第11話
草原を離れて三十分ほど。
草が徐々に低くなり、足元に灰色の岩が顔を出し始めた。
風が強くなり、砂混じりの土が軽く舞う。
背の低い低木だけが根を張っている。
「マルーク、魔力の反応はどうだ?」
プリメイシアは周囲を確認しながら聞いた。
「……前方に一つ。砂地に紛れています。それほど大きくはありません。岩熊ではないと思います」
ほどなくして、魔物が姿を現した。
体長はプリメイシアほどもある、砂色をした蜥蜴だった。
背中には岩のような突起が並び、砂に体を半分埋めて待ち伏せている。
『砂蜥蜴』
マルークから事前に聞いていた魔物だ。
「先手必勝!」
プリメイシアは槍を一閃。
巨大な穂先が風を切る。
砂蜥蜴が素早く前に跳び、爪を立てて襲いかかってくる。
その動きは、プリメイシアの目には遅すぎた。
足を踏ん張り、槍を上に半回転させ、砂蜥蜴の顎を打ち上げる。
続けて反動で降りてきた穂先をコントロールし、喉元に突き刺す。
仕留めるのに、数秒もかからなかった。
プリメイシアは槍を砂に突き立てる。
地面を切りつけ血を払った。
「なんだ。デカいだけで大したことねーな。兎と変わらん」
マルークが素早く寄ってきて、魔物の体を調べた。
「死んでますね。ただ……」
「どうした?」
「持って帰ってもいいんですが、砂蜥蜴ってあんまり美味しくないんですよね」
「……そうか。置いていくか?」
「背中の部位は装備などには使えるのですが……」
「わかった。素材は帰りに回収だ。重い荷物抱えて戦うのは御免だからな」
二人はさらに奥へ進んだ。
低木もまばらになり、足元は岩と砂の急斜面になった。
山肌がすぐ目の前に迫る。
プリメイシアが頂上を見上げた。
「……この上か?」
「いえ、岩熊はここから先には出ないと思います」
「……日も傾き始めてるな。引き返すぞ、マルーク。魔力の探知だけは怠るな」
「はい」
二人は踵を返した。




