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現場を後にしたパトカーの中は、不思議なほど静かだった。
俺は助手席の窓を少しだけ開け、煙草に火をつける。
一口吸ったところで、隣から盛大な咳が聞こえた。
「ゲホッ……ゲホッ」
田口が顔をしかめ、運転席側の窓を勢いよく開ける。
「お前なぁ……」
煙を手で払いながら、呆れたように俺を見た。
「さっき、犯人が話してたアニメ、お前も好きなのか?」
「いいえ」
俺は煙を吐きながら答える。
「まったく興味はありません」
「なんだと?」
田口が目を丸くする。
「説得するために多くの知識を得ているだけです。興味はありません」
数秒、車内に沈黙が流れた。
「じゃあ、さっき言ってた、あれは嘘だったのか?」
「はい」
と、俺は静かにうなずく。
田口はハンドルを握ったまま、大きくため息をついた。
「…お前が本当に好きなものはなんだ?競馬、女遊び、パチンコ、好きなことでもいい」
「……」
「どうした?何か一つくらいあるだろ」
俺は少しだけ考えてから答えた。
「人の泣き顔を見ること……ですかね」
田口は俺を見た。
俺も田口を見る。
「これは嘘じゃない、本心です」
車内が静まり返る。
田口は何か言おうとして口を開き、結局何も言えずに閉じた。
信号待ちで車が止まる。
ようやく田口が口を開いた。
「人の泣き顔を見ること……。お前、その発言がどれだけ怖いか分かってるか?」
「……」
「わかってないのか…」
「……」
助手席にサイコパスが乗っているこの状況下でも、田口は平気らしい。
田口は呆れたように笑い、ハンドルを握り直した。
信号が青に変わる。
車はゆっくりと走り出した。




