将来に悩む女子高生を救え 4
俺は近くにいた警察官からメガホンを受け取った。
屋上を見上げる。
金髪の少女――ロザリア(柴田加奈子)は、涙で濡れた顔をこちらへ向けていた。
俺は台本を手に、できるだけ真剣な声を作る。
「ロザリア!馬鹿なまねはやめるんだ!」
少女の眉がぴくりと動いた。
俺は続ける。
「たとえ周囲の人が僕たちの関係を認めなくとも、僕は君と幸せになりたい!」
言い切ったところで、俺は隣の金田さんを見る。
金田さんは一瞬きょとんとしていたが、すぐに俺の意図を察した。
「……なるほど」
金田さんがメガホンを手に、台本に目を落とした。
そして、少し恥ずかしそうに読み上げる。
「マイケル、お前に彼女は渡さない」
少女が目を丸くする。
金田さんは続けた。
「ロザリア、君は僕と結ばれる運命なんだ!」
「……」
周囲が静まり返る。
屋上にいた少女の顔が、みるみる赤くなっていく。
「……なんなの!」
さっきまで泣いていた少女が、困惑したように眉を寄せる。
「恥ずかしいんだけど……!」
俺は黙って見上げる。
少女は頬を赤くしながら叫んだ。
「やめてよ!馬鹿じゃないの!?」
その反応を確認した俺は、台本を持った警察官たちへ視線を送る。
「お願いします」
警察官たちはそれぞれメガホンを手に取った。
「ロザリア、お父さんは君のことを心配している!」
「お母さんも、あなたの夢を無視していたわけじゃないのよ!」
「お嬢様、どうか私の話を聞いてください!」
それぞれが父親、母親、執事になりきって声を届ける。
「やめてよ!!」
少女が叫ぶ。
「恥ずかしいから、もう、やめて!!」
その声には、先ほどまでの張り詰めた怒りとは違うものが混ざっていた。
俺はメガホンを口元へ持っていく。
「ロザリア!!」
少女がこちらを見る。
「あなたが安全な場所へ戻ってくるまで、この茶番は終わりませんよ!!」
「……!」
少女は呆然と俺を見つめた。
俺は声を柔らかくする。
「あなたが女優になりたいなら、あきらめる必要なんてありません。
オーディションに受かった。それは、あなたが努力した結果でしょう」
少女は黙った。
「だから、その続きを見せてください」
俺はメガホンを下ろさない。
「今は何も決めなくていい。まず、こちらへ戻ってきてください」
少女はしばらく俯いていた。
やがて、震える声が返ってくる。
「パパとママを説得できると思う?」
俺は迷わず答えた。
「僕は交渉人、説得のプロです。あなたの力になります」
その言葉を聞いた少女は、涙を拭った。
そして、ゆっくりと後ろに下がっていった。




