10/19
9話 チョロいままでいてよ。ワタシが守ってあげるからさ
「態、態」
ワザトは自分自身を呼ぶ声をきいて、わずかに意識を浮上させた。だがプログラムされた意志はそれを拒む。
「あ、そっか。大丈夫。目を覚まさなくてもワタシはここにいるでしょ」
「……ああ、蔭か」
口を開きはしないが、たまに出現する不可思議な空間で少女を確かめる。彼女はいつもの、何を考えているのか読み取りにくい笑顔で言った。
「良かったよ、無事に戻ってこれてさあ。ワタシがいなかったら、また最初から育成をやり直すハメになってたんだから〜〜」
「不穏な言葉ばかりだな」
少女……オカゲはふんと鼻を鳴らして、腕を組んだ。
「変な夢を見たんだ。気色悪い夢だったよ、ったくよ」
「そー。アンタが夢だと思うなら、それで良いんじゃない? 餓鬼」
「……」
餓鬼は夢を見ない。複雑な思考をしない。命令に従う。
「怖いんだ、オカゲ。自分がなんなのか」
「無責任なヤツ」
「何がだよ」
「自分自身が分からないなら、自分で決めるの。全部他人に委ねるな、バーカ」
いつもの口調で彼女は言う。それが今はとてもありがたい。
「まだまだアタシの言う事を聞くしか無いな〜〜?」
「……はあ、」
「ま、チョロいままでいてよ。ワタシが守ってあげるからさ」




