40話 異空をさまよう
安寧人……キツネ耳の人外たちがバタバタと足音を立て、右往左往していた。点滅している赤い光に何やら慌てふためいているらしい。
眠れないで耳をそばたてるとザワザワと何やら騒がしいからだ。
――なぜ?
――我々に通達している?
――人間か? それとも《《別の惑星》》から?
(別の惑星……、そんなこともあるのか……)
「おはよう。ワザト」
「おはよう。騒がしいけど何かあったのか?」
「何でも私たちが収容されてる施設に向かって赤い光が点滅してるんだって! 見に行ってみない?」
「はああ?? 俺たちは檻から出られないんだぞ」
「おバカさんだなあ、ワザトくんは」
そういうと、スイは手を差し出してきた。ハテナを浮かべていると、あ、と気づく。
「《《異能》》を使うのか」
「そう」
「悪いやつだな……」
「ふふーん」ニヤリ、としたり顔をしたスイの手を握ると身体から自身が飛び出す。オカゲが幽体離脱、だの何だの言っていたのを覚えている。
「あんまり変なことしないでよ、ワザトに!」
横には実体化したオカゲがかなり珍しく仏頂面で牽制していた。
霧、だ。この間、話題になった濃霧がたちこめ、巨大な収容施設の一角が垣間見える。
霧を手で掴もうとするが何も起こらない。どうやら地球と同じらしい。
「あの光は?」
「多分、飛行機のライトか……レーザーかな。それか赤色灯」
赤色灯は飛行機がビルにぶつからない為の、航空障害灯だと聞いた。人類が滅んだ世界で意味をなさない灯りがチカチカと曇り空に浮かび上がっているのを、ワザトも目にしている。
「スイ! あれは飛行機だよ! 突っ込んでくる!」
オカゲが叫んだ。「飛行機?! なんで?」
「わからない、あれはモールス信号みたい。SOS、て打ってるに違いないよ、SOSのモールス信号を教えて」
爆風と共に何かが近づいてくる。、スイは少し戸惑いながらモールス信号を教えようとした。
「エッと。ト・ト・ト──」
SOSを発信するためのモールス信号。初めて耳にするが、合致する。
「早くもとに戻らなきゃ!」
目を覚ますと、爆風やらで何もかもめちゃくちゃになった。
キツネ耳の人外たちのためにある階段もエレベーターの吹き抜けも崩壊しているかもしれない。
「な、なん……」
「自由だ! オレたちは自由だ!」
檻から放たれた眷属餓鬼たちが我先に廊下を走っていく。それを二人はただ見つめていた。
「ヤッホ〜」
同じく脱走したマガイたちがやってきて、4人は騒がしくなった方向を見やった。
「あらまぁ、乱闘かしら?」
「フフッ。たのしー」
収容施設では警報機が鳴っており、所々点灯やら様々な状態になっていた。
「人間も捨てたもんじゃないねえ〜」
「ええ? 嫌だわ。野蛮ですわよ」
「モールス信号? ってのがであったんで、迷い込んできたのかも」
「まあ〜……。こんな異界に助けを求めるつもり?」
後に看守から聞いた話ではあるが、ジャンボ機が突っ込んできたという。年代はスカーヴァティー(安楽国)とつながる前の機体だったというのだ。
モールス信号に心当たりがないか、とスイへ訪ねてきた。
メモには何個かモールス符号が記されていたらしい。
――誰か、応答してください。
飛行機はどこをさまよっていたのだろう。




