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『十二の式神使い』 〜殺された御三家陰陽師の俺は、過去へと戻り、破滅未来を回避するために、現代最凶の式神使いになる〜  作者: 星衛門
第三章 二人の先生

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43剣術




 ヒュ…。


 潤一平が経営する鈴木事務所の裏手の庭に吹く微風。

 心地よい風が、体を丸くして地面に座り込む福丸の髭を撫でる。


 『良い風ニャ』


 大きく伸びをする福丸の前方では…ブン!ブン!と小さく風を切る音が鳴っていた。


 福丸の主である宵明が、木刀で素振りをする音である。


 「降る際に、首を動かさすな」

 「はい!」

 「敵が目の前にいると思って、視線はしっかり前方を見ろ」

 「はい!」

 「姿勢を真っ直ぐに保て、猫背になるな。常に胸を張るイメージだ。そして、両足はしっかりと前後に肩幅と同じ感覚でおく」

 「はい!」


 潤一平の指示に、宵明は額に汗を浮かべながら、答える。


 今やっているのは、潤一平による素振りの指導。


 剣術の基礎は、素振りからと言うことで、宵明が素振りをしている姿を見ながら、潤一平が随時指摘するスタイルだ。


 「良いか、木刀を振り上げる時は力むな。振り下ろす時は、腕を前に押し出す感じで。振り切ろうとせずに、ピタリと止めろ。鞭だ。鞭を当てる感覚だな。あと、脇を締めろ。でも、締めすぎるな。卵が一個挟んである程度の隙間だ」

 「は、はい!」


 潤一平のいろいろな指示に、宵明は何とか付いていこうとする。


 「潤さん、そんなに一片に指示したら、宵明君が付いていけませんよ。もっと少しずつ教えましょう」


 理人が嗜める。

 それでも、潤一平は指示飛ばしをやることはなく、それに宵明は必死に喰らいつく。


 宵明は強くなろうと、とても頑張っている。


 福丸は以前聞いた…宵明の強くなりたい目的。

 それは、九十九神楽の家族たちを守ることだと言った。


 でも、守ると言っても、何から?

 宵明の口調的に、これから宵明の家族には、不幸が訪れるみたいなことを言ってるんだよな。




 午前中の素振りの稽古は一旦終わる。


 「はーい!お昼ご飯だよ。潤ちゃん、りーくん、宵明ちゃんには、焼きそばね」

 「おう、腹減った」

 「宵明君、千景に作った焼きそばは美味しいですよ」

 「ありがとうございます。では、頂きます」


 千景が作った焼きそばが宵明たちに出される。


 「福ちゃんには、焼き鮭だよ」

 「わーい!鮭!」


 出された焼き鮭を、福丸は美味しそうに食べる。

 煮干しも好きだけど、最近は魚にも嵌っている福丸である。


 潤一平たちも、焼きそばを美味しそうに食べる。


 特に、宵明は焼きそばを被りつくように食べていた。

 午前の素振りで突かれて腹が減っているのか、午後の稽古に備えて体に栄養を蓄えているのか。




 午後の稽古も、午前と同じく素振りである。


 ただ、午後と違って、潤一平がゆっくり素振りするのに合わせて、宵明も素振りをしていた。


 素振りが全然拙い宵明に比べ、剣に詳しくない福丸から見ても、潤一平の素振りは無駄が無く、動作が洗練されていた。

 何度も剣を振ってきた証拠である。


 「宵明、剣術に近道はねぇ。より多く剣を持った者が強い。地道な努力と研鑽こそが、剣術の一番の近道だ」


 ゆっくりと、素振りをしながら潤一平は、剣術の大切さを説く。


 一見すると、地味な素振り。

 でも、磨かれた潤一平の素振りには、それを裏打ちするための努力と研鑽があるように見える。


 「俺も、学生時代や自衛隊をやっていた時は、毎日素振りをしていたな」

 「へぇ…先生は今も毎日素振りをしているんですか?」

 「ああ?当たりめぇだろ」


 自信満々に言う潤一平。


 それに、千景が反論する。


 「うそー!潤ちゃん、半年前に事務所開いてから、全然素振りしてるの見たことない。まぁ…この間、宵明ちゃんが来てから素振りをやり出したけど」

 「おまっ!千景、余計なこと言うな!」


 その時、プルルル…と、事務所の中から電話の音が聞こえてきた。


 一早く、テラス窓のそばにいた理人が、庭から事務所内に入り、電話を取る。


 「はい、こちら…鈴木事務所です」


 電話を取った理人は、電話の相手と何かを話す。

 時折相槌をうったりして、話している最中、理人はメモを取ったりして、会話を続けていた。


 少しして、理人は電話を受話器に置く。


 「潤さん!近隣の住民から連絡がありました。ここから、少し離れたところで、強めの怪異が現れたのことです!」


 それは、鈴木事務所へ怪異の出現を連絡するための電話だった。


 日本では、妖怪が無数にいるが、それと同じくして、怪異がおり、至る場所で頻繁に出没する。

 怪異には、様々なものがいるが、基本的に共通していることは、人を見ると襲い掛かってくることである。


 所謂、人間の敵だ。


 怪異は放って置いたら、個体数を増やしたり、より強力な個体になったりする。

 百害あって、一利なし。


 そのため、怪異が確認されると、目撃した人は、怪異や妖怪退治を専門とする警察部隊や、近隣の霊衛や陰陽師が待機する事務所に連絡する義務がある。


 今回は、この近辺に怪異が出没したと言う事で、鈴木事務所に報告が入ったのだ。

 事務所からしたら、近隣の怪異の討伐は、仕事の一環。


 当然、宵明への稽古は、一度中断。


 潤一平は、怪異が現れたことに、むしろ嬉しそうな顔をし出す。


 「丁度いい。生徒に、ちょっくら…俺の強さを見せとくか」


 潤一平は自身に満ちた顔を向ける。


 「宵明、これから俺が戦う。その姿を眼に焼き付けて置け」


 なんと、潤一平はこれから向かう怪異の討伐を、宵明にも見せるという。


 宵明は練気を習得しているとはいえ、まだ5歳。

 一緒に連れて行くのは、危険ではと、千景と理人が言うのに対して、潤一平は何と怪異は自分一人で相手するので、千景と理人の二人には、宵明と共に遠くで、見守ってくれと言う。


 先生の晴れ姿が見れると言う事で、嬉しそうな顔をする宵明。


 どうやら、これから潤一平と怪異の戦闘が見られるらしい。




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