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『十二の式神使い』 〜殺された御三家陰陽師の俺は、過去へと戻り、破滅未来を回避するために、現代最凶の式神使いになる〜  作者: 星衛門
第三章 二人の先生

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62閑話 私は、何処か変




 私は、何処か変。


 初めて、そう考えだしたのは、私が物心ついて、すぐだっただろうか。


 私は、他の皆んなとは何処か違う。

 そう思ってしまう。


 皆んなと比べて、全く喋らないから?

 皆んなと比べて、全く表情を変えないから?

 皆んなと比べて、誰とも関わろうとしないから?


 皆んなと比べて………"身体"が違うから?


 私は皆んなと同じ人間。

 何故か、そう思えない。


 何だか…自分が皆んなと違う生き物のように感じる。


 人と"別の何か"が混ざった存在に感じる。









 私には、両親がいない。

 唯一の肉親は、祖父のお爺ちゃんだけ。


 私のお父さんは、お爺ちゃんの息子で、私のお母さんは、誰なのかも知らない。


 お爺ちゃんが言うには、私の父は、お爺ちゃんと同じ学者だったらしい。

 お爺ちゃん曰く、とても賢い子であったとのこと。


 ある日…私のお父さんは、家を抜け出して、何処かに行ってしまった。


 そのまま数年間、行方不明であったけど、お父さんは突然帰って来た。

 赤ん坊である私を抱き抱えて。


 その日は、近年稀に見る大雨と雷が一晩中ずっと降り注ぐ大嵐だったらしい。


 お父さんは、赤ん坊の私をお爺ちゃんに託して、すぐに死んだ。

 お父さんの顔は、写真でしか知らない。


 だから、お父さんと一緒に居る同い年の子を見ると、少し羨ましい。









 幼稚園では、いつも皆んなの輪から外れている。


 遊びの時間になって、外に遊びに行く子もいれば、中で人形やおもちゃで遊ぶ子もいる。


 そんな子に混じって、私は部屋の隅で、静かに本(と言っても、幼稚園なので絵本しか置いていないけど)を呼んでいる。


 「凪桜ちゃん、みんなと遊んだら?」


 幼稚園の先生は、そう言ってくるけど、いまいち皆んなと混ざって何かをする気になれない。

 したいとも思わない。


 そんな私相手に、誰も遊びたがらない。


 「ナッキー!わたし、えほん、よむ!」


 唯一、私と仲良くしようとするのが、私をナッキーと呼び、同じ幼稚園にいる陽菜(ひな)である。


 陽菜は、おっとりしており、動きのが苦手なのか、私とよく一緒に居ようとする。


 きっと、この先、私には友達は居ないだろう。

 居たも、とても少ないだろう。


 でも、心の奥底では、皆んなと違う自分に、悲しさを持っている。









 そう思っていた私に、"転換点"が訪れる。

 それは、宵明(しょうめい)との出会いだ。


 宵明と初めて会ったのは、私が5歳の時、明治神宮での霊魂祭。


 「あ、あの!」


 お爺ちゃんと手を繋いで、歩いている時、突然話しかけられたのだ。


 振り向くと、そこには、艶のある黒い髪に、金色の目も持った私と同い年ほどの男の子。


 彼が、宵明。


 家名は、九十九神楽。

 後に、御三家と呼ばれる陰陽師家の子息だと分かる。


 初めて会った際の宵明の顔には、私への好奇心と疑念…そして、多くの恐怖が含まれていた。


 人の感情に起伏に敏感な私は、それが分かる。


 でも…どうして、私に恐怖を?

 私、宵明に…まだ何もしてないと思うけど。


 「お父さん、いないの?」

 「うん、いないんだ。俺…父親の顔なんて、写真でしか知らない」


 どうやら、宵明も私と同じく父親が居ないらしい。

 少しシンパシーを感じる。


 この宵明との出会いが、私の生活に少なからず影響を与えた。









 私は、何かに熱中したり、何かに興味を持ったりしたことは無い。


 好きなものを強いて言えば、読書?


 お爺ちゃんは「妖異学」の学者をしていたから、私の家には、お爺ちゃんの本が多い。

 家にいる時は、私はそう言った本を読んでいる。


 あ…でも、”雷”は好き。


 嵐が訪れ、大雨が降った時、雷のゴロゴロと言う音や、落ちた際の、けたたましい音を聞くのも好き。

 雷を見ると、不思議と落ち着く。


 偶に、雷が降るような雨が来ると、私は外に出て、シャワーのように浴びるのだ。


 お爺さんは風邪を引くからと止めようとするけど、やっぱり落ち着くのだ。









 だけど、そんな私に雷以外で、とても惹かれるものが出来る。


 それは、剣。


 私がお爺ちゃんと、宵明の屋敷に行った時に、宵明が木刀を振っていた。

 何でも、剣も行ける陰陽師になるとか。


 剣も降る陰陽師?


 ちょっとカッコいいかも。


 宵明が素振りをしている姿を見ると、何だか血が騒ぐのだ。


 自分も剣を振りたいと言う気持ちが、沸き起こってくる感じ。

 だから、私も剣を振りたいと言った。


 剣の握り方や振り方は、教わったことが無い。

 そもそも、剣自体、それまで見たことが無い。


 でも、分かるのだ。


 どう握って、どう身体を動かせば、剣を使えるのか。

 体の隅々に、剣の理が刻まれているような。


 お爺ちゃんは、私にも神木家の血が入っていると言っていたけど、神木家の血?


 お爺ちゃんは、昔剣士をやっていたと聞いたけど、それに関係するのだろうか。









 宵明が、私の家に来た。


 誰かが私の家に来るのは、初めてでは無いだろうか?


 本を読みつつも、意識は少しばかり宵明に向いていた。


 「そう、凪桜と。凪桜は、まぁ…あの性格じゃから、友達が殆ど居らず、幼稚園でも外で遊ぶ事はなく、本ばかり読んでいると聞く。友達も、陽菜という子、1人」


 お爺ちゃんが隣の部屋で、宵明に私と今後も仲良くして欲しいと言う。


 聞こえてるよ…お爺ちゃん。

 私、耳が良いから、聞こえちゃう。


 「宵明が良いのなら、是非…凪桜と遊んでやってくれ。無理とは言わん。偶に、家に来て、凪桜と一緒にいるだけでも構わん」

 「えっと…それだけで良いのなら、余裕がある時でも、こちらに来ます」


 宵明は、そう言った。


  「あ、なんなら、いつでもウチに来て良いですよ。正門をいつも守ってる人にも言うので、是非…我が屋敷に遊びに来てください。俺の妹の茉春も、なんか…凪桜のこと気に入ってるみたいなんで」


 しかも、いつでも宵明の住んでいる屋敷に来て良いよとも。


 宵明は、どうして、私に気を掛けるのか。

 初めて会った時からそうだった。


 その時から、宵明の私に対する恐怖心は、かなり無くなっていると、感じ取れた。









 私が宵明と出会って、一年以上経った。


 今、私と宵明も6歳。

 あと半年ほど経てば、小学生になる。


 私はお爺ちゃんと一緒に、頻繁…という程ではないけど、宵明の屋敷に行くことが増えた。


 別に何か特別なことをするわけでも無い。


 出されるお茶菓子を食べたり、屋敷の広い庭を見たり。


 「いらっしゃい、凪桜」


 屋敷に来た時に、宵明がいれば、宵明は快く私を受け入れる。


 「おねぇ!」


 抱き着いてくる朱色の髪をした女の子。


 この子は、茉昼(まひる)ちゃん。

 宵明の2つ下の妹。


 この子も、初めて会った時から、妙に私に懐いてくる。


 不思議と悪い気がしない。


 私は、無意識に抱き着いてくる茉昼ちゃんの頭を撫でる。

 茉昼ちゃんは、嬉しそうである。


 九十九神楽には、私を受け入れてくれる人がいる。

 それだけで、なんだか少し嬉しい。




 私は、何処か変。


 そう思うのは、変わらない。

 けど、今は…それで良いかも。


 神木凪桜は、そう思うのだった。




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