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公爵令嬢は真実の愛を求める

ああ、目が覚めたんですね。


こんにちは。こうして顔を合わせるのは、初めてですよね?


無理に起き上がらなくても結構です。それに、自己紹介も必要ありません。

あなたが誰なのかは知っていますから。


カタリナ・プールセン公爵令嬢――ですよね?


お会いできて光栄です。

僕はケヴィンといいます。


……どうしました?


ああ、家名ですか?

最近の若い貴族は、相手がどこの家の人間なのか分からないと、会話の仕方すら分からないんですか?


仕方ありませんね。

生まれたときの僕は、確かにマクシン侯爵家の三男でした。

ただ、その後いろいろありまして。

僕はもう、マクシン家の人間でいたくないんです。


まあ、向こうも僕を一族の人間として認めたくはないでしょうけど。


……おや。


急に姿勢も表情も変わりましたね。


ええ、そうですよ。


僕は、あなたの「恋人」であるラインハルト王子の生母――フローラの兄です。

血縁上は、ラインハルト王子の伯父ということになりますね。


それほど難しくはなかったと思うんですけどね。

桃色の髪と緑の瞳といえば、この国ではマクシン侯爵家の人間だと一目で分かるほど有名な特徴でしょう?


……本当に、まったく気づいていなかったんですね。


なるほど。

あなたとラインハルトがどうして負けたのか、なんとなく分かった気がします。


そんなに怒らないでください。


僕の言い方が、少し直接的すぎましたか?


申し訳ありません。

僕は「常夜の地」に長いこと閉じ込められていたので、上流貴族らしい話し方なんて、とっくに忘れてしまったんです。

あそこでは、食べることと、呼吸することさえ忘れなければ、それで十分でしたから。


礼儀だの身分だのといったものは、あそこでは一滴の水ほどの価値もありませんでした。


……ずいぶん驚いていますね。


まさか、ご存じなかったんですか?


あなたが敬愛しているマクシン侯爵が、自分の息子に何をしたのか。

そして、フローラに何をしたのか。


公爵家ともあろう家が大切な娘の結婚相手を決めるのなら、その家について徹底的に調べるものではないんですか?


……お父上は、この結婚に反対していた?


ああ。

それなら納得です。


僕も不思議だったんですよ。

僕の知るプールセン公爵は、妻と子供をとても大切にする方でしたから。

そんな人が、どうして大切な娘をあんな男に嫁がせようとするのか、と。


さて、カタリナ嬢。


あなたは今の状況を、どこまで理解しているんですか?


……どうしました?


急に黙り込んで。


ああ。

ようやく窓の外の「あれ」に気づいたんですね。


心配しなくても大丈夫ですよ。


マクシン侯爵父子はあれほど多くの罪を犯しましたが、新王陛下は慈悲深いお方です。


あと一日もすれば、遺体を下ろすよう命じられるでしょう。

辺りに散らばった部分についても、公衆衛生のため、速やかに回収して埋葬されるはずです。


ですから、いつまでもあそこに吊るされたままではありませんよ。


あなたも嬉しいでしょう?


ラインハルト王子の母君を苦しめた仇が、あんな末路を迎えたんですから。


……はい?


フローラの仇はマクシン侯爵父子ではなく、エレイン王妃殿下?


マクシン侯爵父子は、フローラにとって誰よりも慈愛に満ちた父と兄で、ラインハルト王子にとっても優しい祖父と伯父だった?


……冗談でしょう?


そんなはずがありません。


まず、一つ忠告しておきます。


今はもう、エレインを「王妃殿下」と呼んではいけません。

今となっては、そう呼び続けること自体が、かなり無礼な行為ですから。


そして二つ目。


フローラが亡くなるその時まで、エレインは彼女を助け続けた数少ない人間の一人です。

自分自身も、そのために代償を払うことになったというのに。


……堕胎薬?


エレインが、夫の寵愛をフローラに奪われたことを妬んで、無理やり堕胎薬を飲ませた?


……ちょっと待ってください。


あなた、ずっとそう思っていたんですか?


あの薬を望んだのは、フローラ自身ですよ。

エレインは、彼女に頼まれて魔法薬を調合しただけです。


なぜですか?


そんなの決まっているでしょう。

フローラは、あの子を産みたくなかったんですよ。


……どうしました?


そんなに理解しにくいことですか?


王冠をかぶったところで、蠅は蠅です。

まさかあなた、あの蠅が国王だからというだけで、フローラが彼を愛し、喜んで彼の子を産みたがったとでも思っていたんですか?


フローラには、とっくに愛する人がいました。


エドワード。


百合戦争で敵軍の将を討ち取った、あの騎士です。

二人はすでに婚約していて、もうすぐ結婚するはずでした。


そのすべてを壊したのが、マクシン侯爵父子です。

あの二人は夜会でフローラの飲み物に薬を盛り、侍女たちに命じて、彼女をあの蠅のもとへ連れて行かせた。


そして数日後、辺境から知らせが届きました。

エドワードが辺境を巡回している最中、突然森から飛び出してきた獅子に襲われ、噛み殺された、と。


面白いでしょう?


あの森には、獅子なんていないんですよ。


医師たちは、ずっと前から警告していました。

フローラは心も身体もすでに限界で、出産に耐えられる状態ではない、と。

それでも、あの蠅と父子はエレインを止め、フローラが魔法薬を飲むことも許さなかった。


彼らには、あの子が必要だったんです。


だから、ただ待っていた。

僕の妹が一日中苦しみ、叫び続ける声を聞きながら。


子供が生まれるのを待って――

そして、出産を終えたフローラが血を流しながら死んでいくのを見ていた。


……待ってください。


今、何と言いました?


あの男が、フローラの遺体をどこに置いているって?


……魔法の棺?


寝室に?


壁という壁に、フローラの肖像画を飾って?


そのうえ、死んだフローラの遺体から切り取った髪まで、いつも持ち歩いている?


……気持ち悪い。


すぐに人をやって、フローラをあそこから出させます。

あの子は母と――そしてエドワードと一緒に寝るべきです。


あまりにも不快で、ずっと放置していたあの寝室も、今度こそ中にあるものを全部焼き払ってしまいましょう。


それから地下牢へ行って、あの蠅がフローラの髪を身体のどこかに隠していないか、確認しなくては。


……どうやら、両手を奪うだけで済ませたのは、少し慈悲深すぎたようですね。


……ん?


どうしました?


ああ。


僕の身体に生えている、これを見ていたんですか?


これは「常夜の地」に長く居すぎたせいで、僕の身体に残ってしまった呪いです。


どうやら僕の感情にも反応するらしくて。


なぜ薔薇と茨なのかというと……たぶん、僕の愛する女性のせいでしょうね。

彼女は薔薇が大好きでしたから。


ずっと昔。


僕と彼女、そしてフローラとエドワード。

四人でよく、美しい薔薇園に座ってお茶を飲んだものです。


……そうだ。


ラインハルトのあいつも、あなたと同じなんですか?


エレインこそがフローラの仇で、あの蠅とマクシン侯爵父子は善良な人間だったと、本気で信じている?


新王陛下が即位なさる前、あいつは母親の復讐だと言って、政治的にも軍事的にもエレインとその子供たちを追い詰めようとしていたそうですね。


まあ、幼い頃からあの蠅とマクシン侯爵父子に育てられたんです。

歪められた話を信じ込んでしまうのも、無理はないのかもしれません。


でも――


もし本当に、世間で言われているほど聡明な王子だったのなら。

本当に、何も知らなかったんでしょうか?


それとも、とっくに何かがおかしいと気づいていたのに、知りたくなかっただけなのか。


真実を知らないから、道を間違える人もいます。

けれど、真実を目の前にしてなお、自分にとって都合のいい嘘を選ぶ人間もいる。


まあ、どちらにせよ――


フローラは最初から、あの子を望んでなんていなかったんですけどね。


……どうしました、カタリナ嬢?


顔色がひどく悪いですよ。


申し訳ありません。

僕がしたことが、少し配慮に欠けていましたね。


純真な少女の前で、その恋人の悪口をこんなに言ってしまうなんて。


でも、聞いていますよ。


あなたはラインハルトを深く愛するあまり、自分の名義で所有する商会まで動かして、エレインを陥れようとしたそうですね。


それだけではない。

プールセン公爵家が騎士団に持つ影響力まで利用して、エレインの息子が戦場で受けるべき援軍を受けられないようにしようとした。


……それも全部、誰かに教えられてやったことなんですか?


大丈夫ですよ。


あなたもラインハルトも、まだ若い。


長いあいだ間違ったことを教え込まれてきたのなら、すぐに真実を受け入れられないのも仕方のないことです。


エレインは昔から、よくこう言っていました。


「清潔な環境が、健やかな民を育てる。正しい教育が、自ら考えることのできる民を育てる」


だから、僕はこう思うんです。


カタリナ嬢。


あなたもラインハルトと一緒に――


もう一度、教育を受け直してみませんか?



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