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『十二の式神使い』 〜殺された御三家陰陽師の俺は、過去へと戻り、破滅未来を回避するために、現代最凶の式神使いになる〜  作者: 星衛門
第二章 秋に咲く白い桜

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028文世一家、幸子一家、巴一家




 ここで、俺の家族について説明しよう。


 言わずもがな、俺は世間では「御三家」と呼ばれる陰陽師の家系の一員。

 日本には、多くの陰陽師がいると同時に、多くの陰陽師の家系が存在する。


 陰陽師は実力至上主義な一面が強い。


 その陰陽師の実力は、生まれ持った才能に左右されることが大きい。

 強い霊力を持った者からは、強い霊力を持った者が生まれやすく、優秀な術式を持った者からは、優秀な術式を持った者が生まれやすい。


 だからこそ、家を存続させ、強くさせるには、優秀な血を取り入れるのが重要であるという考えは根強い。


 古くから日本では、当主である夫は複数の妻を娶って、子を作り、優秀な子孫を多く残す習慣がある。

 その習慣は現代の日本でも、一部引き継がれている。


 基本的に一般家庭の重婚は認められていないが、高名な陰陽師の家系では、重婚が認められている。


 まぁ…何が言いたいかと言うと、御三家である九十九神楽家には、俺を含め、優秀な血を多く残すために、妻と子供が多いと言うことだ。


 九十九神楽家から去り、消息不明になった俺の父親である九十九神楽(まこと)には、六人の妻がいる。


 そして、俺を含めて十二人の子供がいる。

 勿論、十二人全員が同じ母親からではなく、六人それぞれの母親の子供である。


 でも、よくよく考えれば、12人…て、多いよね。

 九十九神楽では、十二の数字は縁起がいいって言われているけど。









 今日の5歳の誕生日会の当事者である俺と匠兄は、祖父である九十九神楽巌…爺ちゃんに促され、爺ちゃんのそばに行く。


 「匠はこっちに。宵明はこっちだ。2人とも、座って良い」


 俺と匠兄は、爺ちゃんを挟んで左右に座る。


 爺ちゃんと同じ、床の間に座っているので、目の間に長テーブルがある。

 なので、長テーブルの左右にある座布団に座る家族の顔が見えるのだ。


 長テーブルの左右には、それぞれ文世一家、匠兄を除いた幸子一家、俺を除いた巴一家がいる。


 使用人たちは大広間の隅にいる。


 あ…使用人に混じって婆やがいた。

 大広間の外にある縁側には、禍丸が体を丸くさせて、こちらを穏やかに見ていた。


 つい、手を振りそうになるが、ここは我慢。


 俺は首を少し動かして、文世一家が座っている場所を見る。


 正妻、九十九神楽文世(ふみよ)

 第一子、九十九神楽(まこと)

 第二子、九十九神楽(みお)

 第十一子、九十九神楽光希(みつき)


 いつもの水紋の刺繍がされてある白い着物を着ており、鮮やかな水色の髪を一つの纏め、透き通った水色の眼を持った女性が、文世義母さん。

 正妻である文世義母さんは、父がいない今、九十九神楽の精神的支柱。


 目元を布で隠し、美しい黒髪を女性のように長く伸ばした俺の二つ年上の男の子が、真兄。

 生まれつき体が弱いせいで、体調を壊しやすい。


 まぁ…もっと厳密にいうと、真兄が軟弱な体質なのは、()()のせいである。


 そうそう…真兄(しんにい)の本当の名前は『まこと』であるが、俺や家族、使用人たちも『まこと』ではなく、『しん』と読んでいる。

 それは父親である(まこと)と、同じ発音で紛らわしいからである。


 自分の子供に、漢字を変えて同じ名前を付けるのは、ゲン担ぎの面から、陰陽師の家系などで、よくあるのだ。

 戸籍上は、『(まこと)』だが、本人の希望もあって、みんなは『(しん)』と呼んでいる。


 母親から受け継いだ水色の髪をポニーテールにして、同じく母親から受け継いだ水色の瞳を持った俺の一つ年上の女の子が、澪姉。

 澪姉は、まさに文世義母さんの生き写し。


 文世義母さんの教育や本人の気質か、曲がったことが嫌い。


 白銀色と言う神聖な色の髪を持つ俺の2つ年下の男の子が、光希。

 人見知りなせいで、今も母親である文世義母さんの隣に座り、ギュッと着物をずっと掴んでいる。


 

 「本日、5歳の佳き日を迎えた匠、そして宵明」


 爺ちゃんが穏やかに告げる。


 俺は首を、また少し動かして、別の場所を見る。

 そこは、幸子一家がいる場所。


 二番目の妻、九十九神楽幸子(さちこ)

 第三子、九十九神楽鈴音(すずね)

 第九子、九十九神楽利久(りく)


 白髪の混じった薄金色を御団子に纏め、とても真面目そうな…別の言い方で冗談が通じなさそうな雰囲気を持つ女性が、幸子義母さん。

 今日は、葡萄色に赤い線が入った着物を着ている。


 九十九神楽家に嫁ぐ前は、ここと同じ東京を拠点とした格式の高い陰陽師家出身だったらしい。

 古くからある家故か、匠兄に霊米を食べさせたり、現代では迷信だと言われている仕来たりや風習を持ち出しがちである。


 灰色に短めの髪をした俺の1つ年上の女の子が、鈴姉。

 何かの不安を抱えているような自信のない表情をしている。弟である匠兄の誕生日会だけど、顔には喜びなど無い。


 そんな鈴姉の横にいる栗色の髪をした俺の一つ下の男の子が、利久。

 キョロキョロと大広間内を見渡して、落ち着きがなさそうにしている。好奇心旺盛で、将来は悪戯好きの子になりそうな顔つきである。


 ポン。

 爺ちゃんが俺と匠兄の肩に手を置く。


 俺は横をチラッと見る。

 幸子義母さんと同じ薄金色の髪をした俺と同じ歳、同じ誕生日の男の子が、凛とした表情で正面を見る。


 第五子、九十九神楽(たくみ)


 その銀色の瞳からは冷たいイメージが湧いてくる。

 けど、一回目の人生歩んでいた俺だから分かるが、匠兄は誰よりも努力家なのだ。


 トン!

 そして、急に体に軽い衝撃が走る。


 爺ちゃんが自身の霊力を、俺と匠兄に少し流したのだ。


 厳格でありつつも、邪気の含まぬ爺ちゃんの霊力は、俺の背中を押しているみたいだった。

 気合いが湧いてくる。


 「両名の健やかなる成長と、九十九神楽家の末永き隆盛を願い……祝福を上げよう」

 「「「「「おめでとうございます!!!」」」」」


 使用人も含めて、大広間にいた者全員が俺と匠兄に祝福の言葉を掛ける。


 当主による祝杯の言葉が上がる。


 それからは、何か特別な事がある訳でもない。

 後は、用意された食事をみんなで食べるだけである。

 元々、ただの誕生日会だから。


 お昼ご飯が、かなり豪華になっただけである。


 俺は巴母さんのところ、匠兄は幸子義母さんのところに戻る。


 「ショウちゃん!!」

 「おにぃ!!」


 早速、巴母さんと茉昼と福丸が暖かく迎えてくれる。

 巴母さんは俺の頭をガシガシと撫で、茉昼は俺にじゃれつく。


 これが、我が巴一家。


 四番目の妻、九十九神楽(ともえ)

 第十子、九十九神楽茉昼(まひる)


 琥珀色の瞳に、魔除けの象徴である朱色の髪をオシャレに編み込み、ポニーテールのようにした女性が、巴母さん。


 翡翠色のヘアピンに、白い勾玉の首飾り。そして、様々な色を合わせた組紐。

 非常にカラフルである。


 巴母さんと同じ琥珀色の瞳に、朱色の髪をした女の子が、茉昼。


 巴母さん譲りの元気いっぱいな性分。

 茉昼は、巴母さんの生き写しどころか、母さんをそのまま幼くしたような姿形である。


 『よっこいしょ』


 福丸が、また俺の膝の上に乗る。


 福丸を乗せながら、俺は箸を取る。

 今日は思う存分食べるか。


 あ!最後に。


 第六子、九十九神楽宵明(しょうめい)

 俺である。


 六番目の子供なので、大体真ん中である。


 (これが、俺の家族だ。忠吉)

 (はい!宵明様には、たくさんの家族がいるんですね!)


 俺はズボンのポケットにいる忠吉に、念話で話しかける。


 実は、祖父に呼び出されてから、俺は忠吉に念話で、俺の家族情報を伝えていたのだ。


 俺の家族は他の比べて多いから、これから忠吉が何らかの理由で家族と関わった時に備えて、教えた方がいいと思った。


 (しかし、足りませんか?)


 忠吉から念話で疑問の声が上がる。


 (え?足りない?)

 (はい。宵明様は、この家には、6人の奥方様と宵明様を含む12人の兄弟がいると、おっしゃいました)

 (そうだな)

 (でも…ここには、まだいない人がいます)

 (………それは)

 (えっと…三番目と五番目……あと、六番目の奥方様がいないです。それに…第四子、第七子、第八子、第十二子の方もおりません)


 忠吉の疑問に、俺はしばし押し黙る。


 確かに、ここには俺の家族は全員が居るわけではない。

 まぁ…俺と匠兄の誕生日会だし、家族全員が来る必要はないと思うけど。


 (ああ、他の人たちは、いろいろと事情があって。ここにいない)

 (左様ですか)


 その時、忠吉は特段、他の家族がいないことを深堀しなかった。


 その事情自体が、複雑で難解なんだよな。


 思い返せば、一回目の人生でも、家族全員が一つの場所に集まったこと無かったような。


 俺は食事をしながら思う。

 いつの日か、九十九神楽全員(みんな)が同じ食卓を囲う日が来ますように。




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