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『十二の式神使い』 〜殺された御三家陰陽師の俺は、過去へと戻り、破滅未来を回避するために、現代最凶の式神使いになる〜  作者: 星衛門
第三章 二人の先生

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56お化け屋敷の女




 ピンポーン。

 インターフォンを鳴らす。


 一分ぐらい扉の前で待つ。


 でも、家の扉が開くこともなく、誰かが出てくる気配もない。


 俺は、もう一回、インターフォンを鳴らそうとすると、


 『………宵明』


 俺の肩に乗っている福丸が、不安そうにしていた。


 『やっぱり…この家、可笑しい』


 目の前の家を見て、そう言う。


 表情は優れていない。

 怯えているようだ。


 「可笑しい?確かに、ちょっと汚いけど…」

 『違う。なんか、家の中から、不吉な気配が大量に感じるの』

 「不吉な気配?」

 『うん…怪異とは、また違う。というか、怪異よりも、よっぽど異質な気配。凄く怖い』


 俺は眉根を寄せる。


 福丸は、猫又であり、他の妖怪もよりも脆弱である故に、自身に害をなす怪異や邪気などを敏感に感じる。


 その福丸が、怪異よりも、よっぽど異質な気配と言っている。


 この家には、何かあるのは確かだ。

 そして、その家に住んでいる式神使いも、普通では無いだろう。


 そりゃあ…予想していたよ。


 何せ、"あの"潤一平先生の友達の式神使いが住んでいるだもの。

 きっと、その式神使いは、かなり癖が強い人なのだろうと。


 だけど、ここで気落ちしてはいけない。


 強くなるため。

 家族を守るため。


 そのために、式神術を教えてくれる人を、もう一人の先生として教わりに行くのだ。


 ここで、躊躇してどうする。


 「すぅ…はぁ…」


 深呼吸をする。


 ピンポーン。

 俺は気を張り直して、再びインターフォンを鳴らす。


 でも、やっぱり全く誰も出る気配がない。


 ガラスが付いた扉越しでは、中が見えない。

 電気が付いていないのか、暗いのだ。


 トン!トン!トン!


 「すみません!」


 インターフォンは止め、扉を何度も叩く。


 少し待ってみたけど、誰も出てこない。


 留守かな?

 時間を変えて、出直そうか。


 そう考えていた時。


 ガタ…。

 中から微かに音がする。


 お、誰かいる。


 トン!トン!トン!


 「すみません!」


 もう一回、扉を何度も叩く。


 すると、誰かが歩く音がして、段々大きくなる。

 その足音は扉の付近まで来る。


 扉のガラス越しに人影。


 ガチャ。

 鍵が開く音がする。


 いよいよ対面か。


 俺は扉を凝視する。


 ギイィ…。

 扉がゆっくり、開かれる。


 しかし…それは、ほんの少しだけ。


 開いた扉の隙間から………俺を見下ろす目と黒い髪が見えた。


 顔色の良く無い髪の長い女性が、扉から顔の一部を出して、俺を冷たい目で見下ろしていたのだ。


 『ひい?!』


 福丸が思わず、悲鳴を上げる。


 俺も、思わず悲鳴をあげそうになった。

 完全に、ホラー映画の演出である。


 まさに、お化け屋敷の女みたいな印象の人だ。


 この人が、先生の友人である式神使い?


 「こ、こんにちは…」


 何とか挨拶をする。


 「………」


 対する女性は、無言で俺を上から下まで見た後、口を開く。


 「誰だい?」


 低く湿っぽい声。


 「あ、あの…こんにちは。俺、宵明と言います。こっちは俺の式神の福丸」

 『よ、よろしくニャ』

 「知らないね」


 ぶっきら棒に返す女性。


 「そ、その…俺、貴方から式神術を教わりたくて」

 「…………は?」


 訝しげに見る女性に、俺は肺に空気をたっぷり吸い込む。

 

 そして、意を込めて言う。


 「俺の先生になってください!!」


 何時ぞやで、潤一平先生に初めて対面した際に、放った言葉だ。


 この言葉を放った当初は、潤一平先生は取り付く島もなく、事務所のドアを閉めた。


 果たして、この女性の場合は、


 「……………………帰んな、餓鬼」


 そう言って、少し開いていた扉を完全に閉める。


 その後に、女性が扉から離れる足音が聞こえる。


 うん、予想はしていた。

 というか、こうなることを潤一平先生が予想していたのだ。


 昨日、潤一平先生からは、式神術を教えてくれるかもしれない相手…つまり、この家の女性についてのことは、ある程度聞いた。


 先生曰く、きっと相手は先生になって欲しいと言っても、真面目に相手にしないだろうと。


 では、どうすれば良いのかと、俺が聞くと、先生は簡潔に、こう答えた。


 『んなもん、決まってるだろ?インターフォン連打だ』


 ピンポーン。

 ピンポーン。

 ピンポーン。

 ピンポーン。

 ピンポーン。

 ピンポーン。

 ピンポーン。


 俺は、昨日先生に言われた通り、家のインターフォンを連打した。


 福丸は、『お、怒られるよ』とハラハラしながら見ていた。


 そんな福丸に構わずに、俺がインターフォンを連打していると、


 「お、来たかな?」


 家の中から扉へ走ってくる足音が聞こえてきた。


 ガラガラ!

 さっきは少ししか開かなかった扉が、勢いよく全開する。


 「だから、帰れって言っただろ!!」


 女性が湿っぽい声を張り上げる。


 普段から小声で話しているのが、突然の大声を出したことで、女性は少しむせる。


 平均的な成人女性の身長だけど、手足はかなり細く、全体的に痩せこけている。

 長い黒髪もボサボサで、あまり栄養のあるものを食べていないのか、頬は削られ、顔色も悪い。


 そんな女性に、俺は改めて言う。


 「俺の先生になってください!!」

 「なっ?!」


 再び聞いた言葉に、女性は絶句する。


 「ちっ!」


 女性は苛立ち気に、舌打ちをする。

 表情は、心底面倒くさそうな感じである。


 「ああ、もう良い!兎に角、上がれ!」


 髪の毛を掻きむしり、家に上がって来いと言う。


 「お邪魔します!」


 俺は素直に従い、お化け屋敷にお邪魔した。




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