31話 ひとのこころ
いきなり監獄に断末魔が響き渡った。何かと思えば眷属餓鬼が歯向かって看守に噛みついたらしい。
人の歯なんて弱っちいもので、肉を食いちぎるくらいしかできないかもしれない。それも自我を持った餓鬼の、だ。
「へー、やるじゃん」
スイが檻から身を乗り出してどこの廊下なのか見ようとしている。
「……逆らったら焼却炉へ行くんだろう? そんな身も蓋もない事を良くできるな」
「相当イヤな事を言われたんじゃないかなあ」
確かに自分たちにもプライドや喜怒哀楽は備わっているわけで、看守のゴミを見る目つきを恨めしく思う輩はたくさんいるだろう。
「あははっ、いいザマ〜〜」
次の日、目を覚ますと何やらバタバタと騒がしい音がしてまぶたを開けた。スイも気づいたのか身を起こして、不機嫌そうだ。
「汚染者がそっちにいったぞ!」
「撃て!」
呻きと共に看守が腐り果てた状態で、おぼつかない足取りで檻の前までやってくる。
「あああ〜〜ああ」
言葉にならない声、垂れ流した液体と共に地面にボタボタと落ちる。感染者とは異なるが自我はなさそうだ。
「お前も自我をなくしたのか」
「私たちを下に見てるからだよーだ!」
あっかんべー、とスイが挑発した瞬間、看守だったものは頭を撃ち抜かれた。
「汚染者を射殺しました!」
防護服を着たキツネ耳の人外たちが集まってきて、テキパキと処理をしていく。担架に乗せるとそそくさといなくなろうとした。
「アイツも再利用するのか?」
ワザトは疑問に思った事を防護服の一人へ尋ねてみる。するとその者は立ち止まり、しばし黙った。
「焼却炉行きだ。我々は再利用できない」
「ふーん。不便だな」
「……餓鬼めが……」
消毒班が入れ替わりにやってきて、咳き込むのも時間の問題であった。




