43話 スイと看守
眷属餓鬼がスヤスヤと寝ている時間帯。近未来的で無機質な廊下は消灯し、寝息すらしない静寂が蟠っている。独り目覚め、暇つぶしにナイフで遊んでいスイは――看守が見守りに来ているのを気づいた。
「チッ。また夜更かしか」
「夜も昼もカンケーないじゃん? ここ」
「ワザトは眠っているが、あれからどうだ。変化は見られないか」
毛布にくるまって雑魚寝をしている青年を彼は見下ろした。プログラム上、眷属餓鬼は一定時間休息する決まりになっている。活動を最低限の停止し脳を冷却するためだ。
「まったく。死んでるみたいだよね〜〜、こうみると」
「死んでいるんだから当たり前だろう」
「ええ〜〜? 感染して、肉体は動くんなら生きてるのと同じじゃない?」
スイは薄ら笑いのまま、皮肉めいた回答をする。キツネ耳の人外の看守は苛ついたが、下等生物へ怒りをぶつけても仕方ないとため息をついた。
「転化してないよ。それに言語もきちんとしてる。表情はないけど、相変わらず」
「……。そう。なら良い、この施設を破壊されたらたまったはたもんじゃないからな」
「そんなにオカゲちゃんって強いの」
「下級の悪神を集めてもたりないくらいに。アレは最終手段だが……我々も管理しきれるか分からない」
スイは悪神の世界をよく知らないが、オカゲがおそれられているのを食べてしまった悪神から得た。理由までは分からない。
「ダハハ。オカゲちゃんは良い人だよ」
「はは、笑かすなよ。悪神に善悪はない」
「貴方たちにもないように思えるけどね、人から見たら」
下等生物が、と喉まで出かかって押さえた。スイはそれを存じているのか、ニヤニヤとする。
この看守もいつかは死ぬ。前の代みたいに、ボロが出て新しいヤツがやってくる。
しかし新鮮味がない。コイツは賞味期限が短そうでつまらない。
「また何かしら変化があったら報告しろ」
「はーい」
看守さん、長生きしてほしい。




