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『十二の式神使い』 〜殺された御三家陰陽師の俺は、過去へと戻り、破滅未来を回避するために、現代最凶の式神使いになる〜  作者: 星衛門
第三章 二人の先生

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51兎と忍者




 「まぁ…まぁ…凄いですね、凪桜ちゃん」


 婆やは、蓮に見事に勝った凪桜の頭を撫でて、褒める。


 「なんという剣の冴。私も、数々の武人を見てきましたが、彼女には…剣士としての鬼才を感じます」


 虎太郎は信じらぬといった表情で、凪桜を見る。

 先程、息子が2歳年下の少女に負けたのに、虎太郎は、寧ろ彼女には素晴らしい才があると賞賛した。


 「ワシの孫娘が勝手に、すみません」

 「いえいえ、とんでもない。彼女には、優れた力があるようで。蓮にも良い経験になります」


 春桜と虎太郎が話す中、俺は凪桜に話しかける。


 「す、凄いな…凪桜」

 「?……何が?」

 「いや、何がって…凄い剣だったなって」

 「そうなんだ」


 マジで、何でもない事のように言う。


 「何処かで、剣を習ったことは?」

 「無いよ。見よう見まねでやった。宵明の動きも参考にした」


 キッパリと言う。


 あの動きで、剣を習ったことが無い?

 しかも、見よう見まね?


 確かに、先程凪桜が見せた動きは、途中まで俺と同じ動きだ。

 最後は、凪桜の尋常ではない速度が加わり、蓮に木刀を当てたのだ。


 剣を何も学んでいない状態で。


 なんて剣の才能だ。


 「でも……」

 「でも?」

 「剣、楽しかった」

 「そ、そうか」


 凪桜が、少しだけ笑う。


 俺は顔を少し引きつらせながら、返事をする。


 凪桜と剣の2つだと…どうしても、俺が一回目の人生で、彼女に殺された時を思い出してしまう。

 刀で、俺の心臓を一突きする凪桜。


 将来殺人鬼になるかもしれない人の、剣が楽しい…という発言は、怖い。


 「ナギ…そうか、剣は楽しかったか」


 凪桜の祖父の春桜は、剣が楽しかったと言う発言に、嬉しそうにしつつも、複雑そうな表情をしていた。


 あまり、本当は凪桜を剣に関わらさせたくなかったかのような様子である。


 「蓮、また試合やろうね。次は、もっと強くなるから」

 「ああ…」


 蓮は癖っ毛のある髪をかきながら、悪そうな顔を頷かせる。


 「宵明様も、二回目のフェイントを交えたやり方は、悪くありませんでした。今は基礎をしっかり磨くのが良いかと」

 「うん、先生も同じこと言ってた」


 やっぱり、基礎が大体優先か。




 凪桜の秘めたる剣の才能が見られた後…神木家の2人は、また一緒に泊まる…何てことも無く、お茶を飲んで、そのまま帰った。


 春桜は、今度はウチに寄ってみては、どうかと言った。


 神木家は、俺が住んでいる九十九神楽本邸より、道のりで数キロ先にある「雷下ろしの樹」のそばにあるらしい。

 つまり、神木家に行こうと思えば、すぐに行けるのだ。


 でも…まだ、俺には、将来自身を殺すかもしれない相手の家に行く勇気が無い。

 凪桜とは、一緒に入浴や一緒に就寝した上で、今更感はあるが、それでも怖いのだ。


 だけど、いつかは行ってみたい。


 神木凪桜が、一回目の人生で殺人鬼になった理由は、もしかしたら、その家にあるのかもしれない。









 その夜、俺は地下一回の大浴場で、しっかりと体を解した後、就寝に着く。


 明日も、屋敷で稽古だ。


 明後日に、また先生の事務所で稽古がある。

 その日までに、日々の基礎稽古は欠かせてはいけない。


 今日見た凪桜の剣。

 あれに追いつくには、どれくらい稽古しないと行けないのだろうか。


 俺は眠りに付く。









 「…………は!」


 そして、目を覚ます。

 俺は起き上がる。


 来ている服装が、黒い和服のものに変わっている。


 天井には、満点の星空。

 下には、サークル状の石畳。


 そして、俺を取り囲むように、十二の扉。


 重厚感のある黒ずんだ木目の扉。

 俺の前方の扉の壱から時計回りに、弐、参、肆、伍、陸…そして、最後の拾弐まで。


 ここは、まさに俺の術式による異空間。


 始めて、ここに来たのは、2カ月前。

 5歳の誕生日を迎えた夜。


 ここに来た時は、目の前の壱の扉を開けて、その先に居た忠吉と契約した。

 契約したことで、外の世界でも、忠吉を顕現させることが出来る。


 ここに来たと言うことは、”新しい扉”に行けると言うことか。


 前回は、壱の扉以外、開くことは無かった。

 だけど、今回は。


 俺は右を見る。


 目の前にある壱の扉から、時計回りに、4つ目の扉。

 肆の数字が振られた扉。


 俺は、肆の扉に近づいて、扉を手で押してみる。


 ギイィ。

 扉は簡単に開いた。


 前回は開かなかったのに。


 分かっていた。

 次に開くのは、肆の扉だと。

 一応、試しに、別の扉を開けようとするが、壱と肆の扉以外は固く閉ざされ、開く気配が無かった。


 俺は、肆の扉の中に入る。


 壱の扉の先には………大きな門があった。


 俺の家である九十九神楽本邸の正門よりは若干小さめだが、それでも十分大きい門。

 門の左右には、高い塀が連なり、この門以外は入れなさそうな感じである。


 俺は大きな門を押してみる。


 ゴオオオ。

 5歳の俺には、かなり重かったが、何とか開いた。


 門の先は、いくつもの一戸建ての屋敷が存在する邸。

 俺の家である九十九神楽本邸に比べれば、敷地面積は小さいけど、世間一般の常識では、普通に大きい。


 江戸時代なら、大名が住んでいそうな邸である。


 まぁ…予想通りだ。

 肆の扉の先は、屋敷邸があるのは、知っている。


 であるならば、この邸の中に、”彼女”もいるはずだ。


 俺は邸の中に足を踏み入れ、散策する。

 邸の中は、複数の屋敷だけでなく、大きめの池や木々がある。


 身を隠せる場所はたくさん。

 ()()()()()には、打って付けだ。


 俺は一際大きい屋敷の中に上がる。


 広めの間。

 人気は無く、静まり返っている。


 そう人間はいない。

 でも、広めの間の中央には、一匹の獣がいた。


 柔らかそうな白い毛並みに、金色の眼。

 頭から生えているのは、長い耳。


 兎である。


 しかし、ただの兎ではない。

 兎は2つの耳しかないが、その兎には、”4つ”の耳が生えていた。


 普通の兎では無いことは、一目瞭然。


 四耳の兎は俺を見て、高い跳躍をして、俺の前に着地する。


 ドロン!

 四耳の兎の姿が消える。


 そして、消えた代わりに、一人の少女…いや、忍者が現れる。


 黒と赤の装衣に身を包み、全体的にスラっとした恰好。

 短い白い髪に、口元はマフラーのような物で覆い、金色の目だけが、良く見える。

 目元と、体格からして、人間からしたら、17歳ほどの少女?


 姿は、まごうこと無き、忍者。

 もっと言えば、くノ一である。


 なんか…カッコいい。


 四耳の兎から、くノ一になった少女は何も感情がないような表情で俺を見た後、唐突に俺の前で片膝を突く。


 『お初に、お目に掛かります。私は、貴方の式神』


 金色の両目を俺に向け、整った声色を出す。


 兎である獣形態とくノ一である人形態を持つ式神。

 忠吉と同系統の存在だ。


 『私は、ここで貴方と正式な契約を結ぶ………と言いたいところですが、貴方と契約を結ぶためには、”条件”がございます』


 忠吉の時は、無条件で正式に契約を結び、外の世界での顕現が行えた。

 けれど、兎の場合は、そうは行かないようだ。


 『私が貴方と契約を結ぶ条件は一つ。今より、屋敷邸内に身を隠す私を見つけることです』


 つまりは、かくれんぼだ。

 俺が見つける側、くノ一が隠れる側になって、俺が見つけたら契約ということだ。


 契約の条件に対しては、驚きはしない。

 一回目の人生の時でも、兎の式神相手に、契約の条件として、かくれんぼをしたからだ。


 ただ、一つ違いがあるとすれば、肆の扉が広くのが、早いということだ。


 一回目と二回目の人生の時は、5歳の誕生日の日に、忠吉と契約した。


 でも、一回目の時は、再び異空間に来て、肆の扉の先は行けるようになるのは、そこから半年後だったはず。

 二回目は、2ヶ月で行けるようになった。


 何が違うのかと疑問に思いつつも、その時は…そこまで深く考えなかった。




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