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『十二の式神使い』 〜殺された御三家陰陽師の俺は、過去へと戻り、破滅未来を回避するために、現代最凶の式神使いになる〜  作者: 星衛門
第三章 二人の先生

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52/56

52かくれんぼ




 俺の術式によって、生み出された異空間にある十二の扉。


 その扉の内、肆の扉の先にいた式神。


 四つの耳を持った兎。

 その兎は、忍者にもなれる。


 兎と忍者の式神である。


 この式神と正式に契約する条件は、今から始まるかくれんぼで、俺が勝つこと。

 俺が見つける側で、式神が隠れる側。


 『では…これより一分間…目をお瞑りください。その間に、私はこの屋敷邸の何処かに隠れます。貴方は、この異空間にいられる時間内に、私を見つけてください』

 「分かった」


 そう言って、俺は両手で顔を隠す。

 このまま一分間目を閉じる。


 『それでは、私は身を隠します』


 くノ一の式神が立ち上がり、隠れようとする。


 チラ…。

 そっと、俺は両手の隙間から見ようとする。


 それを、


 『宵明様…不正は行けません』


 しっかり注意される。


 金色の目を鋭く細めて、俺を睨む。

 俺がズルしているのを、しっかり咎める。


 「ご、ごめん!」


 慌てて、俺はしっかりと視界を両手で塞ぐ。


 「1、2、3、4…」


 そこから俺は、しっかりと一分間目をつぶって、カウントを取る。


 それと同時に、くノ一が離れる気配がする。


 この時…俺はさっきのくノ一の言葉に、何か”違和感”を持っていたのだ。

 でも、それが何か分からなかった。




 「56、57、58、59、60…一分。もういいかい!」


 俺は大声で確認するが、返事は返ってこない。


 取り敢えず、一分経ったので、俺は式神を探そうと思う。


 この異空間にいられるのには、限りがある。

 ゆっくりしている場合はない。


 式神が隠れていそうな場所は、いくつもある。


 まず、屋敷内部。

 ここにある屋敷邸には、複数の屋敷がある。その分、隠れられそうな部屋は、何個も。


 そして、庭。

 背の高い草がある場所もあり、池の中や生えている木々などを含めれば、見つけるのは簡単ではない。


 俺も一回目の人生の時は、かなり苦労した。

 どこを探しても、式神の姿は、いなかったから。


 何回も何回も探しても、見つからないので、終いには式神から呆れた顔で、『分かりました。少し手加減します』と言われる始末。


 手加減されたけど、一回目の人生で、かくれんぼで式神を見つけられたのは、小学生に上がる直前ぐらいだったかな?

 かなり掛かったイメージだ。


 でも、二回目の人生の俺は、一味違う。


 何せ、今の俺には「練気」がある。


 俺は体にある霊力を編み物ように組んで、濃密な霊力…練気を纏う。

 これで、身体能力が向上する。


 「おら!」


 それによって、上がった脚力で、屋敷中を走る。


 くノ一は17歳ほどの少女の体格をしている。

 隠れられる場所がいくつもあっても、細い箇所や隙間に隠れられるサイズではない。


 5歳らしからぬ速度で、広間や廊下、床下、便所、天井裏に至るまで。

 注意深く隈なく探す。


 でも、くノ一の姿は何処にもない。


 ならばと、隣接している他の屋敷も探し出す。


 「何処だ!何処だ!」


 練気をフルに使って、複数の屋敷を探索する。

 しかし、くノ一は発見できない。


 俺は一旦、元いた広間に戻る。


 では、他の場所に?

 この屋敷邸を隅から隅々まで探さないと行けないのか。


 「すぅ…はぁ…落ちつけ」


 そこまで考えて、俺は深呼吸する。


 慌てては行けない。

 一回目の人生の時も、俺は無我夢中で、探して、まったく探せなかった。


 その最大の理由は、分かっている。


 くノ一の式神は、かくれんぼにおいて、”移動しながら”隠れているのだ。


 もっと言えば、目視で俺の姿を確認しつつ、隠れる場所を、その都度変えているのだ。


 一回目の人生の時も、これでやられて、全く見つけられなかった。

 俺は式神が常に同じ場所に、ずっと隠れていると考えていたのだ。


 つまりは、今もこうして、何処かで俺の姿を遠目で確認しつつ、隠れている。


 俺がいるのは、襖が開け放たれた屋敷の中。

 ならば、庭からなら、俺を確認できる。


 そこまで考えて、俺は練気を意識して、ジッと目を凝らし、屋敷から庭を見る。


 「何処だ〜」


 練気で上がる視力。

 景色がより詳細に見える。


 草…池…石…木々。


 うん、俺を確認するなら、木が最適だ。

 それも、木の上の方。


 その時…木々の中の一本の木。

 その枝。


 その枝が、微かに動いたような気がした。


 この場所では、風は吹かない。


 俺は目を細め、枝を見る。

 何の変哲もないように見えるが………少しだけ見えたのは、白い髪。


 「見つけた!」


 俺は練気を使って、一気に木へ駆け寄る。

 それと同時に、ガサガサ…と、数本の枝が揺れる。


 俺に居場所を突き止められたことに、向こうも気づいたみたいだ。

 慌てて移動したのだろう。


 確認したのは、髪の一部。

 これは、見つけたことにならない。


 しっかりと全身を確認しないと。


 俺は目的の木に辿り着く。

 目的の木の根元に、葉っぱが複数落ちている。


 慌てて木から別の場所に移動した拍子に、落としたのだろう。

 やっぱり、さっきまで、ここにいたんだ。


 では、今は何処にいるのか。


 辺りを見渡す。

 周囲には、同じ木々……だけでなく、倉庫みたいな建物もあった。


 江戸時代なら、物置に使われそうな建物。

 その建物の両開きの扉が、少しだけ開いていた。


 つまり、誰か入った。


 俺は物置に近づいて、両開きの扉を押す。


 ギィィ…。

 渋い音と共に開き、中が見える。


 「本だな」


 そこには、多くの古い本があった。


 物置と思っていた建物は、どうやら書庫だったみたいだ。

 本特有の紙の匂いが、俺の鼻腔を刺激する。


 さて…くノ一は何処にいるのか。


 そう思って、中を探す。

 何処にもいない。目につくのは、当然本。


 そこで、俺は好奇心で、本の表紙を見る。

 でも、


 「読めん」


 何を書いているのか分からない文字で書かれてある。


 平仮名や漢字を続け字のようにした文字。

 こういうのを、くずし字とか、江戸文字というんだっけ?


 なんとなく読めそうなんだけど、読めない。


 ガタ。

 突然、背後で音がする。


 その後、タッタッタ…という小走りに走る音。


 振り向くと、両開きの扉が片方動いていた。


 やられた。

 きっと両開きの扉の裏に、息を潜めて隠れていたのだろう。


 「待て!」


 俺は急いで追う。


 書庫の外には、くノ一の姿はない。

 見失ってしまった。


 俺は、くノ一が逃げた方向を考える。


 ここからなら、木々の方や高い草に隠れられる。

 もしくは、近めの屋敷に逃げ込むことは出来る。


 俺は考えながら、書庫を離れる。

 手あたり次第見つけようとするのは、悪手だ。


 一回目の人生でも、あのくノ一は、俺の意表をいつも突くのだ。


 移動しながら隠れていたのもあるが、隠れているはずの無い場所に隠れて居たり、実はすぐ近くに隠れていたなど。


 「………ん?」


 そこで、俺は足を止める。


 実はすぐ近くに隠れていた?

 もしや、くノ一は…車庫から離れたように思えたけど、まだ近くにいる?


 俺は、足を止め、さっきまでいた書庫を振り返る。


 書庫の屋根部分。

 そこに…少しだけ見える白い髪。


 「いた!」

 『っ?!』


 くノ一は扉の外に出て、遠く離れていると思わせて、実は屋根に隠れていたのだ。


 慌てて、逃げるくノ一。

 くノ一は、俺の視界に入らないように、書庫の影を使い、上手く身を隠し、近くの高い草原を頼りに逃げる。


 高い草が生えている場所に沿って、俺も追いかける。


 「今度は何処だ!」


 高い草原が途切れた場所は、丁度屋敷邸の真ん中。


 傍にあるのは、屋敷邸の中央に位置する池。

 その池の表面が、少し波打っている。


 俺は思いっきり、池の中へダイブする。

 冷たい水が俺の体を覆う。


 池の中は意外と浅く、5歳の俺が池に底に足をつけば、ギリギリ頭が出る深さである。


 そして、俺は見つける。

 池の中で、黒と赤の装衣を着用し、金色の目と短い白い髪も持ったくノ一を。


 くノ一は俺と目が合うと、ギョッと驚く顔を見せる。


 俺は腰を屈め、頭を池の中に突っ込んだ状態で、言う。


 「びゅいづけだ!」


 見つけたと言い放つ。

 くノ一は完敗だとでもいうように、残念そうに池の中で、頭を垂れる。


 こうして、俺は肆の扉の先に来て、たったの一日で、式神と契約する条件を満たせてしまった。




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