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『十二の式神使い』 〜殺された御三家陰陽師の俺は、過去へと戻り、破滅未来を回避するために、現代最凶の式神使いになる〜  作者: 星衛門
第四章 東京幼年霊法競技大会

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70過去問




 「なるほど…1週間後の東京幼年霊法競技大会の霊衛部門に優勝したいと」

 「そんで、陰陽師部門にも、優勝したいとね」


 潤一平先生が顎に手を当て、考え込む。


 典子先生の方は、煙草を吸いながら、一応考える素振りをする。

 いや…素振りをするだけで、煙草を片手に、酒を煽っている。


 「典ちゃん、飲み過ぎは駄目!」

 「ちっ…なんだよ」


 酒を回収する千景さんに、舌打ちをする典子先生。


 話を戻そう。

 凪桜と匠兄が、東京幼年霊法競技大会に参加すると言った翌日、俺はいつもの稽古のために鈴木事務所に行った。


 そこで、俺自身が、大会の両部門で優勝しなければいけないことを伝える。


 「先生、出来そうですか」

 「そうだな…」


 潤一平先生は一つ頷いて、


 「無理……というわけじゃねぇ。俺がしたら、宵明が優勝することは、現実的な視野では十分あり得ると思う」

 「おお!」


 潤一平先生からお墨付きを貰う。

 つい、喜ぶ俺。


 「そうですね。宵明君、ぶっちゃけ同年代なら、頭一つや二つどころか、十個ぐらい抜けてますよ。僕が気になるのは、そんな宵明君が一回も勝てない女の子と、宵明君よりも霊力操作が上の男の子の方が気になります」


 理人さんが、凪桜と匠兄の方が気になると言う。


 鈴木事務所の人たちには、俺は依然として、九十九神楽家とは関係ない「津久井宵明」で通っている。


 実の兄である匠兄のことは、凪桜と同じ友達と話した。


 「宵明ちゃん!勿論、大会には、私たちも鈴木事務所組も応援に行くからね!」


 千景さんが張り切って言う。


 鈴木事務所の人たちも、大会に来るのか。

 だったら、当日は皆んなに、俺が九十九神楽家だと、バレないようにしないと。


 「宵明、一つ確認だ」

 「はい」

 「お前は、経験を積みたいのか?それとも、ただ優勝したいだけか?」


 潤一平先生の言ったことを簡単に言うと、腕試しや経験のために大会に出た結果として優勝したいのか、何を差し置いても優勝したいのか、どっちかだ。


 答えは決まってる。


 「ただ優勝したい。それだけです」


 婆やの死の回避には、「百毒の籠手」が必要。

 大会に優勝すれば、「百毒の籠手」を借りられるかもしれないのだ。


 ならば、裏技でも、多少狡い手を使ってでも、優勝したい。


 俺の答えを聞いた潤一平先生は、何度か頷く。


 「なら、過去問だな」

 「はい?」


 俺は首を傾げる。

 過去問?


 「大会まで、あと1週間しかねぇ。宵明の話を聞くに…その凪桜という子は、宵明よりも、遥かに剣が強い。剣ってのは、積み重ねだ。一朝一夕で身に付くものじゃない。大きな差があるなら、一週間で埋まるものでも無い」


 確かに、そうだ。

 俺と凪桜との剣の実力差は、多少の努力で埋まるものでは無い。


 では、どうすれば良いのか?


 「そこで、過去問だ!何かのテストや試験で、問題の出題範囲や出題傾向、配点数などを把握するために、過去問を使った方が有効であるように、大会も同じだ。大会の過去の記録を調べて、競技内容や大会の優勝者の実績、得点の稼ぎ方を分析して、大会で効率よく勝つんだ」


 なるほど!

 だからこそ、過去問か!


 俺は納得する。


 「しかし、潤さん。競技内容や優勝者の実績だけなら、まだしも…どうやって競技の得点配分を調べるのですか?大会側からしたら、得点配分は秘匿案件のはずです」


 理人さんが懸念を口にする。


 「そこは、ニュースよ」

 「ニュース?」

 「あの大会は、毎年テレビで放映するだろ?テレビの映像から、どの競技が得点高いか調べるんだよ」

 「そう言うことですか!」


 理人さんは納得する。


 潤一平先生の言う通り、東京幼年霊法競技大会の競技状況は、毎回テレビで映され、優勝者は数日間、ニュースで取り上げられる。


 大会の過去問調べでは、打ってつけだろう。


 潤一平先生は、腕を回す。


 「よし、そうと決まれば…これから1週間は鈴木事務所は休業だ。生徒を優勝させるために、大会を徹底調査するぞ!特に、優勝者の競技実績だ。あれで大会の得点傾向を掴みやすくなる。調査した後は、大会で勝ちやすくなるように、トレーニングだ」

 「僕は、過去の大会の映像を入手します」

 「おう。それと、今ここに居ない関助の爺さんとヨルルも呼べ。人手が必要だ」

 「な、なんか難しそうなことやるみたいだから、私は応援してるよ!」

 「いや、千景。お前も、映像をチェックするのを手伝え。さっきも言ったが、人手がいるんだ」

 「うう…頭使いそう」


 鈴木事務所の皆んなが総出で、俺のために動いてくれている。


 そのことに、俺は感謝しかない。

 俺は頭を下げる。


 「皆さん、ありがとうございます」


 俺のお礼に対して、潤一平先生は俺の頭に手を置き一言、


 「ぜってぇ、優勝するぞ」

 「はい!」


 俺は力強く返事をする。




 こうして、鈴木事務所が、大会のことについて調べることになった。

 勿論、俺のための大会なので、俺も手伝おうとしたら、


 「話は終わったかい。じゃあ、宵明。アタシに付き合っておくれ」


 俺の服の襟元を、ガシッと掴む典子先生。

 俺が大会で優勝したいと言った辺りから、ずっと黙ったまま煙草を吸っていたけど、急に動き始めた。


 まぁ…今住んでいる鈴木事務所でも、典子先生は必要以上に喋らないそうだから。


 「頭脳労働は、アイツらに任して。アタシたちは、アタシたちで別のことをするわよ」


 俺を捕まえながら、歩き出す。


 「典子先生?」

 「歌子も、付いてきな」

 『分かったポン』

 『あ、僕も』


 典子先生の式神である妖狸の歌子さんも、付いてくる。

 勿論、俺の式神の福丸も。


 「え、えっと…典子先生……何処に?」

 「ちょっと式札の補充に行くぞ」


 式札の補充。


 式札は、式神術によって、霊体を下ろし、自身の式神にするための人型の和紙。

 怪異退治などで、式札使うと、式札は消耗して、使えなくなる。


 「今、丁度切れかかってるからね。宵明も、必要だろう」


 通常ならば、式札は霊術に関するものを専門に扱った店で購入できる。


 でも、典子先生や俺が使う式札は、他と違う。


 黒い紙に、赤い字で書かれた式札。

 悪霊を降ろす式札…「黒式札」。


 典子先生は、術式である『黒ノ巣』の影響で、悪霊が集まりやすい。


 それを利用して、悪霊式・式神術を使っている。

 なので、使う式札も普通のものとは違う。


 黒い紙を使った悪霊を降ろすための式札が必要だ。

 そのための黒式札。


 その生徒である俺も、悪霊を降ろす時がある。

 当然、俺にも悪霊を降ろすための式札は必要。


 でも、そういった式札は、普通の店には無い。


 では、どうするか。

 黒式札が売っている場所に行くのだ。


 その場所とは、


 「じゃあ、あそこに行くってことですか?」

 「ああ、『裏東京』にだ」


 俺と典子先生は、東京の裏の世界と呼ばれる…通称『裏東京』に行くのだった。




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