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8話 地球に起きている事態

「詳しい話は語れない、語ろうとすると頭が……すごく痛む。それに自分自身の出身とかいうのも、何もわからない。ただ俺は餓鬼と呼ばれて、仕事をしているだけなんだ」



「……そう。原種ではなく感染者であるのは確かね。その眼は感染した者に現れる症状よ」

「眼?」

「瞳孔が広がりすぎてる。貴方は確かに人間で、あちら側に細工をされて」


(人間だって?)


 吐き気がしそうだ。もうまともに話もできそうにない。


「落ち着いて。貴方にも、過去に似たような者がいたの。女性だったけど」

「じゃあ、感染者って何だ? 俺は何に感染したんだ?」


 理知的な雰囲気を醸し出す女性の助手はカルテにこちらの様子を詳細に書き込んでいる。


「未知のウイルスよ。ウイルス、と言っていいのかもわからないけれども」

「……馬鹿言うなよ」

「私たちも最初はそう思ったわ」



 ウイルスが現れたはここ数年で、歯止めがかからず世界で猛威をふるっている。まるで異なる世界からやってきた物が、人間に取り憑いたかの如く。

 人間たちはゾンビと呼び、科学者や医療機関は感染者と称した。


 ゾンビ。聞いたことがある、ような。非日常な響きだ。しかし思考するな、と命令が下る。



 ワザトはどうして良いか分からずに、指をいじるしか無い。


「なぜ、ここに呼び出されたんだ」

「さあ。貴方を使役する方の住人に言ってくれる?」




 もう、いいよ。それ。

 耳元で少女が囁いた。





 気がつくと、いつもの牢屋の中で長く熟睡していたみたいだ。変な夢を見た気がして、フワフワしている。


「シーッ。何も言わないほうがいいよ」

 祟が静かに口を開いた。


「君の友だちが助けてくれたんだ、感謝した方がいいよお。その記憶(・・)大切に持っておくんだよ」

「そうか」


「獣どもが間違えて転送したらしいけど、幸運だったね。初期化されたフリを続けて」



「起きたか。態。どこか悪い所はないか」

 生真面目な看守がやってきて、ジロジロと異変がないか確かめている。


「いいや、ひどく寝ていたようだけど」

「転送と認識機能に不具合が起きてな。その調子なら良かった」

 それだけ言うと彼は去っていく。餓鬼など興味に値しないと言うかの如く。


「……ね」


 スイは何とも悪い輩だ。しかしそれが今はやけに現実味を帯びさせた。だがヤツはおちゃらけてはいるが、他人の思考回路は読めやしないはずである。


 なればあれは夢なんかではない。

「……」

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