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50話 プラス思考で
「スイはどこまで地球にいた時の記憶があるんだ?」
不意にそう聞かれ、スイはうーんと腕を組んだ。
「生年月日と名前はアイツらに消されてるけど、私もそこまで全部覚えてる訳じゃないなぁ。両親とか親戚と過ごした記憶はちょびっとあるんだけど、顔がねえ……」
脳の損傷具合で眷属餓鬼たちは地球での記憶を覚えているかが変わる。感染時の破損や人間に危害を加えられた個体は記憶がほとんどない、という。
「スイは恵まれているな。俺は何もない。まあ、仕事には必要ないんだろうが……」
ワザトの顔がわずかながらに曇った。彼もそんな顔をするのか、と彼女は意外に思う。
記憶があるからといって、何になるのか。
仕事の際に地球上の知識があれば多少、余裕はできるがスカーヴァティー(または安楽国)においては異星の雑音でしかない。
「もし地球で不幸せで覚えてるのと、ここで忘れて第二の人生を歩んでいるのとどっちがいい? ワザト」
「……第二の人生かな」
「でしょ。あまり考え込まないほうがいいよ」
それにオカゲがまた癇癪を起こしてしまったら、めんどくさい。人間だったらかなり大変な性格だろう。かの少女は。
「甘いものが食べたいな。甘いものの記憶が少ないのは俺にはツライんだ」
「あはは、なんだそりゃ」




