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『十二の式神使い』 〜殺された御三家陰陽師の俺は、過去へと戻り、破滅未来を回避するために、現代最凶の式神使いになる〜  作者: 星衛門
第二章 秋に咲く白い桜

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34一緒に入浴




 カポン…、

 音が木霊する。


 「ふぅ…」


 肩まで湯に浸かった俺は一息つく。


 良い湯加減だ。

 体の芯まで温まる。


 今は夕食も食べ、風呂に入る時間だ。


 俺の屋敷である九十九神楽本邸の地下1階には、大人数が入浴できる大浴場が存在する。


 子供部屋である2階にも、小さな洋室はあるが、俺は断然、この大浴場派である。

 薬湯を入れた風呂が疲れた体を解してくれるのだ。


 この大風呂は、人だけでなく、妖怪もご満悦である。


 『あちゃ!』


 福丸は湯に入ろうと恐る恐る手を伸ばしては、引っ込めるを繰り返している。

 猫には、熱いのは苦手かな?


 『ふむ…良い湯だ』


 禍丸はご満悦のようだ。

 目を閉じて、気持ち良さげである。


 『チュウ』


 忠吉は、お湯を入れた桶の中で、浸かっていた。

 鼠の状態で、大風呂に入ると溺れそうだからな。


 うん、俺も…良い気分には……………ならない。


 「………」


 俺は無言で、隣を見る。

 そこには、


 「………」


 黒い髪に、特徴的な数本の白い髪。

 その髪を持つ少女も、肩まで湯舟に浸かっていた。


 俺と同じく無言で、湯に浸かる"神木凪桜"がいた。


 神木凪桜は、こちらを見ずに、ただ正面を向いていた。

 これのせいで、俺は安心して湯に浸かることが出来ないでいた。


 てか、何でいるの?!


 いや、分かってる。

 経緯は分かっているんだ。

 でも、やっぱり何でと、ツッコみたくなる。









 こうなった経緯を簡単に説明する。


 まず、爺ちゃんの勧めで、神木家は我が屋敷で夕食を取ることになった。

 急な神木家の訪問でも、2人分の食事はすぐに用意できた。


 俺や巴母さん、茉昼、爺ちゃんに加わり、神木家もウチの夕食を堪能した。


 そこまでは良い。

 だけど、問題はここから。


 結論から言うと、爺ちゃんと春桜が意気投合してしまった。


 事前の話通り、春桜は夕飯をただで食べる代わりに、春桜が学者として研究していた『妖異学』についてのアレコレを、爺ちゃんと酒を交わしつつ話していた。

 そんで、話し過ぎたのだ。


 『妖異学は、多くの者が学ぶ広く知られた学問ですが、ところが、これが奥が深く。私は、よく妖怪の始まりについて研究していました』

 『ほぉ…妖怪の始まりですか。通説では、人から漏れ出た霊力の集合体が、妖怪という形を成したと言われていますな』

 『ええ…ええ…そうです。そうなのですが、私は違う意見を持ってます』

 『違う意見?』

 『私は、日本にいる全ての妖怪は、【霊亀】から生まれたと考えております』

 『【霊亀】?それは、遥か昔の日本に存在していた"妖王"の一体だな。あれから生まれたと?』

 『その通りです!【霊亀】が持つ途方もない霊力が死に際に、日本全国に行き渡り、数多の妖怪たちを形成したのです。これについて、論文も纏めたこともあるのですが、学会では一蹴されました』

 『貴公の纏めた論文…是非読んでみたい』

 『機会があれば、今度持ってきましょうか?』


 と、こんな感じである。


 こんな感じの会話が、俺たちが夕食を食べ終わっても、延々と続いた。

 内容は一部面白いものはありつつも、余り分からないことが多い会話だった。


 爺ちゃんも、九十九神楽当主ではなく、一人の学問を嗜む者として、春桜の話を興味深く聞いていた。


 2人の酒の飲む勢いは、全く衰えることはなく、話が長引いた。

 むしろ、酒のせいで、話が長引いたのではと思う。


 2人が気づいた頃には、かなり夜遅くになっていた。


 爺ちゃんも春桜も、酒で既に千鳥足。

 まともに歩ける状態では無い。


 いくら、神木家の家と屋敷が、そこまで離れていないとはいえ、この状態の老人と、幼い女の子を夜道で歩かせるのは、気が引ける。


 しかも、有ろうことか、爺ちゃんも春桜も、まだ話足りないと来た。

 呆れ果てる俺と婆や。


 ならば、九十九神楽家の御用達である車で、2人を家まで送らせようかと思ったら、巴母さんが、ある提案をする。


 『だったら、春桜さんも、凪桜ちゃんも、ウチに泊まって行けば?』


 そんな提案だった。

 いや、流石に…と、俺は思った。


 『おお、それは良い提案ですな!』

 『うむ…巴、春桜殿の孫娘を頼む。私と春桜殿は、もう少し話をしようと思う』


 しかし、母さんの提案は、2人の酔っぱらった老人に、呆気なく許可された。

 こうして、春桜含め、神木凪桜は、ウチの屋敷に泊まることになった。









 そして、今に至る。


 まさか、将来自身を殺すかもしれない者と、無防備な状態で、一緒に風呂に入るとは。


 内心少し怖くて、落ち着いて風呂を堪能できない。

 俺は極力、神木凪桜の方を見ないようにした。


 「おにぃ!!」


 バタバタ!

 茉昼が、大浴場で手足を激しく動かし、騒いでた。


 「茉昼、風呂場ではしゃがない」

 「はーい!」


 俺の注意に、茉昼が元気よく返事した。


 ………と思ったら、何を考えたのか、静かに湯に浸かる神木凪桜に近づいて、


 「にぎー!」


 神木凪桜の両の頬を、面白そうに引っ張る。


 俺は目を剥いてしまう。


 「な、な、何やってるんだー!!茉昼!」

 「きゃははは!!」


 驚く俺を他所に、茉昼は楽しそうである。

 全く気にしていない神木凪桜は置いておいて、追いかける俺に、逃げる茉昼。


 「ふふ…ショウちゃんも、マルちゃんも楽しそうね」


 俺と茉昼の様子を見て、湯船に浸かりながら笑う巴母さん。


 母さんも見てないで、注意してよ!


 俺は茉昼を捕まえて、しっかりと湯舟に浸からせる。

 そんなこんなで、俺たちが風呂で体を温めていた。




 俺たちが風呂に浸かること、十数分。


 『……休憩』

 『……チュウ』


 風呂から出て大の字で、うつ伏せになる福丸と、その上に乗る忠吉。

 俺の式神2体は、完全に上せている。


 『ごくらく…ごくらく…』


 禍丸の方は全然大丈夫みたいだ。

 犬って、熱いのは平気なのかな?


 母さんは神木凪桜のところに行き、頭をヨシヨシする。


 「凪桜ちゃん、お風呂は熱くない?」

 「大丈夫です」

 「そう、良かった。じゃあ、そもそも体を洗おうか。ショウちゃん、凪桜ちゃんの体洗ってあげて」

 「はぁ?!」


 母さんのトンデモ発言に、俺は素っ頓狂な声を出す。


 無理!無理!

 家族でもない異性の身体を洗うのは無理!


 下手したら何かの間違いで、一階目の人生の時みたいに、刀で俺の心臓貫かれそう。


 「し、神木さんは…母さんが洗ってあげて……」

 「もう、恥ずかしがり屋さんね。じゃあ、凪桜ちゃんは、私が洗うよ。代わりに、マルちゃんを洗ってあげて。それと、ショウちゃん…女の子はしっかりと名前で呼んであげて」


 母さんが神木凪桜を、俺が茉昼を洗うことになった。

 俺は、母さんが神木凪桜の体を洗っている間は、絶対に彼女の方を見ないように努めた。


 茉昼の背中を洗い終わった後は、茉昼に背中を洗ってもらう。


 「ごしごし!」


 すごい雑な洗い方だけど。


 茉昼に背中を洗ってもらう間、徐に自身の腹を見る。

 そこには、本当にうっすらとだが、"黒い輪っか"の跡が見える。


 二階目の人生を歩んだ3歳の時…つまり、2年前から、この黒いドーナツのような跡が胸部から腹部にかけてあった。


 この跡は、一回目の俺の体には無かった。


 初めの頃は、巴母さんや婆やが血相変えて、俺を屋敷常駐や病院の医者に見せたけど、痣でも病気でもない。

 結局、何も分からなかった。


 と言っても、二年間…俺の体調に問題は無い。

 それどころか、黒い輪っかの跡は徐々に消えていった。


 黒い輪っかの正体は、俺にも理解できない。


 でも、時々思う。

 俺が二度目の人生を歩めたのは、この黒い輪っかのお陰では…と。


 「ごしごし!」


 うん、茉昼…そろそろ背中をごしごしするの止めてくれないかな。

 背中がヒリヒリしてきた。




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