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『十二の式神使い』 〜殺された御三家陰陽師の俺は、過去へと戻り、破滅未来を回避するために、現代最凶の式神使いになる〜  作者: 星衛門
第三章 二人の先生

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54十二支将




 『十二支将』…それが、俺の術式名である。


 式神系の能力であり、12人の式神と契約して、操る能力。


 俺が眠っている中、訪れる十二の扉が存在する異空間。

 あの扉の一つ一つに式神が待機している。


 扉の先に待機している式神と正式に契約を結べば、外の世界に顕現させ、仲間に出来るのだ。


 壱の扉には、鼠の忠吉。

 肆の扉には、兎のヨツミ。


 一の鼠に、四の兎。


 感の良い人は、もう気づいただろう。

 俺の術式のモデルは、まさに十二支だ。


 古代中国に起源を持つ「子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥」の12種類の記号の総称のアレである。

 因みに、俺は蛇年。


 あの異空間の壱の扉から、時計回りで順番に、十二支に基づいた式神がいるのだ。


 つまり、合計12人…もしくは、12匹による術式固有の式神を仲間に出来ると言う事だ。


 残りは、牛、虎、龍、蛇、馬、羊、猿、鳥、犬、猪。


 あの異空間は、どれかの扉が入室できる状態でないと、行けない。

 今回、肆の扉が開けていたが、初めに来た際は、肆の扉は開かなかった。


 どのタイミングで、いずれの扉に入ることが出来るかは分からない。

 何か条件があるのか?


 何はともあれ…これから訪れる九十九神楽家への不幸を防ぐためには、まさに十二支将の力が不可欠であると考える。









 昨晩、兎と忍者になる式神…ヨツミとの契約を果たし、早速その術式を確認した。


 兎形態は、影分身。

 人形態は、二段ジャンプ。


 簡単に言えば、そんな感じだ。


 『凄い!今度の術式は、何かで使えそう!』

 『ふん…当然です』


 福丸がヨツミの術式を褒める。


 今度の術式は…と言っている辺り、忠吉の二つの術式は、使えそうになあと思っているのだろう。

 まぁ…一回目の人生でも、忠吉の術式は、使える場面は殆ど無かった。


 忠吉は『十二支将』最弱なので、仕方が無い。


 一方の人形態のヨツミは、当然の評価であると、胸を張る。

 私は優秀なのだからと、言わんばかりである。


 だが、実際優秀なのは、確かだ。


 ヨツミは、これから訪れる婆や救済の良い戦略になる。


 俺は縁側に座り、大きく伸びをする。


 『どうぞ』

 「ん、ありがとう」


 すかさず人形態の忠吉が、俺にお茶を差し出す。

 俺は、お茶を啜りながら、忠吉の隣に座る婆やを見る。


 婆やは一回目の人生において、俺が小学校に上がる直前に死んだ。

 怪異に襲われて死んだのだ。


 それを回避するために、ヨツミは必要だし、出来れば…他の式神の助けも借りたい。


 「あと10人か」

 『そうですね、宵明様。あと10人ですね』


 俺の言葉に、忠吉が肯定する。


 現在、顕現できる式神は、忠吉とヨツミの2人。

 残るは、10人。


 次は、どの扉が開くのか。

 一回目の人生通りの順番なら、七番目…漆の扉だ。


 でも、漆の扉の先にいる式神の契約条件は、なかなか簡単ではない。


 十二支将の式神は、契約するには、異空間の各扉に入って、式神から出される契約条件をクリアしないと行けない。

 ヨツミの場合、かくれんぼのように。


 一番初めに契約した忠吉に、契約する条件がないのは、実は例外だったりする。

 他の式神には、しっかり契約条件が存在する。


 一回目の人生にて、他の何人かの式神が出す契約条件は知っている。

 どれも癖が強い。


 出来ることなら、婆やを助けるために、あと2人ぐらい式神と契約したい。

 早く次の扉が開いて欲しい。


 「ふぅ…」


 俺は、一息つく。


 ……と、ここまで考えたが、俺は思考を止める。


 いくら考えても、次のいずれかの扉が、いつ開くかは知らない。

 次の扉が開く期間や条件みたいなものは、把握していないのだ。


 つまり…ここで、考え込んでも仕方がないのだ。


 「……婆や、きっと助けるからね」

 「え?ぼっちゃま…何か言いました?」

 「大丈夫、こっちの話」


 何でもないと首を左右に振る俺。


 ドン!

 その時、軽い衝撃が俺の背中に伝わる。


 「おにい!」


 次いで、幼い女の子の元気な声がする。

 それだけで、誰か分かる。


 振り向くと、案の定、朱色の髪をした女の子がいた。

 俺の妹の茉昼だ。


 俺は、背中に抱きつく茉昼の背中をさする。


 「どうした、茉昼?」

 「あしょんで!」


 遊んで欲しいようだ。

 いつも通り元気いっぱい。


 「そうか、遊んで欲しいのか。今から、俺…稽古なんだけど…婆や、相手して」

 「ん〜!おにい!あしょんで!」

 「ふふ…お嬢様は、どうやらぼっちゃまと一緒に遊んで欲しいようですね」


 俺と遊びたいと駄々をこねる茉昼。


 はぁ…仕方ないか。

 本来なら、これから周天巡霊を少しやってから、素振りの稽古だけど、少しぐらい妹と遊んで良いだろう。


 俺は茉昼を連れて、庭に行く。


 そこで、


 「だれ!」


 女性の忍者…くノ一姿のヨツミを目にする茉昼。


 『宵明様、こちらは?』

 「俺の妹の茉昼だ」

 『宵明様の妹ですか。余り、似ていな…いえ、何でもありません』


 おい、今…俺と茉昼が似ていないと言いかけただろ。

 確かに、母さん似の茉昼と、母さんに余り似ていない俺は、兄妹に見えにくいだろうな。


 ヨツミは、礼儀正しく茉昼にお辞儀をする。


 『お初にお目にかかります、茉昼様。私は肆の兎…ヨツミと申します』

 「つよみ!」


 茉昼はヨツミに興味津々な様子で、近づき、思いっきり足に抱き着く。


 『元気がございますね』


 ヨツミは眉根を寄せつつ、茉昼に引き離そうとする様子はない。


 「よし!これから、ヨツミと福丸と一緒に、遊ぶか!」

 「あしょぶ!」


 大はしゃぎの茉昼。


 『え?僕まで?』

 『召喚されて早々…遊びですか』


 茉昼との遊びに付き合わされる福丸とヨツミ。




 その日は…ヨツミが得意なかくれんぼを、庭で行い、一日を過ごした。

 楽しい一日だった。









 そして、その日の夜。

 いつも通り大広間にて、九十九神楽のみんなで集まり、夕食を取る。


 大広間にいるのは、当主の爺ちゃんに、俺と茉昼、そして…真兄除く正妻の文世一家と、二番目の妻の幸子一家。


 「匠よ」


 夕食を食べている最中、爺ちゃんが匠兄に尋ねる。


 「『十二霊符』を会得して、2ヶ月経つが、毎日稽古をしておるのか?」


 『十二霊符』とは、俺と同じ誕生日に、俺が『十二支将』を会得したのと同時期に、匠兄が会得した術式。


 この『十二霊符』は、全当主である俺の父親である(まこと)と同一の術式である。


 霊術を強化・補助するための霊符を十二枚召喚させ、操る能力。

 汎用性においては、最強格の術式だ。


 でも、それ故に、扱いは簡単ではない。

 日々の努力と稽古が必要になってくる。


 「ええ…御当主様。匠は、術式を自覚してから、毎日、稽古を積んでいます」


 爺ちゃんの質問に一早く答えたのは、匠兄ではなく、母親の幸子義母さんである。


 匠兄の肩に手を置いて、少し誇らしげな顔をしている。

 普段の神経質そうな顔とは、違う。


 匠兄が、前当主の術式を受け継いだのが、本当に嬉しいようだ。


 俺が術式を自覚してから、本格的に剣術の稽古に取り組んでいる最中、匠兄は霊力鍛錬や霊術の学習だけでなく、術式のコントロールを向上させる稽古に勤しんでいるのだ。


 「そうか。匠…稽古に励んでいるようだな」

 「はい」


 一方の匠兄は、真顔で答える。

 余り嬉しくない様子である。


 稽古が辛いのかな?


 一回目の人生でも、匠兄は幸子義母さんから大きな期待を背負わされていたからな…プレッシャーを感じているのか。


 そして、爺ちゃんは今度、俺に顔を向ける。


 「宵明も、稽古を頑張っているようだな。なんでも、使用人や家宰の桐生からの話を聞くに、霊衛から剣術を教わっているそうだと」

 「うん、潤一平先生っているんだ。正剣一刀流と教わってて」

 「ほぉ…正剣一刀流。三大流派の一つの。宵明も、稽古に励んでいるみたいだな」

 「俺、剣も強い陰陽師になりたくて」

 「そうか…結構。無理のない範囲で、稽古を続けることじゃ」


 その会話を聞いて、幸子義母さんは、俺を鋭く睨む。


 「陰陽師が剣とは。はしたない」

 「これ、幸子」


 爺ちゃんが、幸子義母さんを諫める。

 と言っても、陰陽師が剣など、実際変わっている。


 「わたしも、じゅつしゅき、ほしい!」


 俺の隣にいる茉昼は、自分も術式が欲しいと言い出す。


 「茉昼が、術式を自覚するのは、もう少し待ってからだな」

 「うう、ほしい!」


 今すぐ術式が欲しいと駄々を捏ねる茉昼。


 本来、術式というものは、この世界の一部の人たち自覚できる魂の力。

 早々会得できるものではない。


 でも、一回目の人生で知っている。

 茉昼は、まさに高名な陰陽師である巴母さんの血を受け継いだ子。


 あと数年後に、その子供として、相応しい術式を自覚するのだ。


 そして、茉昼だけではない。

 九十九神楽本家に生まれた俺を含めて、12人の子供全員が、術式を持つことになる。


 それを知っているのは、世界でまだ俺だけ。


 この12人の術式は後に…九十九神楽に大きな奇跡を生み出すこともあれば、取り返しのつかない悲劇を生み出すことにも繋がる。


 とはいえ、それはまだ先の話。


 今は夕食を楽しもう。




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