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『十二の式神使い』 〜殺された御三家陰陽師の俺は、過去へと戻り、破滅未来を回避するために、現代最凶の式神使いになる〜  作者: 星衛門
第三章 二人の先生

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38先生探し

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 5歳の誕生日の次の日の早朝。

 俺は婆や、茉昼と共に、屋敷の正門で神木家と巴母さんを見送りしていた。


 「宵明、ワシの孫娘が大変世話になった」


 春桜が俺に頭を下げる。

 婆やはムッとした顔をする。


 「春桜さん、学問の話で盛り上がるのは良いですが、凪桜ちゃんがいるのに、夜中の間ずっと話しているのは感心しませんね」

 「わ、分かっておる。すまん」


 婆やに説教され、申し訳なさそうにする神木春桜。


 婆やの言う通りだ。

 聞けば、春桜は昨晩、爺ちゃんと妖異学の話で深夜まで話し、飲んでいた酒の影響もあってか、そのまま爺ちゃんと共に大広間で眠ったそうだ。


 つまり、神木凪桜が一緒に寝たいと言い出さなければ、昨晩はずっと1人で客室で寝ることになったのだ。


 余り、保護者として褒められた行為ではない。


 「………お爺ちゃんの馬鹿」

 「ほ、本当に、すまん!」


 ジト目で睨む神木凪桜に、平謝りの春桜。


 その一方、俺と茉昼と母さんは、


 「ショウちゃん、マルちゃん…また暫く会えなくなっちゃう。さみし~~!!」


 巴母さんが、俺と茉昼を抱きしめる。

 お別れのハグだ。


 俺も茉昼も抱きしめ返す。

 母さんの言う通り、暫く会えなくなる。


 「まんま!」

 「母さん、仕事頑張ってね」

 「うん、がんばる~!!」


 高名な陰陽師の母さんは、毎日の仕事でとても忙しい。

 本来なら俺のために一日丸ごと休みを取るのも一苦労なのだ。


 正門から少し離れたところには、偉い人が乗りそうな黒い車が待機している。


 陰陽師協会が手配した車である。

 これで、また仕事場に向かう。母さんは日本中から引っ張りダコだからな。


 「凪桜ちゃんも、また今度ね」

 「はい」

 「気軽に、ショウちゃんのところに、遊びに来ていいからね」

 「……ありがとうございます」


 母さんから、頭をヨシヨシされた凪桜は、少し照れた顔をする。


 神木家は、ここから道のりで数キロの「雷下ろしの樹」の近くみたいだし、割とご近所だ。

 会おうと思えば、会える距離であるので、再開する機会はあるはずだ。


 「ふむ…こういう陰陽師もいるのじゃな。やはり、陰陽師は皆…悪い者ばかりでは………」


 自分の孫娘にニコニコと笑いかける巴母さんを見て、春桜はボソッと呟く。

 春桜は、陰陽師に何か思う事があるのか。


 そう言えば、昨日春桜が屋敷に入った時、婆やは春桜が陰陽師に良い思い出が無いのでは…と聞いていたな。


 「宵明、さよなら。また今度」

 「うん、また今度だね…神木さん」


 互いに、お別れの挨拶を交わす俺と神木凪桜。


 すると、神木凪桜は怪訝そうな顔をする。


 「神木さん…随分、他人行儀だね」

 「そうか?」


 初対面の女の子なんて、苗字呼びが普通だろ。


 いや、俺や凪桜の年頃の子は、名前呼びが普通なのか?

 確か、母さんも女の子は名前で呼ぶものだと言っていたけど。


 神木凪桜は、無表情ながらも、はっきり言う。


 「私のことは……凪桜で良いよ」


 女の子の方から、呼び捨てで呼んで良いと来るとは。

 少しだけ戸惑った後、


 「そ、そっか…じゃあ……凪桜」

 「うん。よろしく、宵明」


 神木凪桜……凪桜は満足げに頷く。


 そんな…少し頬を動かして、笑いかける凪桜に、俺はつい…ドキッとしてしまう。


 改めて見ると、凪桜はかなり整った顔立ちをしており、将来は美少女になるのが容易に想像できる。

 一回目の人生で、凪桜は俺を殺したという事実から、霞んでいたけど、凪桜は結構…綺麗である。




 俺と婆やと茉昼は、家に帰る春桜と凪桜、そして仕事に向かう母さんを見送る。


 手を大きく振る母さん…あとは、こちらを何度か振り返りながら小さく手を振る凪桜。

 俺は何度も手を振り返す。




 春桜、凪桜、母さんを見送った後は、屋敷の縁側に行く。

 いつもの鍛錬をするために、準備体操を始める。

 

 「さて…俺も、今日から稽古だな」

 「ぼっちゃま、稽古はほどほどに」

 「分かってる」


 とは言いつつも、稽古に手は抜かない。


 俺には、九十九神楽を守る目的があるんだ。

 そのためには、強くならねば。


 午前は、いつもの通り、縁側に座りこみ、霊力鍛錬である『周天巡霊』を行う。


 これを怠けてはいけない。

 霊力操作は陰陽師にとって、基礎中の基礎。

 霊力の操作に努力したか、そうで無いかで、陰陽師の強さは決まると言っても過言では無い。


 お昼時になって、本日の霊力鍛錬を終わりにする。

 霊力をずっと回し続けたので、疲労も溜まるし、腹も空く。

 俺は婆やが作ってくれたお握りを食べて、空腹を満たす。


 午後からは、体力作りと霊力による肉体強化の鍛錬となる。


 「禍丸、今日もよろしく」

 『ああ、任せろ』


 俺は禍丸と共に、九十九神楽本邸の周りをひたすら走る。


 九十九神楽本邸は、東京都内では、比肩するものが少ないほど広大な敷地面積を持つ。

 一周するだけでも、かなりの距離を走る。


 「はぁ!はぁ!はぁ!」

 『頑張れ。あと、一周だ』


 これは、純粋な体力作りだ。

 体力は幼いうちに鍛えておくに越したことはない。


 目標の数で、屋敷周りを走った後は、禍丸との鬼ごっこだ。

 屋敷の庭を目一杯使って、俺は肉体強化を使い、逃げる禍丸を捕まえるのだ。


 「待て!」

 『惜しいな』


 全力で捕まえようとするも、禍丸の体には、触らない。

 結局は今日も触らなかった。


 でも、初めて、この鬼ごっこをやった時よりも確実に、追いかけることが出来る時間が増え、触れそうな瞬間が多くなっていた。


 体力と肉体強化が、向上している証拠だ。


 午後の稽古は夕方前に終わる。

 今日も中々疲れた。


 俺が汗を拭きながら、水を飲んでいると、


 (宵明様は稽古熱心ですね!流石は、我がご主人様!)


 俺が庭で稽古をしている様子を遠目で見ていた忠吉が、感心したように念話を送る。


 忠吉は、俺の今日一日の稽古をずっと見ていた。


 俺からしたら、これは一日のルーティンの一つだ。

 辛くて、疲れるのは確かだが、この毎日の積み重ねが、九十九神楽家崩壊を止める切っ掛けになると考えれば、活力が沸いてくる。


 いつもの鍛錬を終えた俺は、大きく伸びをして、考え込む。


 さて…そろそろだな。


 「そろそろ…”先生”を探さないと」


 そろそろ、次のステップに進んで良いと思う。


 二回目の人生を歩んでから、基礎的な霊力操作や、体力作りに肉体強化の稽古を欠かさずしてきた。

 基礎力は、かなり向上したと思う。


 この身に付けた霊力操作と肉体強化を、さらに磨きたい。

 では、具体的に何をするのか。


 それは…本格的に、俺に稽古を叩きこんでくれる先生を探すことだ。


 それに昨日、5歳になった。

 5歳になったことで、俺は法律的にも陰陽師の必須スキルである霊術の使用が行える。

 なので、霊術の稽古も、これからやっていこうと考えている。


 霊術は繊細な術の行使が必要だ。

 だからこそ、霊術に長けた霊法使いに、教えを受けるのが一番良いのだ。


 つまり、肉体面の強化で稽古をつけてくれる先生、霊術を教えてくれる先生。

 2人の先生が必要だ。


 問題は、”俺に合った”先生を見つけることだが。









 その日の夜。

 昨日のように、大広間で夕食を取った後、俺は爺ちゃんに早速言う。


 「爺ちゃん、俺…霊力や霊術の稽古を付けてくれる先生が欲しんだけど」

 「うん?霊力や霊術の稽古を付けてくれる先生………ああ、なるほど。宵明は昨日5歳になったな。ならば、霊術が使えるな」

 「そう、だから先生が必要なんだ」


 爺ちゃんは、感心したように頷く。


 「ほぅ…もう、教えを請いたいと。向上心があるのは良いことじゃ。うむ、分かった。では、儂が霊法使いの教師を手配しよう」


 先生は自分が用意しようと言い出した爺ちゃんに、俺は待ったを掛ける。


 「いや、俺…自分で先生を見つけたいんだ」

 「何?」


 爺ちゃんは怪訝な顔をする。


 「俺、自分に合った先生を見つけたくて」

 「自分に合った?」

 「うん、"九十九神楽の者"じゃなくて、俺個人に教えてくれる先生」

 「九十九神楽の者ではなく、宵明個人に………ああ、なるほど」


 少し首を捻った後、爺ちゃんは俺が言いたいことに、理解を示す。


 九十九神楽の者にではなく、俺に教えを与える先生。

 それは、言い換えれば、俺が九十九神楽の者だと知らない先生である。


 俺を一塊の教え子として教えてくれる先生。

 俺は、そういう先生が欲しいのだ。


 一回目の人生では、今よりも大きくなってからか…九十九神楽家から依頼を受けて、何人かの熟練の霊法使いが、俺に霊術などを教えていた。

 俺も、御三家の一員として、教師から霊術などを学んでいた。


 それによって、俺は一定の陰陽師の力量は身につけられた。


 でも、今考えてみれば…それでは駄目だ。

 駄目”だった”のだ。


 言っては何だが、俺を九十九神楽の者として知っていながら教える霊法使いは、御三家というネームバリューと高い依頼料金で、忖度してしまう人達だった。


 俺が失敗したり、余り教えられたことが出来なくても、教師は俺を叱ることはせず、おだてるばかリ。

 それによって、俺は一定の努力と力量で、満足してしまい、もっと上を目指したいという欲求が沸いてこなかった。


 九十九神楽を守るため、家族を守るためには、俺に忖度するような人が先生では、本当に強くなれない。

 だから、教えてくれる先生は、俺を厳しく鍛えてくれる人一択だ。


 そのために、九十九神楽ということを隠して、自ら先生を探すほかない。









 その夜、屋敷の3階にある書庫で、俺は爺ちゃんの指示で屋敷の人が用意してくれたパソコンから、先生となる人物を探そうとする。


 スーツを着た男の人がパソコンの画面を整える。


 「宵明様、ここから現在、協会に登録している霊法使いの名前や階級、主な活動拠点、活動実績なとが見れます。流石に、個人の住所や出自などは載っていません。ここで、条件などを絞って、探すのが良いでしょう」

 「うん、分かった。ありがとう」

 「何かご不明な点があれば、何なりとお呼びください」


 そう言って、スーツの人は下がっていく。

 うん、仕事ができる人だ。


 俺はマウスを動かして、パソコンを操作する。


 検索条件を、活動拠点は東京と入力。

 すると、霊法使いの名前が続々と載せられる。


 とてもでは無いが、数えきれない。


 それは、そうか。東京は霊法使いが最も多い都市の一つ。

 末端の霊法使いだけでも、結構な数である。


 それにしても、このパソコンは使いづらい。

 型が古いというのもあるが、スマホが便利すぎるのだ。


 一回目の人生で、俺がもっと大きくなった頃には、スマホが一般人に広く普及して、調べ物なんて簡単に出来る。

 今は、パソコンぐらいしか調べられるものがない。


 無作為に名前を見ては、画面をスライドさせる。

 ただ探しているだけでは、朝になってしまう。


 条件をもっと絞らないと。

 検索条件を追加。


 上級の霊法使い。

 でも、先生にしたいので、活動頻度は少なくていい。


 協会で主に働いていたり、大手事務所に所属する人は除外だ。

 あそこら辺の人は、俺が九十九神楽の者だと知っていたり、知ってしまう可能性がある。


 だから、小規模な民間の事務社か、個人事業者だな。


 う〜ん…だけど、盛りすぎ?

 実力があるのに、活動が小規模な人なんて都合良すぎなんだよな。


 そう思っていたら、


 「………ん?これは……」


 俺は乗っている霊法使いの名前を見て、画面をスライドするのを止める。


 俺が視線を釘付けにさた名前には、見覚えがあったのだ。

 見覚えがあるのは、二回目ではなく、一回目の人生で。


 「へぇ…あの人、東京に住んでたんだ」


 パソコンの画面の中央には、こう書かれている。


 28歳、男。

 東京在住。

 鈴木潤一平。

 三級霊衛。


 俺は決めた。

 1人目の先生は、この人だと。




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