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「斎藤、田口」
捜査一課に、中村の低い声が響いた。
俺と田口は顔を見合わせ、中村のデスクへ向かう。
「どうしました?」
田口が尋ねる。
中村は腕を組み、険しい表情で俺達を見た。
「たった今、応援要請が入った」
そう言って、一枚の資料を机に置く。
「現場では大型犬が飼い主を人質にしている」
「大型犬?」
俺は思わず聞き返した。
「散歩中に突然興奮し、飼い主の腕に噛みついたまま離さないらしい。近隣住民が通報し、警察官が駆けつけたが手が出せず膠着状態になっている」
田口が資料を手に取る。
「救急車は?」
「向かっている。しかし到着まで時間がかかるそうだ」
中村は俺を見る。
「斎藤、お前は交渉を担当しろ」
「……犬と交渉ですか?」
「お前ならできるかもしれん」
真顔で言われ、思わず苦笑する。
「期待が重すぎますよ」
「田口は現場の指揮を執れ。とにかく飼い主を無事に救出することが最優先だ」
「了解です」
田口が力強くうなずく。
俺も軽く敬礼した。
「了解しました」
俺と田口は顔を見合わせると、そのまま捜査一課を飛び出した。




