表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『十二の式神使い』 〜殺された御三家陰陽師の俺は、過去へと戻り、破滅未来を回避するために、現代最凶の式神使いになる〜  作者: 星衛門
第三章 二人の先生

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/55

49槍山家




 神木という人が来ている。

 使用人から、それを聞いた俺は素振りをやめて、婆やと共に正門に行った。




 正門には、案の定…2人の人物がいた。


 神木春桜。

 優しげな雰囲気を持った老人で、白い顎髭には薄桜色が少し馴染んでいる。


 そして、神木凪桜。

 長めの黒い髪に、青い目。さらに、数本だけ白い髪が混じっている。


 「宵明様、おはようございます」

 「うん、おはよう」


 いつも正門を守っている武士の人が、挨拶する。


 俺は挨拶し返した後、俺は凪桜を見る。

 コク…と、会釈をすると、凪桜も無言で会釈をした。


 彼女は、何を隠そう一回目の人生の時に、俺の命を奪った人。


 普通なら、関わってはいけない人物だが、二回目の人生では、どうも俺は神木凪桜と頻繁に関わってしまう運命にあるのか。


 「どうも、春桜さん」

 「宵明、2ヶ月ぶりじゃな」


 以前2人は、俺の5歳の誕生日に、訪問したことがある。


 その際に、いろいろあって神木家はウチの屋敷に泊まることになり、俺と凪桜は同じ部屋で就寝することになった。


 「誕生日に貰った妖怪図鑑、ありがとうございます。いつも見ています」

 「おお、そうか。喜んで貰えて何より」


 春桜は満足気に笑う。


 誕生日に渡された『妖怪大全集』は、マイナーなもの含めて、様々な妖怪が紹介をしており、勉強になる。


 「今日は偶然近くに寄ったので、また寄らせてもらった」

 「そうですか。では、上がって下さい」


 俺は神木家を屋敷に上がらせる。




 前に来た時と同じように、大広間のそばにある縁側に、上がらせる。


 そこで、春桜は壁に立てかけてある木刀を見る。


 「おや…ここに木刀が。これは…」

 「俺の木刀です」

 「宵明の?ということは、宵明は剣術を…」

 「はい。先生…潤一平という三級霊衛の方から剣術を教わっています」


 それを聞いて、春桜は目を見開く。


 「剣術…はて、宵明は陰陽師の家系ではないか?」


 御三家陰陽師である九十九神楽家の子の俺が、剣術を学ぶのは、かなり驚きである様だ。


 「はは…俺、剣も行ける陰陽師になろうと思っていまして」

 「な、なるほど」


 俺はキメ顔で言う。

 春桜は一応、納得する。


 初めて先生の所に行った日も、家宰の桐生さんにも、似たようなことを言って、戸惑いを与えた。


 やっぱり、陰陽師の子が剣術を学ぶのは、変なのだろう。


 それにしても、まさか…俺が剣術を学ぼうとした理由は、一回目の人生で、春桜の孫娘である凪桜に、刀で刺されて殺されたのが、要因だと思うまい。


 二回目の人生では、凪桜に殺されないようにはするけど、万が一そうなったら、自前の剣術で対応するためだ。


 俺は木刀を構えて、また素振りの型をやり始める。

 2セット目だ。


 先生から教わった型をなぞるように。


 真っ直ぐ切り下ろし、左右斜めに切り下ろし、左右水平に切る、左右斜めに切り上げ、真っ直ぐ切り上げ。

 各50回。


 その様子を、春桜と凪桜はお茶を飲みながら、縁側で眺める。




 「ふぅ…」


 俺は2セット目を終えて、また休憩を取る。


 また忠吉から手渡された水で水分補給し、タオルで汗を拭く。


 「ふむ…その型は、「正剣一刀流」の型だな」


 春桜は型を見て、何の流派のものか分かったようだ。

 俺は肯定する。


 「そうですね。潤一平先生が正剣一刀流の使い手ですから。俺も正剣一刀流を学んでいます。分かるんですか?」

 「正剣一刀流は、三大流派の一つであり、基礎を徹底する流派。それ故に、型は皆、基礎に忠実なもの」


 春桜の言う通り、正剣一刀流は基礎を重んじる流派。

 三大流派の中で、最も使い手が多い。


 警察や自衛隊なら、特に多く取り入れられる剣術。


 ちなみに、正剣一刀流以外の流派は、「示現鬼神流」と「戦流」だが、今は割愛しよう。


 「………」


 凪桜が俺の木刀をずっと見ている。

 いや、木刀というより、剣術に興味ありそうな…そんな顔である。


 俺は、そこまで気にしなかった。


 その時、


 「これは、宵明様…ご機嫌よう」


 現れたのは、40代手前に見える男性。

 そして、男性に付いてくるように、俺より何歳か年上に見える少年がいた。


 彼らは、


 「ああ…虎太郎(こたろう)さんに、(れん)君」


 婆やが、男性と少年の名前を呼ぶ。


 彼らは、槍山(やりやま)虎太郎(こたろう)槍山(やりやま)(れん)

 九十九神楽家に仕える従家である槍山家の人たちだ。


 古くから続く家には、その家をサポートをして、支える従家が存在する。


 陰陽師が盛んであった1000年前の平安時代から、九十九神楽が創設された400年前の江戸時代には、名家…特に、大名家などでは、家老や奉行、馬廻、槍隊、弓隊など、多くの家臣団があった。

 それと共に従家も多くあった。


 現代では、政府や民間企業の陰陽師に対するサポートもあり、従家は、かなり減った。


 それでも、御三家陰陽師である九十九神楽家には、従家が2つある。

 槍山家は、そのうちの1つだ。


 「宵明様、素振りの稽古ですか?精が出ますね」


 槍山虎太郎が、俺が持っている木刀を見て、穏やかな笑みで言う。


 虎太郎は、槍山家の現当主。


 180センチ超えの潤一平先生よりも、さらに高い190センチの身長。

 癖っ毛の髪とガタイの良い体格。

 道具と袴を身に着けている。


 格好は、まんま武士の男。


 さらに、当主特有の雰囲気を感じさせる。


 右手には、無骨な槍。

 演舞などで使われる様な飾り物の槍では無く、鋭く敵を刺せるような実戦的なものである。


 槍山家の役割は、九十九神楽本家の護衛。


 家の名前である通り、槍を持って、九十九神楽家を敵から守るのが、務めである。

 虎太郎さんは、いつも九十九神楽本邸の庭を歩き周っている。


 この屋敷には、屋敷を丸ごと覆う結界が存在するが、いつ何時何が起こっても大丈夫なのに、屋敷の周囲を守っているのだ。


 「うん、俺…剣も行ける陰陽師になりたいから」

 「それは、素晴らしい目標ですね」


 普通は、御三家陰陽師の子が、剣術を身に着けるのは、変と思われるが、虎太郎さんは良い目標だと言ってくれた。


 けれど、虎太郎さんの後ろにいた少年は、訝し気な顔で俺を見る。


 彼は、蓮と言い、当主の虎太郎さんの息子である。


 俺より2つ上。丁度、長男の真兄と同い年。

 父親譲りの癖っ毛の髪。


 とはいえ、無骨な武人の雰囲気を持つ父親の虎太郎さんと裏腹に、パッと見の見た目は、普通の少年と言った顔付きである。


 でも、目つきが、悪そう。

 人相も少し…悪そう。


 片手には、木で作られた木槍を握っている。


 普段は、虎太郎1人で屋敷を回るが、今日は蓮への稽古なども兼ねて、一緒に連れているのか?


 「陰陽師で、剣って……可笑しいだろ」


 本人的には、聞こえないように小さく言ったつもりなのだろう。

 しかし、その声は意外なほど、聞き取れた。


 パシッ!

 今度は、軽い音が聞こえる。


 音の発生源は、蓮の頬から。


 虎太郎が、息子の蓮の頬に、平手打ちをしたのだ。

 かなり強めに。


 「蓮…何ということを」


 低い声で蓮を叱る虎太郎。

 蓮の方は、平手打ちをされて、痛そうな顔をする。


 「宵明様、我が愚息が、とんだご無礼を」

 「あ、えっと…べ、別に良いよ!俺、全然気にして無いから!」


 蓮の頭を鷲掴みにして、自分含めて、蓮の頭を無理やり下げさせる虎太郎さんに、俺は気にしていないと慌てる。

 だって、普通に考えて、陰陽師家が剣を振るのは、可笑しいよね。


 だけど、俺がどれほど気にしていないと言っても、虎太郎さんは、蓮を許す様子がない。


 まぁ…これも普通か。

 従家の身分の子が、本家の子を馬鹿にするような発言をしたのだ。


 大昔だったら、即切腹すら、あり得ることだ。


 春桜や婆やは、どうして良いか分からない様子である。

 なので、俺は提案をする。


 「じゃ、じゃあさ…蓮を、俺の稽古相手にしてよ。それで、さっきの発言は不問にするから」


 俺の提案を聞いて、虎太郎さんも蓮も目を見開く。


 「稽古相手ですか?」

 「うん、俺…剣術は習ってるんだけど、型しか教わってなくて、試合とか実戦は、一回もやったことないんだ。だから、蓮に、試合相手になってほしくて」


 苦し紛れの提案に聞こえるが、俺もそろそろ実戦みたいなことをしてみたかった。


 先生から剣術を習って2ヶ月経ったが、未だに練習試合や実戦はやらせてもらえない。

 先生曰く、俺には実践できるほどの基礎すらなっていないとのこと。


 でも、俺だって、2ヶ月間の素振りで、型は様になってきた。

 良い加減、実践で活かしたいという欲求だってある。


 虎太郎さんは、少しだけ納得いかない顔つきであったが、取り敢えず俺の提案を受け入れる。


 「分かりました。寛大な配慮、感謝いたします………蓮、宵明様のお相手をしなさい」

 「……はい」


 蓮は渋々了承する。


 木槍を構えて、俺に相対する。

 俺も木刀を構える。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ