな」


「はい! これで食料に関しては少し安心できますね!」


「そうだな」

 プリメイシアはでき上がりつつある作業場を眺めた。


 昨日まで何もなかった場所が、みるみる拠点らしくなっていく。

(……あとは領民だなぁ)


 彼女はマルークの頭を軽く撫で、作業中の村人たちに向かって大きく手を振った。

「おーい! 手伝うぞ! 何かできることあったら言えよ!」


 村人たちから「座って待ってろー!」という元気な返事が返ってきた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。