↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
4/4

囚われの王子は救いを求める

ゴジラシリーズ大好きです!一番好きなのはビオランテとモスラです!

久しぶりだね。


……実を言うと、僕は来るつもりなんてなかったんだ。

君を見張っている者たちが、どうしても僕に会いたいと君がずっと騒いでいるって言うから、仕方なく様子を見に来ただけでね。


ほら、まずは温かいお茶でもどうぞ。

庭に咲いたばかりの薔薇を使ったものなんだ。なかなか上等だよ。


君も、こんなにいいお茶を飲むのは久しぶりだろう?


それで?


どうして君は、僕たちが会う必要があると思ったんだい?


血の繋がりだけで言えば、確かに君はフローラの息子だ。


でも、それだけだよ。


……おや。

エレインはまだ君を生かしていたのか。


僕はてっきり、君たちを養うためのお金なんてさっさと切り詰めて、あの古い堰を修理する費用に回すべきだと思っていたんだけど。


何にそんなに驚いているの?


最初から、君を残しておきたいと言ったのはエレインだよ。

君が彼女の親友――つまり僕の妹によく似ていたから、すぐに廃棄してしまう気にはなれなかったんだ。


君はこんなことになるまで、自分の宮殿の帳簿を一度も見たことがなかったのかい?


君が食べるものも、着るものも、暮らす場所も、それから君を教育する教師たちの費用まで――どれひとつとして、王妃だったエレインの承認なしに出せるものじゃなかったはずだけど。


あの蠅?


あれはたぶん、暇なときに数時間、君と遊んでやる程度だったんじゃないかな。


たまに家のペットを可愛がる子供みたいなものだよ。

餌をやって、世話をして、後始末までしているのは全部ほかの人なのに、自分の犬だとばかり思っている。


実際、あれはほとんどの時間を、フローラに似た女を追いかけ回すことに使っていたからね。


ほら、有名な話があっただろう?


君が女装して、カタリナ嬢の連れを装って舞踏会に出たときのことだよ。


あの蠅は君を見るなりその場で泣き出して、侍従たちを引き連れたまま玉座から駆け下りてきた。

しかも、自分の指にはめていた大粒のルビーの指輪まで外して、君に贈ろうとしたそうじゃないか。


僕にはどうしても、君とカタリナがあの出来事を「父親の深い愛情の証」だと思えた理由がわからないんだ。


どう見ても、女装した君をフローラに似たどこかの女と勘違いして、その指輪で愛人になる気があるか探りを入れようとしただけだろう?


それに、エレインはいつだって教育の大切さを信じている。


君はただ、あの蠅とマクシン侯爵に育て方を間違えられただけかもしれない。

きちんと磨き直せば、それなりの石にはなるかもしれない――そう言っていたよ。


……「蠅」とは誰のことかって?


本当に聞かないとわからない?


権力でエレインを自分のそばに縛りつけ、聖女という彼女の名を利用し、フローラを閉じ込めておきながら、そのすべてを厚かましくも「真実の愛」と呼んだ男のことだよ。


最初から最後まで、二人の女はどちらもあれを選んでなんかいなかったのにね。


おや。


大好きなお父さまを侮辱されて、腹が立ったのかい?


……おい。


動くな。


はあ。


本当に不思議だな。


エレインにはよく、僕の悪いところは説教が長いことと、人の間違いをいちいち指摘したがるところだと言われるんだけど。


でも、君たちのうち一人でも教訓を覚えることができていたなら、こんなことにはなっていないと思うんだ。


初めて僕を見る人なら、知らなくても仕方がない。


でもどうして、一度でも僕が戦うところを自分の目で見た人間が、二度目になると決まって、この蔓が勝手に動くことを忘れてしまうんだろう?


僕が「常夜の地」から帰ってきたばかりで、自分が誰なのかすら覚えていないまま王宮を半分壊した日。


マクシン侯爵親子がエレインを殺そうとして、僕の蔓に阻まれた日。


そして、建国祭で君が僕に襲いかかって、自分の身体を貫かれた日。


これだけあっても、まだ足りないのかい?


あと何回繰り返せば、僕の蔓は勝手に反撃するんだって覚えてくれるんだろうね。


そんな目で見ないでくれよ。

まるで僕がわざと、前と同じ場所に蔓を突き刺したみたいじゃないか。


一度傷ついた場所は、無傷の肉より貫きやすい。

蔓が勝手に、いちばん楽な場所を選んだだけだよ。


僕はああいうやり方が大嫌いだったけれど、昔マクシン侯爵が鞭を使って犬を躾けていたとき、犬たちはずいぶん物覚えがよかった。


本当に不思議だね。


あの人が躾けた犬は賢くて敏い。

どうすれば痛い目に遭わずに済むか、すぐに覚えた。


なのに、あの人が育てた人間は、どうして誰一人として覚えられないんだろう?


はあ。


世間知らずなお坊ちゃんだ。


君はマクシン侯爵に甘やかされすぎたんだよ。


おいおい、そんなことで怒るなって。


まだ「祖父を侮辱するな!」なんて叫ぶ元気があるの?


元気だねえ。

さっきので、少しくらい肺を傷つけたかと思っていたんだけど。


……あ。


ほら。

また動くから、もっと深く刺さったんじゃないか。


王子ともあろう者が、時機を見ることもできず、たかが数言の侮辱すら聞き流せないなんて――


そんなことで、いったいどうやって王冠に手が届くところまで這い上がるつもりだったんだい?


僕を見てごらん。


外で僕が何と呼ばれているかくらい、もちろん知っているよ。


「常夜の地の怪物」。

「薔薇の怪人」。

それから……「ビオランテ」だったかな?


それでも僕は、こうして元気に生きているだろう?


ただね。

今の僕とエレインの関係を考えると、いつか誰かが僕のことを「傾国の狐ケヴィン」とでも呼んでくれないかなって、実はずっと期待しているんだ。


ヴァール帝国の「帝国の薔薇」なんかは、似たような呼ばれ方をされたことがあるそうじゃないか。


羨ましいなあ。


僕なんて、こんなに待っているのに、いまだに誰もそう呼んでくれない。


それとも、マクシン侯爵は最初から、君をそういうふうに育てたのかな。


主人がいなければ何もできない、従順ないい子の犬になるように。


僕の二番目の兄も、似たようなものだったよ。


伯爵家に婿入りして、あの毒にまみれた家から離れたというのに、それでもマクシン侯爵の命令に従うことしかできなかった。


伯爵家の財産を奪い、妻の権限を骨抜きにして、自分が家長の座に収まろうとしたんだ。


……結果?


もちろん失敗したよ。


兄の妻は優しい人だからね。

今頃、兄はどこかの居心地のいい地下室にでも住まわせてもらっているんじゃないかな?


少なくとも、今あの蠅が入っている牢よりは、ずっと清潔だと思うよ。


柔らかいベッドだってあるかもしれない。


命令されたことしかできず、必要なときに自分で状況を判断して動けない犬なんて、優秀な猟犬とは言えない。


ただ、よく躾けられた従順な犬だ。


君はどうだい、ラインハルト?


自分はどちらだと思う?


……マクシン侯爵は、僕にとっても父親じゃないのかって?


血の上では、確かにそうだよ。


でも、僕はあの人をそう呼びたくない。


僕の愛する女性を傷つけ、大切な妹を死なせ、友人を殺し、最後には僕を「常夜の地」へ追放した人間だ。


どうして僕が、あんな人をわざわざ「父親」と呼ばなくちゃいけないんだ?


まったく。

今どきの子供は、「憎しみ」という言葉の意味も知らないのかな。


……あれ。


もう気を失いそうなの?


じゃあ、先に蔓を引っ込めておこうか。

気絶したまま引っかかれたら、僕も困るからね。


ここは「常夜の地」じゃないんだ。


死んだ敵を身体のそばに吊るして、ほかのものへの警告にする必要もない。

獲物を身体に巻きつけて、目を離した隙にあの鬱陶しい腐肉食いどもに盗まれないよう守る必要もない。


……また怒ったの?


エレインには、ときどき説教臭すぎるって言われるんだけど。

君もそれが気に入らないのかな?


何だって?


君も、本当のことは何も知らなかった?

もし知っていたなら、フローラのために実の父親と祖父へ復讐していた?


……ちょっと待って。


ついさっきまで、僕があの蠅と侯爵を侮辱したって、あんなに怒鳴り散らしていたじゃないか。


ずいぶん早い心変わりだね。


この一年、君を担当した教師たちの報告には、どれも「学習成果はきわめて乏しく、改善の兆しもほとんど見られない」と書かれていた。


僕はてっきり、みんながもうこの面倒な仕事を引き受けたくなくて、少し大げさに書いているんじゃないかと疑っていたんだけど。


……どうやら、僕が彼らを誤解していたらしい。


エレインには、あの教師たちへもう少し手当を出すよう勧めたほうがいいかもしれないな。


実情をあそこまで婉曲に、しかも節度をもって書けるんだから、それくらいの報酬は受け取って当然だ。


ねえ、お坊ちゃん。


嘘をつくなら、せめて顔と口から出てくる言葉くらいは合わせたほうがいいよ。


口では「わかった」と言っているのに、その目には今すぐ僕を殺したくてたまらないって、はっきり書いてある。


……何?


幼い頃から君の世話をしていた侍女も、ずっと君に忠実だった執事も、あの蠅に「常夜の地」へ落とされた?


だから、本当はずっとあれを憎んでいた?


ただひたすら耐えて、いつか十分な力を手に入れたら、自分で「常夜の地」へ入り、二人を助け出すつもりだった?


なるほど。


今度はそういう筋書きにするんだね。


でも君は知っていたはずだ。


マクシン侯爵が使ったような――人間の血を生贄にして、無理やり「常夜の地」への道を開く方法を除けば、もう一つの手段はエレインの聖剣を使うことだって。


もし本当に、ずっと二人を助けに行くつもりだったのなら……


どうして君は何度もエレインを殺そうとして、そのうえ聖剣まで壊そうとしたんだい?


ちなみに、その二人は「常夜の地」では、それほど長くもたなかったよ。


侍女のほうは、落とされた先がちょうど鰐の群れの中だった。


僕がどうにか助け出したときには、もう手遅れだった。


彼女の最後の願いに従って、残された桃色の髪の束を「常夜の地」から出るまでずっと保管していた。

戻ってきてから、ようやく家族に返すことができたよ。


気づかなかったのかい?


建国祭の日、ずっとエレインのそばに控えていた女騎士。

あれが彼女の妹だよ。


姉妹だから、よく似ているだろう?


娘があの蠅の求愛を拒んだだけで、あんな目に遭わされた。

当然、家族はひどく怒っていたよ。


だからエレインは王冠を戴いたあと、彼らに一つ褒美を与えた。


三日間。


その三日だけは、あの蠅が入れられている牢へ、好きなだけ出入りしていいとね。


それから、ずっと君のそばに仕えていて、後には聖剣を守るために大きな働きをした従者。


君とカタリナ嬢が「裏切り者」と呼んでいた、あの青年だよ。


一度も気づかなかった?


昔、君に仕えていた執事と、ずいぶんよく似ていただろう?


あれは、彼の弟だ。


一家を養っていた兄は、マクシン侯爵家が君に割り当てられた予算へ手をつけようとするのを止めようとした。


ただそれだけで、口を封じられた。


弟と残された家族が今日まで生き延びることができたのは、その後エレインが彼らを保護したからだよ。


執事のほうは、少しだけ運がよかった。


落とされた場所が、何もない草原だったんだ。


それ以前に受けていた拷問で傷があまりにもひどかったせいか、「常夜の地」の腐肉を漁る魔物たちも、すぐには近寄ってこなかった。


だから僕が見つけたとき、彼にはまだほんの少しだけ息があった。


少なくとも、最期の言葉を最後まで聞くことはできたよ。


わかったかい、お坊ちゃん。


これが、憎しみを忘れないということだ。


……まだ納得していない顔だね。


今もまた、次に誰を責めればいいのか探している。


……どうしてエレインが君に教えなかったのかって?


本気で言っているの?


あの頃の彼女は、自分と子供たちの命を守るだけで精一杯だったんだよ。


それに対して、後に君が彼女へ返したものは何だった?


彼女を殺そうとした。


ついでに、「常夜の地」への道を開くことのできる唯一の聖剣まで壊そうとした。


……今度は、どうして僕がもっと早く教えなかったのかって?


僕が「常夜の地」を出てから、まだ三年しか経っていないんだよ。


その頃には、僕たちはもう敵同士だったじゃないか。


それにさ。


君は一度も不思議に思わなかったの?


どうして家系図の中に、一度も会ったことのない叔父がいるんだろうって。


僕の名前は、ずっとそこにあったんだよ。


……また気を失いそうなの?


今度は痛みでも目が覚めないみたいだね。


どうやら、お茶に入れた薔薇が少なすぎたらしい。


まさか、今になってようやく効き始めるなんて。


どうしたの?


もう直せない。

回収もできない。

そのうえ、ただ場所を取るだけ。


そんなものは、廃棄するしかないだろう?


もし君が、自分に流れているわずかな王家の血を理由に、せめて「予備」として残してもらえると思っていたのなら――


それも残念だったね。


エレインには三人の子供がいる。

その子供たちにも、もうそれぞれ次の世代がいる。


君が大好きな王位継承の理屈だけで考えたとしても、君に順番が回ってくることはないよ。


……何?


もう少し大きな声で言ってくれる?


カタリナ嬢も、自分と一緒に埋葬してほしい?


おいおい。


カタリナ嬢はまだ生きているよ。


……知っている?


ああ。


君は本当に、あの蠅の息子なんだね。


でも、それは駄目だ。


カタリナ嬢は、学ぶ姿勢だけは悪くなかった。


もうお姉さんが引き取っているよ。

これからは領地の田舎で、ごく普通の暮らしを送ることになる。


それでいいと、僕は思う。


もしそれが本当に愛なら、せめて相手には生きていてほしい、幸せになってほしいと願うものじゃないのかな。


自分が死ぬからって、相手まで一緒に死んでほしいと願うんじゃなくてね。


……おい。


ラインハルト。


まだ起きているかい?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。