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『十二の式神使い』 〜殺された御三家陰陽師の俺は、過去へと戻り、破滅未来を回避するために、現代最凶の式神使いになる〜  作者: 星衛門
第一章 二度目の人生の始まり

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009匠




 猫又である福丸を自身の式神にした日の翌日。


 「ねこさん!ねこさん!ねこさん!」

 『ま、茉昼!髭触らないで、くすぐったいよ!』


 ここは昨日、霊力の鍛錬をしていた縁側。

 福丸は早速、縁側のすぐそばの茶の間で、茉昼の遊び相手をしていた。


 茉昼は福丸の髭を触ったり、背中を撫でたりして、じゃれている。


 「福丸。そのまま茉昼の相手してくれ。俺は霊力の鍛錬をしてる」

 『ニャ?!僕の初任務、まさかの子守り?』

 「そうだ、大事な任務だ。俺が周りを気にせず、鍛錬が出来る。茉昼は母さん似で元気いっぱいだからな。頑張れ、俺の式神」

 『が、頑張る!』


 福丸が二つある尻尾をブンブン振って、やる気を見せる。

 そんな福丸を、茉昼は容赦しなかった。


 「なでなで~なでなで~」

 『ニャアア?!毛を撫でられると、力抜けちゃう!』

 「ふふ…今日もお嬢様は元気が良いですね」


 福丸と茉昼のやりとりを嬉しそうに見ている婆やであった。

 今日は婆やもいるし、福丸もいる。


 今日こそは…昨日、茉昼の妨害を受けて碌にできなかった『周天巡霊』をしっかりとやる。


 縁側に座り直し、背筋を伸ばし、集中のため、目を閉じる。

 俺はいつも通り、丹田に意識を持って行き、呼吸を整える。

 心臓を使って、霊力を汲み上げ、全身に巡らせる。




 20分後、額に流れる汗を感じながらも、霊力を動かし続けていた。


 目を閉じることで聞こえる周囲の鮮明な音。


 風によって揺れる木々の音が縁側の外から聞こえる。

 昨日は雨が降ったから、水溜まりが僅かに揺らぐ音も追加だ。


 それ以外にも、


 「ふくぅ!」

 『うぎゃあ?!』

 「お嬢様、福ちゃんは乗り物ではありません」


 茉昼の笑い声。

 福丸の鳴き声。

 婆やの声。


 非常に賑やかだ。


 3歳の頃は、数分続けるのがやっとであったが、今では頑張れば、20~30分ほど続けられる。

 最近では、20~30分間隔で『周天巡霊』を行い、一旦休憩する。

 休憩した後、再開。


 これの繰り返し。

 ただの反復練習だが、地味な鍛錬はこれが一番効果があるのだ。


 そろそろ休憩を挟む時間だ。


 ……と、その時。

 ミシ…畳を踏む音がする。


 茶の間の賑やかな足音とは違う、一定の間隔で聞こえる足音。


 足音はゆっくり俺に近づき、仕舞に俺の傍で止まる。


 「宵明」


 俺の傍らから、一人の幼い声が降ってくる。


 この声は。

 俺は『周天巡霊』を中断して、声がした方を見る。


 「やっぱり、匠兄(たくみにい)


 そこには、俺と同い年である4歳の男の子がいた。


 九十九神楽(たくみ)

 俺と同じ九十九神楽本家の血筋であり、俺の父の息子。


 第6子の俺に対して、匠は第5子であり、俺の兄に当たる人。

 と言っても、俺と茉昼の母が4番目の妻の巴母さんに対して、匠の母は2番目の妻の人。


 つまり、俺の異母兄弟である。


 淡い髪は、日の光を受けると薄金にも見える。

 節目一つ無い整えられた髪。

 瞳は金色である俺と反対の銀色。

 その銀一色の眼に見つめられると、どんな嘘も暴かれる様な気がする。


 「ごめん、稽古の邪魔しちゃったかな?」


 匠は少し申し訳なさそうな顔をする。

 恐らく自分が話しかけたことで、鍛錬を中断させてしまったと思っている様だ。


 「ううん、全然大丈夫。丁度俺も休もうとしてたから」

 「そうか。隣…良い?」

 「ん?隣?良いよ」

 「じゃあ、座るよ」


 匠は俺の隣に座る。

 胡坐の俺と違って、お行儀よく正座で。


 「霊力の稽古をしてたんだよね?」

 「うん」

 「僕も一緒にやっていいかな?誰かと一緒にやった方が捗りそう」

 「一緒に?構わないけど」


 俺の了承を聞くと、匠は正座のまま、両手を膝の上に置き、目を瞑る。


 そして、すぐに霊力を動かし、全身に循環させ始める。

 それは、さっきまで俺がやっていた『周天巡霊』である。


 その霊力の操作は丁寧であり、無駄が無かった。

 とても同じ4歳とは思えない。


 霊力操作技術は俺に迫るものであった。

 3歳の頃から毎日欠かさず霊力を動かしている俺に迫るレベル。


 俺の場合、1回目の人生において18歳の頃までの霊力操作の感覚を覚えているというアドバンテージがあるのにだ。


 ボンヤリしていると、俺をすぐに追い抜かしそうだ。


 俺も負けじと、兄の匠と競うように、また『周天巡霊』で霊力を練る。

 今さっき休憩したばかりだが、匠に感化されてしまった。


 確かに、稽古は誰かと一緒にやるのが良いのかもしれない。




 また20分後、


 「はーい。お昼御飯ですよ」

 「「はぁ…」」


 婆やの言葉に、俺と匠は一斉に大きく息を吐く。

 お互い、大粒の汗を搔いている。


 長時間の『周天巡霊』は慣れたものだが、休憩を殆どせずに再開したため、非常に疲れた。


 「お昼ご飯を作りました。ぼっちゃまには、御握り。お嬢様には、お粥。福ちゃんには、煮干しですよ」

 『わ~い!煮干し!煮干し!』


 煮干しと聞いて、茉昼の相手をしていた福丸は婆やが用意した煮干しに一直線する。

 茉昼には、食べやすいお粥。俺には、御握り。


 丁度いい、炭水化物でエネルギーを補給せねば。


 「ぼっちょま、お疲れ様です…………あら、匠様」


 婆やが手拭いを持って、俺の元に来る。

 すると、俺の傍にいた匠に気付く。


 婆やは礼儀正しく、匠にお辞儀をする。


 俺と同じく、匠も汗を掻いているのを見た婆やは匠にも、手拭いを出す。


 「ありがとうございます」


 匠は婆やにお礼を言って、貰った手拭いで、汗を拭く。


 「宵明は毎日、これをやっているの?」

 「『周天巡霊』のこと?うん、毎日してる」

 「凄いね。こんなにも大変なことを毎日」

 「毎日続けてれば、慣れちゃうよ」


 匠は一つ頷く。


 「そうか、僕も頑張らないと」


 ここで、婆やは、ある提案をする。


 「匠様も一緒に、お昼ご飯にしませんか?」

 「お昼ですか?」

 「はい。ぼっちゃまと同じ御握りです」


 匠はチラッと、俺を見る。

 それは一緒に食事していいのかと問う視線に見える。


 何を迷う必要あるのか?


 「匠兄、婆やの御握りは美味しいよ」


 それを聞いた匠は、一瞬悩んだ素振りを見せた後、


 「じゃあ、僕も頂きま………」

 「なりません、匠」


 匠の言葉を遮る者が現れる。




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