将来に悩む女子高生を救え 3
「オーディションを受けて……受かったのに!」
少女の声が震えた。
「パパとママが、勝手に断ったの!」
涙を拭うこともせず、屋上から叫ぶ。
「私がどれだけ頑張ったと思ってるの……!」
「……」
金田さんは言葉を失っていた。
何かを言おうとして、口を開く。
けれど、結局何も言えない。
俺はその横顔を見て、静かに息を吐いた。
こういうとき、正論をぶつけても意味がない。
夢を諦めろと言われた少女に、今度は警察官が「落ち着け」と言ったところで、きっと届かない。
俺は鞄から数十枚の紙を取り出した。
これは警察署で作ってきた、自作の台本だ。
「金田さん」
「……なに?」
「これをお願いします」
5枚の紙を渡す。
「これ、さっき僕がコピーしたものだよね?」
「はい」
金田さんが紙を見る。
俺はそのまま近くにいた警察官たちへ、5枚ずつ配っていく。
「あなたは父親のトム」
「え?」
「あなたは母親のマリア」
「俺が母親!?」
「あなたは執事、セバスチャンです」
「セバス…え?」
警察官たちは困惑しながら台本を見つめる。
最後に、俺は金田さんの肩を強くたたいた。
「金田さんは、彼女に片思いしているロバートです」
「ロバート?」
「はい、重要な役です」
「この台本通りに話せってこと?」
「はい」
俺は頷いた。
金田さんは台本を眺め、それから屋上を見上げた。
少女は涙を流したまま、こちらを見ている。
俺は小さく息を吸う。
「彼女が本当に欲しいのは、説教じゃありません。自分の夢を理解してくれる人です」
俺は台本を持った警察官たちを見る。
「だから、今からここを舞台にします」
金田さんが台本を握り直した。
「……分かった」
そして、メガホンを持ち直す。
俺は声を大にして言う。
「皆さん、ご協力をよろしくお願いします」
警察官たちが、それぞれの役を確認する。
即席の舞台が、静かに始まろうとしていた。




