↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『十二の式神使い』 〜殺された御三家陰陽師の俺は、過去へと戻り、破滅未来を回避するために、現代最凶の式神使いになる〜  作者: 星衛門
第四章 東京幼年霊法競技大会

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/77

69ライバル2人目




 「ほ、本当に出るのか?」

 「うん。大会の話を聞いた時から、出てみたいと思った。………駄目なの?」


 凪桜が、長い黒髪に数本の白髪という特徴的な髪を傾ける。


 東京幼年霊法競技大会自体は、エントリー期限など無い。

 参加条件として、小学生未満である事と、保護者の同伴がある事。


 そのため、飛び入り参加でも、全く問題ない。


 「だ、駄目じゃないけど」


 嘘です、駄目です。

 何故なら、凪桜が参加すれば、俺の優勝が確実に無くなるからです。


 優勝できなければ、「百毒の籠手」が借りれなくなる。

 婆やを助けられない?!


 「お爺ちゃん、私も大会に出たい」

 「そうか…まぁ、ナギがやりたいのなら、好きにしなさい」


 祖父の了承を受ける凪桜。


 そうして、俺がどうしようか悩んでいると、


 「宵明」


 声が掛かる。

 少し乾く、冷たい声で。


 見ると、そこには、


 「匠兄!」

 「匠様」

 「匠お兄ちゃん」


 俺、婆や、茉昼が声の主の名前を言う。


 薄金色の髪に、銀色の目。

 俺と同年代…という同い年…という同じ誕生日の兄。


 九十九神楽匠(たくみ)である。


 そして、匠兄のそばには、母親の幸子義母さんもいた。


 そう言えば、

 匠兄は、俺と持っている木刀を見る。


 「もしかして、剣術の稽古をしていたの?」

 「稽古?ああ、いや…凪桜と試合をしていて」

 「凪桜……と試合?」


 チラッと、匠兄は凪桜を見る。


 「じゃあ、今時間は無いって、ことかな?」

 「えっと…試合は一応、一区切りついたから、時間はあるかな」


 何か用でもあるのか?


 「そっか…だったら、僕……私と一勝負、どうかな?」

 「へ?一勝負?」


 俺は目を丸くする。


 匠兄から、勝負を持ちかけられた事なんて、初めてだからだ。


 ジ……。

 そこで、視線を感じる。


 その視線は、幸子義母さんからだった。


 まるで、俺を値踏みしているかのような視線。

 注意して見てみると、匠兄の方も、幸子義母さんをチラチラと気にしていた。


 もしかして、匠兄が俺と勝負しようとするのは、幸子義母さんの指示なのだろうか。


 「うん、分かった。一勝負ね。何をするの?」

 「簡単な霊力操作の勝負だ」


 そう言って、匠兄が取り出したのは、蝋燭。


 ただの蝋燭ではなく、紫色になっている。

 その紫の蝋燭は、俺にも陰陽師にとっても、馴染みのある物だ。


 「それは…『妖火蝋燭』だね」

 『え?妖火蝋燭って?』


 一緒に聞いていた福丸が、首を傾げる。

 俺は福丸に説明する。


 『妖火蝋燭』とは、蝋燭に霊力を注ぐ事で、火を灯す特殊な蝋燭。


 でも、難点があって、霊力を注ぐと言っても、繊細な操作が要求されるのだ。

 少しでも、注ぐ霊力が強い、もしくは弱くても火は乱れ、掻き消えてしまう。


 つまり、霊力操作の鍛錬には、打ってつけなのである。


 「これに火を灯して、どっちが長く維持できるかの勝負だ」


 匠兄が設定する。

 なるほど、妖火蝋燭を使って、どっちが上手く、かつ長く繊細な霊力操作を行えるか競うのか。


 「分かった。勝負しよう」


 俺は、匠兄の勝負の申し出を受け入れる。


 望むところだ。

 東京幼年霊法競技大会で、優勝しなければいけないのは、霊衛部門だけでなく、陰陽師部門も同じ。


 ここで、上手く霊力操作が行えなければ、優勝なんて出来ないだろう。


 俺は、匠兄から一本の妖火蝋燭を貰う。

 次いで、匠兄も、もう一本の妖火蝋燭を懐から取り出す。


 「よいしょ」


 俺は、縁側に胡座をかいて、座り込む。


 そして、持っている妖火蝋燭に、霊力を注ぐ。


 初めは少量で。

 段々と注ぐ量を増やす。


 すると、紫の蝋燭の先から、青白い火が灯る。


 火を灯すほどの霊力量に達したのだ。


 『わー!赤い火じゃない!青い!』


 福丸が、普通とは異なる青白い火に驚く。


 俺は、さらに霊力の量を増やす。

 灯っていた青白い火は、徐々に大きくなる。


 でも、ある一定の霊力量を境に、大きく乱れ始め、次の瞬間に消えてしまう。


 そうか、この妖火蝋燭の適切な霊力量は、このぐらいか。

 妖火蝋燭は、大きさや形状など、物によって注ぐ際に火が灯る霊力量が違う。


 しっかりと霊力量を感覚で掴んで、注ぎ続けないと、火が消える。


 「では、私も」


 俺の目の前に、匠兄が正座をして座り込む。


 同じように、持っている妖火蝋燭に霊力を注ぐ。

 すると、すぐに青白い火が灯る。


 手慣れているな。


 2本の蝋燭に、それぞれ火が灯る。


 「おにぃ!頑張れ!」

 「………」


 茉昼が、少し離れて俺を応援する。

 凪桜は無言で見ていた。


 『宵明様も、匠様も、頑張ってください』


 人形態の忠吉が、どっちも応援する。


 集中するために、目を閉じる。


 意外と、これ難しい。


 俺が日頃からやっている『周天巡霊』は、体"内"の霊力を操作するもの。

 一方の妖火蝋燭は、体"外"の霊力を操作するもの。


 一回目の人生は、実は余り…妖火蝋燭を使った鍛錬はしていない。


 一回目の人生においても、二回目の人生においても、『周天巡霊』ばかりやっていた。

 あれが、場所や時間、物を選ばず、霊力鍛錬には効率が良いのだ。




 少し時間が経って、


 「むむ…」


 俺は、少々苦戦していた。

 額には、汗が滲み出ているだろう。


 この妖火蝋燭自体、外出による緻密な霊力操作を要求するのもそうだが、それを維持するのも疲れる。


 同じ霊力操作でも、体内を循環させる『周天巡霊』とは、勝手が違う。

 勿論、練気の操作とも、また違う。


 俺は、そっと目を開ける。


 目の前にいる匠兄は、目を閉じて今も火を灯しているけど、疲労の様子は無いし、青白い火も安定している。


 やっぱり慣れているな。


 俺の方が限界が来そう。




 もう少し時間が経って、とうとう、


 「はぁ…」


 俺は、妖火蝋燭に霊力を注ぐのを中断する。

 緻密な霊力操作の持続で、疲労が溜まり、操作が維持できなくなった。


 見ると、まだ匠兄が持っている妖火蝋燭には、青白い火が灯っていた。


 多分、匠兄は妖火蝋燭を使った鍛錬を日頃から行っているのだろう。

 俺が、潤一平先生から剣術を習っている時間も、霊力操作の鍛錬をしているのだ。


 今の俺は、悪く言えば、剣術と式神術の両方を学んで、どっち付かずな状態になっている。


 『宵明様、お疲れ様です』


 俺の疲労を察知して、人形態の忠吉が空かさず、タオルを渡す。


 「私の勝ちかな」


 匠兄がゆっくり、目を開ける。


 「うん、俺の負けだ」


 素直に、負けを認める俺。


 俺の言葉を聞いて、いち早く反応したのは、匠兄…………ではなく、母親の幸子義母さんであった。


 「……………ふ」

 「ん?」


 幸子義母さんは、普段は冷徹そうな顔をしているのに、その時だけは、ほんの一瞬…勝ち誇ったような顔をしたのだ。


 俺が顔を向けた時は、幸子義母さんは、いつも通り無表情だった。

 気のせいだったかもしれないけど。


 まぁ…幸子義母さんは、俺と、俺の母に対抗心持っているからな。


 幸子義母さんは名家出身、かたや俺の母は一般家庭出身でも一流の陰陽師。

 本人たち抜きでも、周囲が母たちや俺や匠兄と言った子供を比べるのだ。


 自分の子供が、俺に勝ったのが嬉しかったのかもしれない。


 「宵明…実は……」


 匠兄は少し言い辛そうにして、


 「私も、1週間後にある東京幼年霊法競技大会の陰陽師部門に参加しようと思う」

 「………え?」


 凪桜から、東京幼年霊法競技大会の霊衛部門に参加すると聞いた時と同じく、俺は驚く。


 匠兄も参加する?


 ふと…一瞬、匠兄が幸子義母さんの方を見る。


 恐らく、匠兄が大会に参加する事自体も、幸子義母さんの指示だ。


 そう言えば、爺ちゃんが大会で優勝しなさいと言った時、一緒に幸子義母さんもいた。

 そうか…仮に、匠兄が大会で優勝出来れば、匠兄を次期当主として近づけることが出来る。


 「ま、まずい」


 俺は、苦虫を噛み潰した顔で、皆んなに聞こえないように呟く。


 つまり、こういう事だ。


 俺は優勝しなければいけない大会の霊衛部門と陰陽師部門において、霊衛部門には、凪桜と言うライバルが、陰陽師部門には、匠兄というライバルがいることになる。


 2つの部門における優勝が、より難しくなったと言えよう。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。