人気No1キャバ嬢を救え 2
「……服がいるな」
警察署の駐車場、田口が俺を見ながらつぶやいた。
「このままじゃ、さすがに警察官だと気づかれる」
俺たちは覆面パトカーを走らせ、近くの洋服店へ立ち寄った。
店内に入ると、田口は女性服売り場へ迷いなく向かう。
「これなんかどうだ」
紫色のワンピースを俺に手渡した。
「試着してこい」
「分かりました」
試着室で制服を脱ぎ、ワンピースへ着替える。
鏡を見る。
……自分でも驚くほど違和感がない。
カーテンを開けると、田口が腕を組んだまま俺を見つめた。
「完璧だな。喋らなきゃ男だとはばれない」
「喋ったら終わりですか?」
「終わりだ」
田口は真顔でうなずく。
続いて、自分の服を選び始めた。
「俺は女性を斡旋する男役だからな」
派手なシャツにジャケットを合わせ、いかにも遊び慣れた男が着そうな服へ着替える。
鏡の前で襟元を整えると、小さくうなずいた。
「よし」
レジへ向かい、田口が二人分の会計を済ませる。
店を出ると、覆面パトカーに乗り込む。
「行くぞ」
「はい」
俺は助手席へ乗り込む。
シートベルトを締めながら、小さく息を吐いた。
「……なんで俺がこんなこと…」
「なんだって?」
「いえ」
俺は窓の外を眺める。
「疲れました…」
「まだ何もやってないだろ」
田口は苦笑しながらエンジンをかけた。
覆面パトカーはゆっくりと発進し、立てこもり事件の現場へ向かった。
しばらくして、俺は前方を指差す。
「田口さん!」
「なんだ?」
「そこのスーパーに寄ってください」
田口は俺をちらりと見る。
「小道具でも買うのか?」
「そんなところです」
「分かった」
覆面パトカーはスーパーの駐車場へ入った。
田口は財布を取り出し、俺に差し出す。
「ほら」
「ありがとうございます」
財布を受け取ると、俺はドアを開けた。
「田口さんは車で待っていてください」
「おう」
俺は一人でスーパーへ入っていく。
十分ほどして、レジ袋を提げて車に戻る。
助手席に乗り込むと、田口が俺が持っていた袋の中をのぞき込んだ。
「何を買ってきたんだ?」
袋の中には煙草が一箱。
缶ビールが数本。
それに柿の種やスルメなどの酒のつまみが入っていた。
田口は固まる。
「……なんだこれ」
俺は何事もなかったようにシートベルトを締めた。
「頑張った自分へのご褒美です」
「人の金で買うなよ」
田口は思わずツッコむ。
「小道具じゃなかったのか?」
「心を安定させるための小道具です」
「意味が分からん」
「事件が終わったら飲みます」
「俺の金だぞ?」
「そうですね」
「返せ」
田口が手を差し出す。
俺はレジ袋を抱きしめた。
「これは経費で落ちます」
「落ちるか、ばか!」
車内に田口のツッコミが響く中、覆面パトカーは再び現場へ向かって走り出した。




