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『十二の式神使い』 〜殺された御三家陰陽師の俺は、過去へと戻り、破滅未来を回避するために、現代最凶の式神使いになる〜  作者: 星衛門
第三章 二人の先生

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45恥知らず




 潤一平先生の手によって、退治された蝮の怪異。


 俺は無意識に拍手してしまった。

 でも、俺だけでなく、俺の周囲からも手を叩く音が聞こえる。


 見ると、俺と同じく先生と蝮の怪異との戦いを遠巻きに見ていた近隣住民も拍手をしていた。


 「すげぇ!倒しちまった!」

 「やるな、あんちゃん!」

 「それに、あの人…結構カッコよくない?」


 そんな近隣の住民に、あの人は俺の先生なんですと言いたくなったけど、堪える。

 下手なこと言って、先生を困らせるのは良くない。


 先生がしっかりとした足取りで、こちらへ来る。


 「おう、どうだった?」

 「凄すぎます!」


 自信満々に戦闘の感想を聞かれたので、俺は目を輝かせて、凄かったと答える。


 怪異に全く怯まない胆力。

 あれほど速い噛みつきを避けたり、後ろからの攻撃もノールックで避ける技術。

 何より、最後の方で見せた蝮の怪異が放った毒を一刀両断にした技。


 あんなもの見せられて、心を踊らない男は居ない。


 「相変わらず、余裕だね…潤ちゃん」

 「潤さん、お疲れ様です」


 千景さんも理人さんも、先生に労いの言葉を掛ける。


 「出現した怪異は、対峙したと、霊衛協会には連絡しておきます。”残留霊力”は取ってありますよね?」

 「ああ、しっかりと取った」


 理人の確認に、先生は左手に付けてあるリストバンドのようなものを見せる。


 これの正式名称は、「霊力記録バンド」である。


 あれは、俺が先生に素振り一万回やれと言われた時に、腕につけられた物だ。

 付けている者が、霊力を使っているかどうかを感知する機能がある。


 でも、それと同じくして、周囲に満ちた残留霊力を記録する機能も持っている。


 怪異は退治されると、消えて、ただの霊力となる。

 だけど、残留霊力という怪異が最後に残す霊力は、その場に残るのだ。


 その残留霊力を「霊力記録バンド」で記録すれば、怪異退治の証明になる。


 バンドの記録を、協会に提出すれば、報酬金が支払われるのだ。

 今回は、霊衛である先生が倒したので、記録は霊衛教会に提出する。




 さて…怪異も無事に倒したことだし、これから事務所に戻ろう。


 そう思っていたら。

 複数人が、こちらにやってきた。


 その複数人は、各自が防具を身につけており、刀や槍、弓、短刀といった武器を所持していた。

 複数人の中でも先頭におり、体格が大きい男の人が、周囲を見渡す。


 大柄の男は刃長が、90センチ以上もある刀…いわゆる、大太刀を持っている。


 年齢は30代ほどか?

 雰囲気からして、あの男の人が複数人のリーダーかな?


 「報告にあった怪異は何処だ?」

 「報告では、蛇の姿をした怪異とありましたが、見当たりませんね」


 大太刀の男の人は、横にいる短刀を持った男の人に尋ねる。


 蛇の姿をした怪異…それは、まさに先生が先ほど倒した蝮の怪異のことだろう。


 怪異は何もない場所から、不規則に突然現れ、人を襲う。

 そのため、怪異の出現を確認した者は、速やかに付近の事務所や、怪異退治専門の警察部隊に連絡する必要がある。


 とはいえ、怪異退治を専門とする警察部隊は、都心の警察本部に待機しており、ここのような都心から離れた場所においては、出動に時間が掛かる。

 基本的に、霊衛や陰陽師が待機する事務所に連絡するのが、ポピュラーだ。


 けれど、事務所に連絡すると言っても、この場所に怪異が出たら、確定でこの事務所に連絡すると言うような決まりは無い。


 だから、怪異を目撃した人は取り敢えず、付近にある複数の事務所に連絡するのだ。


 そうなれば、怪異の退治は、早い者勝ちとなる。

 法律でも…怪異は通常、最も早く見つけ、倒した物が、対峙した権利を得る。


 遅れて出てきたこの人たちも、蝮の怪異を退治するために、来たのだろうが、一足遅かったな。


 それは、もう倒されましたよ。

 そう言おうとした俺の肩を、千景さんがギュッと掴む。


 「……千景さん?」


 俺は首を傾げる。


 普段の明そうな千景さんの顔が、複数人の人たちを見て、珍しく険しい顔をしていた。

 それは、千景さんだけでなく、理人さんは眼鏡の奥で鋭めな目をしており、先生は面倒くさそうな顔をしていた。


 「お前ら、行くぞ」


 先生がみんなを連れて、ここから離れようとする。

 俺も訳は分からないが、きっとあの複数人の人たちは関わったらいけないのだろうと思った。


 けれど、離れようとした時、


 「おお、蛇の姿をした怪異なら、あそこにいる…あんちゃんが倒したぞ」

 「何?」


 住民の1人がご丁寧に、潤一平先生を指差す。

 それにより、大太刀を持った男の人の視線が、俺たちを捉える。


 すると、顔を一瞬で獰猛なものに変える。


 大柄の男の視線は、俺たちを捉えて離さない。

 いや、見ているのは、先生1人だけか。


 「おい、お前」


 大太刀の男の人が声をかける。

 そして、ゆっくりとこちらに歩み寄る。


 「宵明ちゃん…後ろにいて」


 すかさず、千景さんが俺を後ろに隠す。

 理人さんも、大太刀の男の人から、俺が見えないように、体の位置を変える。


 先生も、さりげない動作で前に出る。


 「誰かと思えば、()()()()じゃねえか」

 「…どうも」


 大太刀の男は、先生にすぐ近くに来て、いきなり恥知らずだと言う。

 先生は軽く挨拶するのみ。


 親しげ…ではなく、明らかに大太刀の男の方が先生に突っかかっている。


 「恥知らずのくせに、まだ霊衛を続けているとは。くく…余程、面の皮が厚いんだな」


 大太刀を持った男が愉快そうに笑う。


 釣られて、大太刀と一緒にいた…短刀を持った男を除いて、複数人の武器を持った人たちも、先生を笑い飛ばす。


 てか…恥知らずって、何のこと?


 しばらく笑っていた大太刀の男は、笑うのを止め、先生に対する敵意と侮蔑を向ける。


 「恥知らずが、こんなところに何の用……ああ、なるほど…お前が怪異を倒したのか」

 「そうだ。もう残留霊力は記録した。一足遅かったな」

 「ああ?!」


 先生は大太刀の男の形相を気にせず、霊力記録バンドを見せる。

 それを見て、大太刀の男は、さらに先生との距離を詰め、睨みつける。


 すると、大太刀と一緒にいた…短刀を持った男を除いて、複数人の武器を持った人たちも、先生を睨み、近寄る。


 怯まず大太刀を持った男を無言で睨み返す先生。

 千景さんも理人さんも、どうしていいか分からない様子である。


 一触触発の状態。


 数秒間…体感的には、数分も経ったぐらいして、


 「ふん…怪異が退治されてるなら、ここにいる意味はねぇ」


 大太刀を持った男が、踵を返す。

 他の武器を持った者たちも、大太刀を持った男に従う。


 それにより、空気が緩和された。


 「「はぁ…」」


 よっぽど緊張していたのか…千景さんと理人さんが、一斉に脱力して、中腰になる。

 そんなに大太刀を持った男が、怖かったのか。


 でも、それによって、


 「……ん?餓鬼?」


 俺の姿がちょうど大太刀を持った男の視界に晒される。


 大太刀を持った男の注意が、完全に俺に向く。


 千景さんと理人さんが慌てて、俺を隠す。

 でも、遅かった。


 「餓鬼?何で…ここに?」


 俺を睨みながら、そう言う。


 睨まれた途端に、何か…心臓を鷲掴みにされた気分になる。

 そうなると、大太刀を持った男に、嘘をついてはいけないと言う気持ちに、無意識になってしまった。


 「お、お、俺…じゅ、潤一平せ、先生の…生徒ですから」

 「潤一平先生?生徒?」

 「じゅ、潤一平先生に…つ、強くしてもらうために、先生の生徒に…な、なって」

 「強くしてもらうだと…はん!コイツにか?!」


 大太刀を持った男は、先生を小馬鹿にするように鼻で笑う。


 俺は歯軋りをする。

 先生をさっきから馬鹿にする、この男も許せないが、何も言い返せない俺自身も許せない。


 そこで、先生は俺のそばに寄って、肩に手を置く。


「このガキンチョは、俺の生徒…教え子だ。勝手に睨むんじゃねぇ」


 肩に手を置かれた。

 それだけで、俺の気持ちは幾分か、楽になる。


 大太刀を持った男は、半目になり、


 「教え子とは、随分…偉くなったな」


 大太刀を持った男は、今度こそ踵を返し、立ち去る。


 だけど、去り際に、


 「………」


 無言で、俺を一睨みする。


 「っ?!」


 またしても、心臓を鷲掴みにされたような圧迫感を覚える。


 腰も抜かしそうになる。


 これは間違いなく、恐怖によるもの。

 あの大太刀を持った男に掛かれば、俺なんて一捻りだろう。


 無意識に、先生のズボンを掴む。


 大太刀を持った男と、その集団が視界から消えるまで、心臓の激しい鼓動が収まらなかった。




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