12/18
大型犬の飼い主を救え 5
しばらくして、救急車が現場に到着した。
救急隊員が犬の飼い主の男性のもとへ駆け寄り、その場で応急処置を始める。
男性は腕に包帯を巻かれながらも、ほっとした表情を浮かべていた。
「そこのあんた!」
男性が俺に向かって手を挙げる。
「助かった。ありがとな」
俺は首を横に振った。
「お礼を言うなら、この方にどうぞ」
そう言って、隣に立つ田口の腕をつかみ、前へ出した。
「俺は何もやってない」
と田口が照れくさそうに頭をかく。
「そんなことありません」
俺は笑って続けた。
「田口さんがいなければ、犬語で説得しようなんて発想は浮かびませんでした」
「それ、褒めてるのか?」
田口は苦笑いを浮かべる。
「もちろんです」
俺は真顔で答えた。
「田口さんは身をもって、言葉は通じなくても、伝えようとする気持ちは大切だと教えてくれました」
「海外旅行の失敗談が、こんなところで役立つとはな……」
田口は肩をすくめる。
飼い主の男性は笑いながら俺たちを見た。
「あんたら、仲がいい相棒みたいだな」
「いえ」
俺は即答する。
「他人です」
「おい!」
田口のツッコミに、現場にいた警察官たちから笑いが起こった。
その笑い声を聞きながら、俺は足元で尻尾を振るシベリアンハスキーの頭をもう一度、優しく撫でた。




