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『十二の式神使い』 〜殺された御三家陰陽師の俺は、過去へと戻り、破滅未来を回避するために、現代最凶の式神使いになる〜  作者: 星衛門
第二章 秋に咲く白い桜

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026忠吉




 俺は端的に、昨晩の夜の出来事を話した。


 寝て起きたら、十二の扉が存在する異空間にいた。

 そして、壱の扉の先にいた鼠を自身の式神として、契約した。

 その鼠の式神は、現実世界の戻ったら、召喚が可能であった。


 俺の術式が、式神による術式であること。


 『うう…僕が初めての式神だったのに。契約…先を越された……しかも…鼠に』

 『チュウ……』


 話を聞いた福丸がガックリとする。

 そんな福丸を慰めるためか知らないが、福丸の頭に手を当てる鼠。


 福丸は、俺の始まりの式神と思っていたのに、鼠に先を越されたことがショックだったみたいだ。


 福丸は確かに、俺の式神ではあるが、まだ正式な契約を結んでいない。

 あくまで、口頭による仮契約だ。


 俺は術式を自覚したタイミングで、鼠と正式な契約を結んだ。


 鼠は俺の術式による式神だが、福丸は俺の術式とは無関係の妖怪である。


 妖怪を、正式な式神としての契約するには、霊術が必要。

 その霊術は、俺が5歳にならないと出来ない。


 つまり、傍目には、福丸ではなく、鼠が俺の始まりの式神ということになる。


 「げ、元気出せって!福丸とは、まだ仮契約だけど、式神ってことは間違いないから。福丸が俺の”始まりの式神”だから!福丸との正式な契約は、今日中にやるから!」


 俺は必死に福丸を元気づける。

 始まりの式神を強調して言う。


 『始まりの式神………そ、そうかな…へへ』


 始まりの式神という言葉に、照れる福丸。

 元気を取り戻してくれたようだ。


 元気を取り戻した福丸は、改めて鼠を観察する。


 『でも、この鼠…ただの鼠に見えるけど。何か、凄い力とかあるの?』

 「あるぞ。鼠、人の姿になれ」

 (了解です!)


 俺の声に応じて、鼠が合点!…といった感じで、飛び跳ねる。


 ドロン!

 鼠の姿が消える。


 代わりに出てきたのは、人懐っこそうな顔つきをした一人の少年。


 短い鼠色の髪を持ち、鼠色の木綿を着ていた10歳ほどの見た目の少年。

 金色の眼が輝いている。


 『え?誰?!』

 「まぁ!」


 鼠がいなくなったかと思えば、いきなり見知らぬ少年が出てきたことに、福丸と婆やが驚く。


 『初めまして、こんにちわ』


 少年は人の言葉を喋る。

 そして、礼儀正しく、頭を下げる。


 人の姿になれば、鼠の言葉は他の人にも聞こえる。


 「は、はい!こんにちわ」


 婆やも、少年にお辞儀をする。


 『こ、この人…誰?』

 「さっきの鼠だ」

 『へ?この人が、さっきの鼠?!』

 「そうだ。コイツは、鼠と人…両方の姿になれるんだ」

 『な、なるほど…』


 福丸は少年を足元から眺める。

 そんな福丸を、鼠の少年はニコニコと笑いかける。


 少年の笑っている顔は、本当に10歳の子供みたいだ。


 「何て、可愛い鼠さん。お名前は何て言うんですか?」

 『え?名前?』


 婆やに名前を聞かれ、キョトンとする鼠の少年。


 少年はチラッと俺を見る。


 そうだった。

 まだ、コイツに名前を付けていなかった。


 妖怪である福丸に名前を付けたように、コイツにも名前を付けないと。


 「名前は決めてある」

 (え?ほ、本当ですか?!)


 念話で少年の驚く声がする。

 少年の目には、期待の表情が垣間見えた。


 俺は口を開き、鼠の名前を言う。


 「忠誠の忠に、吉で……忠吉(ちゅうきち)


 そう名付けた。


 『良い名前!』

 「ふふ…素敵な名前ですね」


 福丸と婆やは、忠吉という名に納得のようだ。

 一方の鼠本人は、


 『忠吉………忠吉…忠吉』


 鼠の少年…改め、忠吉は自分に名付けられた名前を口に出して、反芻する。


 顔は喜びに満ちている。

 どうやら気に入ってくれたようだ。


 『僕には、勿体ない名前』


 忠吉は床に膝をつき、謙遜を口にする。


 けれど、やはり顔は喜びに満ちていた。


 俺は内心思う。

 何を言ってる?お前ほど、「忠吉」と言う名前に相応しい奴はいない。


 二回目の人生を歩んだ時、考えていた。

 もしまた、俺の術式による式神…特に、鼠の式神に出会えたら、相応しい名前を与えないと。


 思い出すのは、一回目の人生の時…術式を自覚してから、ずっと俺のそばにいた鼠。


 鼠はずっと俺の味方でいてくれた。

 俺が一回目の人生で死ぬ直前まで。


 何があっても、俺を裏切らなかった。


 まさに、忠臣。

 だからこそ、忠吉という名前を与えた。


 なお…一回目の人生で、幼かった俺は鼠を「ネズ太郎」と読んでいたのは、内緒である。


 「ふふ、忠ちゃんも加わったことですし、今日は良き誕生日会になりそうですね」


 婆やは笑顔を浮かべて、誕生日会に思いを馳せる。

 今日のお昼から、屋敷の大広間で、俺の5歳の誕生日会が開催されるのだ。




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