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5話 餓鬼という手駒

 男は我に返り、新たな標的を指定されたのを悟る。

 しかし周りが暗い。あまりに非現実的な世界にまた人外なのか? と疑り深くなる。


 しばらく歩いていると、目前に人の気配があった。

 強制的にあれが標的だと確信させられる。ああ、今日は人間か。


 人間は我知らず、のんびりと歩を進めている。どこか既視感がある容姿である。

 そうしてこちらに気づいたのかふりかえった――


「俺?」






「……完了。初期化完了、起動を許可します」


 声がして、まぶたが開く。視界には二人、こちらを見下ろす人外たちがいた。


「ねえ、毎回思うんだけどこれ、必要?」

「仕方ないじゃん。お上に報告しないとやばいし」

 二人の頭には獣の耳が生えていた。


「餓鬼に自我を与えるなんて、マジで悪趣味だよね。まあ、私たちのやっすい給与になるからいいんだけど」

「全部理解できてるからな、女狐ども」

「うっわ、生意気」


 二人はゴミを見る目で拘束具を外すと、スタスタといなくなった。だが手には手錠がかけられて、眼の前には餓鬼たちが牢獄で喚き散らすかグッタリとうなだれているかの世界が広がっている。


 捕まえられた餓鬼たちは実験体のように雑に管理され、こうして仕事を与えられる。



「ごろじてくれ! オレあもうこき使われたくない!! だれか」

「うるさいわねえ」

「いだい、いだい……」



 精神崩壊した者や喚き散らす者が大半だが、中には自分自身のように機械化されたように過ごしている者もいる。

 何故、ここにいるのか、外の世界の餓鬼は何をしているのか――誰もしらない。


「早くあるけ」

 新たな人外に背中をどつかれ、自分の部屋となる檻に入る。



「おつかれさま。毎度、仕事熱心だよねー」

 同じ檻にいる餓鬼が笑う。

「……忘れているだけだ」

「あはは、私なんてサボったりやりすぎたりペナルティ三昧だよお」

「お前ほど、仕事を楽しんでる奴はいねーよ」

「そうかも」

 女性はケラケラ笑うと、足で器用に刃物で遊んでいる。


 彼女ほど人生が楽そうな生き物はいない。男は無心にそれを眺めると、思考を停止した。

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