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『十二の式神使い』 〜殺された御三家陰陽師の俺は、過去へと戻り、破滅未来を回避するために、現代最凶の式神使いになる〜  作者: 星衛門
第三章 二人の先生

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53ヨツミの術式




 『ま、まさか…私が一日目で見つかるなんて』


 くノ一の式神は、俺に見つかった悔しさから体育座りをして落ち込む。


 くノ一からしたら、隠れると言う行為は忍者にとって得意分野である故に、見つけられると言うのは屈辱なのだろう。


 「ま、まぁ…落ち着けって」


 俺は式神を宥める。

 とはいえ肆の扉に入って、式神とのかくれんぼで、わずか一日で見つけられたのは、ひとえに一回目の人生があったからだ。


 一回目の人生では、散々式神に翻弄された。


 あの時は、俺を遠目で確認しながら、隠れ場所を移動しているということを知らなかったから、式神が手加減してもらえるまで、一向に見つけられなかった。


 だけど、その経験と記憶があるからこそ、俺は式神の隠れるパターンを、ある程度知っているのだ。


 落ち込んでいた式神だったが、少しばかりして立ち上がる。


 『私との契約の条件は、私を見つけること。貴方…宵明様は、それを満たしました。よって、今日より私は正式に、貴方の式神です』


 そう言って、式神は手を差し出す。


 『手をお取りください。さすれば、貴方と正式に契約を結べます』


 この流れは、忠吉の時もやった。

 俺は迷いことなく、式神の手に、自分の手を置く。


 すると、キンという音と共に、くノ一である式神の体が白く光る。


 白い光は、ゆっくりと、俺の体に移る。

 それによって、式神と自分が何かしらの線で結ばれた感覚がする。


 『契約完了です』


 契約を完了した後の式神の目が変わる。


 何も変わらぬ金色の目に見えるが、俺を本当の主と認めたような雰囲気を感じる。


 グラ…。

 その時、俺は軽い眩暈を覚える。

 屋敷邸の景色が歪み始める。


 時間である。


 俺は、この異空間に居られる時間が終わったみたいだ。


 『御用がありましたら、是非とも私を召喚してくださいませ』


 その言葉を最後に、俺の視界は暗転して、意識を手放す。









 「ふぁ…」


 俺は九十九神楽本邸の自室の布団で、目を覚ます。

 大きく伸びをして、身体を解す。


 『フニャ~』


 俺の傍で寝ていた福丸も、起き始める。


 『宵明様、おはようございます』


 部屋の隅で正座をしている鼠色の髪の少年が、挨拶する。


 人形態の忠吉である。

 忠吉は俺の術式による式神なので、睡眠の概念がなく、こうして毎晩ねずの番をしてくれている。


 忠吉の顕現の際に消費する霊力は、極僅かなので、一晩中出し続けていても、問題ない。


 「おう、忠吉。やったぞ!」

 『はい?やった?』

 「お前の仲間が一人増えた」

 『増えた…っ?!まさか!』


 俺の言葉に意味が分かった忠吉は、驚いた顔を浮かべる。


 意味が分かったのだろう。


 ならば、早速召喚だ。

 俺は体の霊力を動かし、自らの魂の力である術式を意識する。


 「来い!兎!」


 宣言する。


 すると、キン!

 白い光が、俺の目の前に現れる。


 現れたのは、


 『………』


 4つの長い耳と白い毛並みを持ち、金色の目を持った一匹の兎。


 兎自体は、普通の動物の兎でも声を出せないので、無言である。

 でも、その金色の目からは、しっかりと意思を感じる。


 『え!え!何これ?!兎!』


 福丸がいきなり現れた兎を見て、興奮する。


 『これ…宵明の新しい式神!兎だけど…耳が4つもある!』

 (宵明様…この方は?)


 福丸は、兎の周囲を回りながら、じっくり観察する。

 兎の方は、煩わしそうな声…ではなく、念話で、福丸のことを俺に問いかける。


 正式に契約を果たした今なら、忠吉と同じく、俺は兎と念話でやり取りが出来る。


 俺も念話で答える。


 (俺の始まりの式神の福丸だ。見ての通り、猫又)

 (始まりの式神ですか。それも猫又……()…ですか)

 (ん?何か問題でもある?)

 (いえ、何でもありません)


 何か…猫に含むものがあるのかな?


 俺が首を傾げる一方、忠吉の方はというと、目を輝かせて、兎を見ていた。


 『兎!久しぶり!』

 (……鼠)


 仲間に会えて、喜んでいる鼠色の髪の少年に対して、猫又にじっくり観察されていた際よりも、もっと煩わしそうな声色を、念話として出す。


 兎は、鼠に会えて、余り嬉しくないようだ。

 相変わらずだな。


 一回目の人生の時も、鼠と兎は仲が悪かった………というより、兎が一方的に、鼠を嫌っていたのだ。


 「ぼっちゃま、入りますよ。あら…兎さん?」


 ここで、婆やが襖を開けて入ってくる。

 早速、新しい式神の兎を見て、驚く。


 「あ…婆や、この子は忠吉と同じ、俺の術式の式神。昨日、契約したんだ」

 「まぁ…そうですか。可愛らしいお耳ですね………あれ?でも、耳は4つ?」

 「うん、だからコイツの名前は、”ヨツミ”」

 「ヨツミちゃんと言うのですね」


 俺は兎の名前は、ヨツミと言う。


 (ヨツミ?)


 とうの本人は、何故ヨツミなのか、疑問なようだ。

 4つの耳を傾ける。


 「四つの耳で…ヨツミ!」


 俺は自信満々で言う。


 「可愛い名前ですね」


 婆やはご満悦みたいだ。


 単純だけど、覚えやすい。

 因みに、一回目の人生の時の兎の名前は、「ピョン子」だったのは、内緒である。


 (ふ…ヨツミですか。何とも安直。しかし、主の名付けならば、受け入れましょう)


 言葉では、仕方なく受け入れるような様子だけど、念話から聞こえる声は、心なしか嬉しそうである。


 『ねぇ…この兎も、忠吉と同じで、術式があるの?』


 式神である忠吉には、人形態と鼠形態で、それぞれ1つの術式を持っていた。

 ヨツミは、忠吉と同系統の式神。


 ヨツミにも、同じように術式があるのかと、福丸が聞く。


 「おう、あるぞ」


 俺は兎を見る。

 一回目の人生で、俺はヨツミの術式は知っている。


 (よし、ヨツミ!術式だ!)

 (余り……術式は見世物ではないですが………主の命令とあらば)


 ヨツミは、みんなの前で術式を見せることを渋々了承する。


 まずは、兎形態での術式は、


 (【術式】『二兎追う者は一兎も得ず』)


 ポン!

 その時、一頭…いや、一兎であったツヨミが、そのままニ兎に増えた。


 『わ!増えた!』


 福丸は二兎になったヨツミを見て、はしゃぐ。


 だけど、まだこれで終わりではない。


 ポン!ポン!

 増えたニ兎がそれぞれ二つに増え、今度は四兎。

 さらに、その四兎がそれぞれ二つに増えて、八兎になる。


 兎形態であるヨツミが、指数関数方式で増えたのだ。

 増えた個体は、全て同じ見た目である。


 まるで、忍者の分身の術のように。


 これが、兎形態であるヨツミの術式『二兎追う者は一兎も得ず』である。


 『二兎追う者は一兎も得ず』は、欲張って一度に二つのことをやろうとすると、結局一つも出来ないという意味だ。


 術式の内容は、簡単に言うと、姿のコピー。


 四つの耳を持った兎の姿を、2倍ずつ増やすのだ。


 (戻れ、ツヨミ)

 (分かりました)


 俺の指示で、術式で増えたヨツミは、元の一体に戻る。

 一体に戻る時は、一瞬。


 次は、人形態でのヨツミの術式だ。


 (人になって)

 (はい)


 ドロン!

 四つ耳の兎の姿が消える。


 代わりに現れたのは、目元が冷たく、冷静沈着な雰囲気がある10代後半の少女。


 金色の目に、短い白髪。

 黒と赤の装衣を全身に着込み、口周りをマフラーのようなもので覆った姿の忍者。


 ザ・くノ一である。


 『カッコいい!』

 「あらあら、これまた可愛らしいですね」


 福丸と婆やは、ヨツミの人形態の見た目を褒める。


 では、人形態での術式は……と思ったが、ヨツミは部屋の天井を見て、眉根を寄せる。


 『…………ここでは、余り使えませんね。外に移りましょう』


 外の方が、術式を扱いやすいと言う。

 なので、ヨツミと共に、俺、婆や、福丸、忠吉で外に向かう。




 庭に来た俺たち。

 屋敷の庭は、とても広い。


 『ここなら、十分ですね』


 ピョン!

 突然、ヨツミが大ジャンプをする。


 オリンピックアスリート並みの垂直飛び。


 数メートル上を飛んだヨツミは、後は重力に従って落ちるだけだ。

 しかし、


 『【術式】『跳躍』』


 ヨツミが術式を発動する。


 タン!

 すると、重力で落ちるはずのヨツミは、再びジャンプする。


 それによって、屋敷の二階ほどの高さの場所を優に超える。


 ゲームでありそうな二段ジャンプだ。

 まるで、空中にある見えない床を蹴ったみたいに。


 これが、人形態でのヨツミの術式『跳躍』である。


 ヨツミが外に行きたいと言った理由は、これだ。

 『跳躍』が真価を発揮するのは、二段ジャンプをしても平気な外や、天井が高い場所。


 人なら、空中で再びジャンプが出来る『跳躍』。

 兎なら、2倍ずつ体が増える『二兎追う者は一兎も得ず』。


 忠吉の人と鼠での形態の術式は、何に使うのか分からないものであるが、ヨツミの場合は、忍者らしく移動や攪乱に使える汎用性の高い術式となっている。




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